第4話 此方と彼方。妖姫と皇帝。
「ふむ? 良い方法、ですか……?」
問われたアルベリヒが、ラディウスの問いの意図が良く分からず、そう言葉を返す。
「そもそも……ラディウスさんは王宮からどうやって出てきたです?」
「ああ、はい。実は妖姫の囚われている監獄の真下が水路遺跡になっていまして……床に穴を開けて水路遺跡の水路上を歩いて来たんですよ。あ、開けた穴はレストアで修復しておきましたけど」
メルメメルアのもっともな疑問に対し、そんな事をサラッと言うラディウス。
「……今、何かおかしな事を言われた気がするですが、気のせい……なのです?」
「いえ、多分気のせいではないかと……。床に穴を開けるのは……まあ、破壊系の魔法の類を使えば出来るでしょうが……レストアで修復、水路上を歩くというのがよくわかりませんね……。レストアにそこまでの修復力はないはずですが……」
困惑するふたりに対し、ラディウスは、
「まあ……その、本来の魔法を改造して強化あります……」
などと、頭を掻きながら答えた。
「改造……です? ラディウスさんの時代にはそんな事が出来たです?」
「ええ、それなりに出来る人はいましたね」
メルメメルアの問いかけに対し、そう言って返すラディウス。
たしかにあちら側の世界にも、魔法を改造出来る者は少なからずいるにはいるのだが、ラディウス程の改造が出来る者となると、皆無に近かったりする。
だが、あまりにもサラッと言われたため、メルメメルアもアルベリヒも、ラディウスの時代には一般的だったのだろうと信じてしまった。
「とんでもない時代なのです……」
「もしかしたら、過去ではなく未来……の可能性もありますね……」
なんて事を呟くメルメメルアとアルベリヒ。
――ある意味、間違ってはいないな……
などと思いつつ、
「それはまあともかくとして……話を戻しますが……何か良い手はないでしょうか? 先程は説明し忘れましたが……妖姫はグロース・インヒビションという宮廷魔工士が生み出した魔法の鎖によって雁字搦めにされており、これをどうにかしないといけない状態なのです」
改めてそう問いかける。
「なるほど……そういう事でしたか……。そうなると、宮廷魔工士に魔法の鎖とやらをどうにかして貰わないとなりませんね……」
納得したかの様子でそんな風に言った後、なにやら考え込み始めるアルベリヒ。
「宮廷魔工士となると、皇帝陛下が命じる必要があるですね……」
というメルメメルアの言葉に、なにか思いついたのか、アルベリヒが顔を上げ、
「……となると、正攻法で行くのが一番かもしれませんね」
と、そんな風に言ってきた。
「正攻法……ですか?」
「はい。――皇帝陛下に皇女リリティナ様の魂が封じられたガジェットが発見された……と、そうお伝えします。そして、リリティナ様の魂を肉体に戻す事も出来る、と」
ラディウスの問いかけに対し、アルベリヒがそう答える。
「なるほど……。その上で魂の入れ替えを行うわけですか。……ですが、そんな簡単にこちらの言葉を信じてくれるものなのでしょうか?」
再び問うラディウスに、今度はメルメメルアが口を開く。
「言葉だけではおそらく信じては貰えないのです」
「信じて貰うための下準備を行う必要がありますが……それはこちらでどうにかいたしましょう。……ただ、あなた様にもその為にやって貰いたい事がございます」
「やってもらいたい事……ですか?」
それはなんなのだろうか、と思いつつ問うラディウス。
それに対し、アルベリヒは、
「はい。少々遺跡を探索していただきたいのです」
なんて事を、ラディウスに対して言ったのだった。
最近、余裕があまりない事もあり、こちらの話(転生した魔工士は、更に人生をやり直す)はプロットのストックが尽きる寸前です……
もう少ししたら、1周間くらいプロット作成の為に更新が止まるかもしれません……
(その場合は、一定量のプロットが作成出来次第、速やかに毎日更新していきます)