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第3話 異なる歴史の世界。メルメメルアとセルド硬貨。

「えっと……? メ、メル、メルメ…………メルメル?」

 受付嬢が、なぜか右手をメルメメルアの頭へと伸ばしながら、その名前を口にしようとするものの、どうにも上手く言えない。

 

「メルメメルア! なのです! ……って、なんで頭を撫でるですかっ!?」

 受付嬢に頭を撫でられ憤慨するメルメメルア。


 ラディウスは、ちょうど撫でやすい位置に頭の高さがあるせいもあるのではないだろうか……と思いつつも、そこは口にしなかった。


 だがしかし、

「いやぁー、なんかちょうど良い高さにあるからー」

 と、まさにラディウスが今思った事を口にする受付嬢。

 

「一応、これでも歳は私の方が上なのです! 子供扱いはやめるのです!」

「えー、上って言っても1つだけじゃないー。というかー、もう少ししたら同い年に戻るしー」

「むむむむむぅ……。たしかにその通りなのですが……」

 メルメメルアはそんな事を言って唸った後、諦めのため息を吐く。

「はぁ……まあいいのです。それで……どうかしたですか?」 


「あ、うんー。実はこれを鑑定して貰いたくてー」

「はい? 鑑定なら、自分ですれば良いのです。ランク5の鑑定士の資格を持っていたですよね?」

 問われたメルメメルアが小首を傾げる。


「いやぁ、うん、たしかにそうなんだけどー、これはちょっと分からなくてー。もしかしたら特殊品かもー」

「ああなるほど? 一体どんな代物なのです?」

 そう問いかけるメルメメルアに対し、受付嬢は、

「この貨幣なんだけどー」

 と言いながら、ラディウスがカウンターに置いた100セルド硬貨を手に取り、メルメメルアに見せる。


「貨幣……いえ、古銭です? でも、古銭というには随分ときれいな…………」

 受付嬢が手に持つセルド硬貨へと視線を向けたメルメメルアが、そこで硬直する。

 

「メメメアちゃん?」

 受付嬢が再び違った名前の呼び方をするも、反応しないメルメメルア。

 

「……ど、どうして、この貨幣がここにあるです……? あの場所は消失したはずなのです。ああでも、消失したとはいえ、その前に流出していた物が少しはあったと考えればわからなくもないのです……。そう、それであれば、どこかの遺跡から出て来たとしてもおかしくはないはずなのです……。あ、いえ、でも……そうだとすると、何故こんなに新しいのです……?」

 メルメメルアは、受付嬢からセルド硬貨をひったくると、裏表を何度もひっくり返しながら、そんな事をブツブツと呟き始める。

 

 ――こっちの世界だと、実は割とやばい代物だったりする……のか?

 一度向こうに戻って、もうちょっと普通に換金出来そうな物を取ってきた方が良いかもしれないな。

 だが、見せてしまった物はどうしたものか……

 とりあえず、手に入れた場所を適当にでっち上げておくか?

 いや、まてよ……? むしろ、ここはあえて……

 

 ラディウスはメルメメルアの様子を見て、あれこれと思案し始める。

 

 そして、ある程度考えが纏まった所で、メルメメルアの視線がラディウスの方へと向き、

「この貨幣を持ってきたのは貴方です? 一体どこでこれを手に入れたです?」

 と、ラディウスに尋ねてきた。

 

 ラディウスは、まあ当然の流れだなと思いつつ逆に問いかける。

「アーヴァスタス王国という名前に聞き覚えはありますか?」


「アーヴァスタス王国? いえ、聞いた事もないのです。これは、その王国の遺跡かなにかで見つけた物なのです?」

「えっと、まあ……そのようなもの、というか……その……えっと……実は、そこで手に入れた別のガジェットが暴走しまして、気づいたらこの街に転移してきてしまったのです……」

 ラディウスは、メルメメルアの問いかけに、あえて詰まり気味な感じで答える。


「え? え? ガジェットの暴走ー? この街に転移ー?」

 話を聞いていた受付嬢が、理解が追いつかず首を捻りながら、そんな事を呟く。


 メルメメルアの方はというと、なにかに気づき、得心がいったような表情を見せ、

「ああ、なるほどなのです……そういう事だったですか。つまり、貴方は『遥か遠くから、飛んできてしまった』わけなのですね。それなら色々と納得なのです」

 と、そう口にした。


 明らかに、言葉の一部を強調しつつ――

ちなみに『鑑定』といっても、超万能型な鑑定ではなく、至って普通の鑑定です。

他人や魔物のステータスなどが分かったりはしませんよ!

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