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第1話 此方と彼方。時の流れと新たな人物。

 ルティカは義手を眺めながら、

「でもこの魔法の数々、どれも強力っすけど、全て身に付けるまでが結構大変っすね。イッチョウイッタンにはいかなさそうっす」

 なんて事を言った。

 

「いやそこ、一長一短じゃなくて一朝一夕だからね。なれない言葉なんて使おうとするから……」

 呆れ気味にそう突っ込みを入れるアメリア。

 ああ、たしかにそうだな……と思いながら、妙な気分になるラディウス。

 

 ――しっかし、この世界で日本の四字熟語を聞くのは相変わらず慣れないというかなんというか……不思議な感覚だな。

 まあ、古代から存在している魔法の名前が英語だったり、魔法用語がドイツ語混じりだったりと、言語に関しては意味不明な点が多いし、気にしてもしょうがないんだが……

 

「うぐっ。ま、まあそこは置いとくっす。そ、それより、鍛錬出来る環境が欲しい所っすね。出来ればお金に困らない感じで!」

「ええー? そんな都合いい環境なんて、そうそうあるとは思えないんだけど……」

 ルティカの言葉にため息混じりに返すアメリアに、ラディウスはふと思いついた言葉を口にする。

「俺が泊まっている『古き籠手亭』って宿酒場があるんだが、人員不足でな。あそこを手伝うってのはどうだろうか? 仕事をするだけでも色々と鍛錬になる気がするが」


「あー、あそこっすかぁ」

「先日依頼を受けて手伝ったけど、結構きつかったなぁ」

「でも、たしかに鍛錬にはいい感じだったすね」

「ま、まあ否定はしないけど……貰えたお金も悪くなかったし」


 ふたりの言葉にラディウスは、ん? と思い問いかける。

「それ、一昨日の話か?」


「そうっす。あ、もしかしてあの時、お店に来てたんすか?」

「来てたっていうか、あの日から泊まっていた。んで、2階の席にいたんだよ。んー、基本的に俺にはルーナが対応してくれてたから気づかなかったな……」

「そういえばルーナさん、物凄い山盛りの料理を持って2階に上がって行ってたねー」

「たしかにそうっすね。よくまああんな量の盛られた皿を持って軽やかに動けるなーって感心してたっす」

 ルティカが腕を組みウンウンと首を縦に振った。


「あれ? でもそうすると……ラディウスって実は大食い?」

 アメリカのもっともな疑問に対し、ラディウスは額に手を当て、

「あー、いや……あれは向こうの好意で出してくれたものでな……。正直言うと、ちょっと……いや、かなり多かった……」

 と、そんな風に答える。


「それはまあ……そうっすよねぇ……」

 というルティカの言葉に同意するように、アメリアも頷く。

 

「ま、まあ、料理の量の事はさておき……ルティカが今感心したように、動きの訓練にはなるんじゃないか? ――決めるのはふたりだが、悪くはないと俺は思うぞ」

 特に根拠はないが、多分訓練になるだろうと考えつつラディウスが告げる。

 それに対し、ふたりは互いに互いの顔を見て口を開く。

「……たしかにそうだね。……とりあえず、行ってみる?」

「そうっすね。こっちが問題なさそうなら行ってみるっすか」


 ――よし! この分なら、古き籠手亭に行ってくれそうだな。

 これでルーナにも余裕が出来るはずだ。

 ……って所で、とりあえずルティカへの用も済んでる事だし、あっちへ戻るか。

 

 ラディウスは心の中でそんな事を呟きつつ、ホテル・イクリプスホロウを思い浮かべた。

 

                    ◆

 

 ――うーん……。なんというか、行き来していると時間の感覚が狂ってくるな。

 しかも、不思議な事にこっちに戻ってきたら、急に眠くなってきたぞ……

 もしかして身体が各世界の時間に調整される……のか?

 よくわからんが、まあ……いいや。今考える必要もない話だな……。寝るか……

 

 戻ってきた途端、強力な睡魔に襲われたラディウスは思考を切り上げると、そのままベッドに倒れ込んだ――

 

 そして翌朝――

 

「ラディウスさん、昨日お伝えした通り、あの貨幣を買い取れる人を連れてきたのです」

 ホテルに姿を見せたメルメメルアがラディウスにそう告げると、斜め後ろに控えていたひとりの壮年の男性が前に歩み出る。

 そして、

「おはようございます。私はこの宿の支配人をしておりますアルベリヒと申します。昨夜はゆっくりお休みになれましたでしょうか?」

 と、言ったのだった。

またもや日時設定をミスりました……

遅くなりましたが投稿いたしました。

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