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第7話 過去からの想い。急く心と探る者。

「は? 作る?」

 ラディウスは理解が追いつかずに、そんな声を上げる。

 

 妖姫はそのラディウスの反応を、ガジェットを作る事などそんな簡単に出来るわけがないという意味だと捉え、

「これまでの言動から、貴方様――ラディウス様の技術や知識は、封魂術のガジェットが作られた時代の筆頭魔導技師――あ、魔導技師というのは現代でいう魔工士の事です――と同等であると言っても過言ではありません。確実に作れると私は考えていますが……どうでしょうか?」

 と、改めて言った。

 

「あ、いや……魔法もガジェットの構造も、どちらも概ね把握しているから、作るのはさして難しくはないと思うぞ。だが、この鎖はどうするつもりなんだ? もしかして、こっちもどうにかするのを俺に作れという事なのか?」

「あ……。そう言われると、この鎖に関しては何も考えていませんでしたね……」

 ラディウスの言葉に、今気づいたと言わんばかりにそんな風に言う妖姫。

 

「お、おう……。そこは考えていなかったのか……」

 そう言いながら脱力するラディウスに対し、妖姫はばつの悪そうな表情で、

「あ、あはは……。ま、まあ、魂の方だけどうにかすればいいと思っていましたもので……。あ、でも、貴方様に作れというつもりは――いえ、やはり結果的には作っていただく必要がある気がしますね……」

 なんて事を言った。

 

 ラディウスは、それはまあそうだろうが……と思いつつ、

「んー。この鎖、地味に解除するのが面倒だな。それに解除してリリティナの魂も戻したとしても、ここからどう出るかという問題もあるしなぁ……」

 と、鎖を見回しながら呟くように言う。

 そしてそのまま心の中で、「主に俺が」と続けた。


「それは……たしかにその通りですね……。リリティナの魂を戻した事も外へ伝えなければなりませんし……。――申し訳ありません、今まで停滞していた事態が突然好転したため、思わず気が急いて、方法が杜撰になっていました……」

 妖姫が申し訳なさそうな表情と声でラディウスに対して謝った。


「まあ、その気持ちはわからなくはないし、気にしないでいいさ。――それよりもどうするか、だが……」

 ラディウスはそう妖姫に答えつつ、改めて部屋全体を見回す。

 すると、部屋の隅に穴があるのが目に入った。

 

 ――あれは、他の部屋にもあったトイレ用みたいな感じの穴か。

 まあ、成長停止しているリリティナの身体には関係ないっぽいが……

 下は水の音がしたから、下水道かなにかなんだろうが……ちょっと気になるな。

 

「あの穴の下ってどうなっているか知っているか?」

 ラディウスは念の為に……と思い、妖姫に尋ねる。

 

「えーっと……たしか、古代に作られた水道――要するに遺跡があったはずです。この宮殿は、その遺跡の真上にありますから」

 なんて事を言ってくる妖姫。

 

 ――水道遺跡……。まさか、伯爵邸の地下から繋がっているあそこ……なのか?

 もしかしてここは、あっちの世界では伯爵邸がある場所……だったりするのだろうか。

 いや……『いしのなかにいる!』な事態にならない程度には、空間の移動も行われているだろうが、それが最小限に留められているとするなら、十分にあり得る話、か……

 

 そんな事を考えたラディウスは、

「ちょっと覗いてみるか……」

 と言いながら、一旦伯爵邸へと戻った。

 

 そして、手早く望遠鏡がわりのガジェットを作り、再び戻ってくると、それを使って穴を覗く。

 

 ――なるほど、たしかに水路だな。

 しかも、魔法で水の上を歩いて移動出来るくらいには、水面から天井までの高さもある。

 

 ラディウスは心の中でそんな事を呟くと、

「ちょっと、調べてくる」

 と言うやいなや、ガントレットをストレージから取り出し、それを装着した。

 そして、穴の部分に魔法を当て、床を破壊して穴を広げると、そのままそこへ飛び込んだ。

 

 それから10秒もしないうちに、今度は壊れた穴が逆再生の如く修復され、何事もなかったかのような状態へと巻き戻った。


「………………」

 取り残された妖姫は、ポカーンとした様子でそれを眺め続けた後、ハッと我に返り、そして思う。

 

 ――お、思っていた以上にとんでもない人だったかもしれません……。い、色々な意味で!

一瞬でガジェットを作って戻ってくる……別の世界へタイムロスなしで移動出来る利点ですね。


明日もきっちり更新予定です! 第4節第1話に入ります!

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