第2話 封魂術の力。ガジェットの力。
「……ぐ……う……っ」
それまで微動だにしていなかったセシリアの口から声が漏れ、表情が苦しげな物へと変わる。
――リバースプロトコルの魔法の効果が出ている……?
「あ……あ……。うあああああ……っ!?」
両手で頭を抑えながら苦悶の声を発し始めるセシリア。
その様子に、ラディウスは発動中の魔法を一旦を止めるべきかどうか一瞬迷う。
だが、封魂術サーチの魔法によって見えるようになっていた薄い青色の光が明滅し、揺らぎ始めている事に気づき、このまま魔法の発動状態を継続する事にした。
「だ、大丈夫なのですか!? す、凄く苦しげなのですが!?」
セシリアが苦しそうに悶える様子に、不安を感じたシスターがラディウスに問う。
「大丈夫だ」
ラディウスは短く、しかしはっきりと告げる。
短い言葉で言い切った方が、こういう時は良いと考えたからだ。
そして、その対応は正解だった。
シスターはラディウスの短く言い切った言葉に対し、そこまで自信を持って言うのであれば、本当に何も問題はないのだろうと思い、安心してラディウスを信じる事にしたのだ。
それから程なくして、無言で成り行きを見守っていたシスターは、その瞳にセシリアの身体から何か白い靄のような物が分離していく光景を映す事となった。
そう、ラディウスの魔法を継続するという判断もまた正解だったのだ。
「うああああああああああっ!?!?」
頭を抑えて天を仰ぐような格好となったセシリアは、その悲鳴のような叫びと共に硬直。
同時にラディウスの目は、セシリアの身体から分離した魂がギミックに戻ったのを捉えた。
と、その直後、セシリアを包んでいた薄い青色の光がある一点のみとなる。
――ここか。ここがガジェットがある場所だな。
そう心の中で呟き、妖姫のいた監獄を思い浮かべるラディウス。
「ええそうですね。ただ……そもそもそれらを作るとしても、ここを出ない事にはどうにもなりませんが……」
という妖姫の声が聞こえてくる。
そして、誰もいない所に向かってリバースプロトコルが発動し続けていた。
ラディウスは妖姫が口にした言葉に対し、すまんもう作った……。ついでにいつでも出られるんだ……と、なんとなく心の中で謝罪した。
そして、発動状態のままのリバースプロトコルを解除しつつ問いかける。
「――ガジェットに魂が戻った後は、そのガジェットはどうすればいいんだ? 同化していた場合、ガジェットが同化した相手の体内に残るだろ?」
「え? あ、はい、たしかにそうですね……。……無理矢理抉り出すという手もありますが、その方の身体に傷がつくのであまり良くないですね……。先程のお伝えした魔法――リバースプロトコルの式の、FCSW化処理と送波処理の部分の所を反転させて、吸収魔法のコンバート処理を行っている式を――」
と、そんな感じで別の魔法について、あれこれと構成の説明をする妖姫。
「……なるほど、魔法の構造は概ね理解した。これなら作るのはそんなに難しくないな」
ラディウスは言うが早いか、再び伯爵邸――地下遺跡の牢屋を思い浮かべる。
直後、視界が切り替わり、セシリアの姿が目に入ってきた瞬間、セシリアがラディウスの方へと倒れ込んできた。
「おっと」
ラディウスはそれを抱き止めると、そっと床に寝かせる。
「これで基本的には問題ないんだが……中に残っているガジェットを、魔法で取り出す必要がある事が判明した。ちょっとそっち用のガジェットを作ってくるから、目覚めるまでセシ――」
「う……ん……?」
ラディウスがシスターに対し、セシリアの事を見ていてくれないか? と、言おうとした所で、セシリアが目を開けたのだった。
ラディウスはノータイムで居場所を切り替えられる事もあり、
今回は、その辺をあえて◆などで区切らない形で表現してみました。