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第6話 暗き監獄。教わり作るは……

「ん? ああ、たしかにあるな。一番上が割れてしまっているが……」

「ああ……そこが破損してしまっていますか……。それではもうどうにもなりませんね……」

 ラディウスの言葉を聞き、妖姫が心底残念そうな声を発する。


「なるほど……これが破損していると駄目なのか。……うん? という事は……こっちの配線の先にあるこの菱形のプレートで、外部からの術式を受け取る……のか?」

「よくわかりましたね、その通りです。そのSWレシーバーが、外部からのFCSW化された術式を受け取り、先程のプレート――SCコンバーターで変換して、術式を強制実行させる、という仕組みです」

 そんな風に説明してくる妖姫。

 

 ――SWレシーバーだのFCSWだのSCコンバーターだのと、そんな用語、現代の――正確に言えば未来の――ガジェットでは使われていないから、何を意味する言葉の略なのかサッパリだな……

 まあ、なんとなく近そうな用語に置き換えて考えれば、それがどういう性質を持つ物なのかは、ある程度理解出来なくもないが……

 

 ラディウスはそんな事を考えるが、近そうな用語に置き換えるなんて芸当は、普通の魔工士……どころか、優れた研究者ですら不可能に近い。


「ここまでの構造自体はそこまで複雑ってわけじゃないようだが、この中はヤバそうだな……」

「そうですね……。一度破損すると、復元不可能なレベルの多重構造術式が組まれていますね」

「なるほど……たしかにこれは複雑だ。……一つ一つ調べていけば、解析は出来るような気もするが……相当な時間を要するな」

 そう返したラディウスに、妖姫は驚いた。

 

 ――それは逆に言うと、時間をかければ解析出来るという事では……?

 この方はやはり凄まじい知識と技術を持っているようですね……

 

 妖姫はそんな事を思いつつも、ラディウスにその術式を動作させるための術式と、FCSW化とやらの方法、そしてそれを組み込むのに適したガジェットの作り方を教える。

 

「……なるほど、おおよその原理と構造は理解出来たが……あとは実際に作ってみないと何とも言えないな……」

「ええそうですね。ただ……そもそもそれらを作るとしても、ここから出られない事にはどうにもなりませんが……」

 ラディウスが一瞬で『向こう側』へ行っている事など知る由もない妖姫が、ラディウスに対しそんな風に言葉を返した。

 

 だがしかし、その時ラディウスは既に伯爵邸にいたのだった。

 

                    ◆

 

「――とりあえず、俺は有効そうな術式とガジェットを作る。幸いな事に、伯爵が素材も器材も十分すぎる程に揃えていてくれたからな」

 ラディウスが腕を組みながらルティカたちにそう告げると、ルティカがそれに反応するかのうように言葉を返す。

「なら、私は屋敷内を見て来るっす。伯爵と兵士しか住んでいない、なんて事はないはずっすから」

 

「たしかに使用人の者たちが居て然るべきですね。私も同行しましょう」

 ローブ姿の男性が頷き、ルティカの方を見てそう告げた。


「それは助かるっす。あの兵士たちのような異形と同化してしまった人間はともかく、そうじゃない人間であれば、教会の人間がいるというだけで安心するっすからね」

「ええ、その辺りはお任せください」

 そんな事を言いながら、執務室から出ていくふたり。

 

 ラディウスはそれを見送ると、

「――よし、それじゃあ早速取り掛かるとするか」

 と、誰に言うともなく呟き、妖姫から聞いた術式の構築と、ガジェットの作成を始めるのだった――

妖姫が何故ここまで詳しいのかは、いずれ……

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