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第8話 湖底探索。魔物と水と魔力。

「魔物が結構いるですね……」

「そうだな。まあ、大した強さじゃないからいいが」

 メルメメルアの言葉に頷きつつ、そんな風に返すラディウス。

 そして、それに続くようにして、

「ところで、水中に生息する魔物ってほとんど見た事ないんだけど、この湖はどうしてこんなにいるのかな?」

 という疑問を口にするセシリア。

 

「たしかにレマノー湖とかは、まったくと言っていいくらい魔物がいないわね」

「海の方には魔物が多数いるというのは話で聞いたり本で見て知っていますけれど、湖や川に魔物が多数いるという話は逆に聞きませんわね」

 ルーナとイザベラがそんな風に呟くと、

「この巨大湖が汽水湖だからなんじゃねぇか?」

 と、アルヴィンスが顎に手を当てながら言った。

 

「汽水湖……というのは、なんなのです?」

「ああ。海水と淡水の混ざりあった湖の事だ。この湖は北側で僅かにではあるが、海と繋がってっからな。若干塩分を含んでいるんだわ。つっても、湖がでかすぎるからなのか、それとも他の何かの要因なのかは良く分からんが、聖都付近は塩分濃度ゼロの完全な淡水なんだけどな」

 メルメメルアの問いかけに対し、アルヴィンスがそう答える。

 それを聞いたアメリアが、

「要するに、海と繋がっているから、海の魔物が入り込んできているって事?」

 と、新たな問いの言葉を投げかける。

 

「ああ。そういう事なんじゃねぇかと俺は思ってる」

 アメリアに対してアルヴィンスが頷きながらそう答えると、

「塩分濃度が海と大幅に違うのに、海の魔物が住み着くものなんでしょうか?」

 なんていう疑問を口にして首を傾げるミリア。


「魔物は塩分濃度など気にしていないのかもしれませんわよ?」

「なるほど……。たしかに魔物の生息には『そこに満ちている属性の力』が影響している……と、かつては言われていましたし、魔物にとっては、海水であろうが淡水であろうが、水は水でしかないという事なのかもしれませんね」

 アルヴィンスに代わって答えたイザベラの言葉に、ミリアは納得の表情でそんな風に返す。

 

 ――塩分濃度ゼロ……? いくら巨大な湖だとはいえ、ゼロってあり得るのか……?

 地球の汽水湖でそんな話は聞いた事がないぞ……?

 いやまあ……俺が知らないだけで、実は存在するのかもしれないが……。うーん……

 

 ラディウスがそんな事を考えていると、

「それにしても……何もないし、ウンゲウェダ・ドラウグの姿も見えないね……」

 と、セシリアが周囲を見回しながら言った。

 

「そうだな……。ここはハズレだったと思った方が良さそうだ。別の場所へ向かうとしよう」

 ラディウスは思考を中断してそう告げると、即座に浮上し始めた。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「……そろそろ、当たりが来て欲しいですわねぇ……」

「同感。ずっとハズレばっかりだし……」

 イザベラに対してアメリアがそんな風に言うと、

「古の時代の遺物はあったが、文字通り単なる遺物だったしな」

 と言って肩をすくめるアルヴィンス。

 

「そう言えば、あれってなんだったのかな?」

「まあ、かつてここで行われていた実験の残骸って所だろう」

 ラディウスはセシリアに対してそんな風に答える。

 

「実験の残骸ねぇ……」

 セシリアはそう呟くと、そのままメルメメルアとミリアを交互に見て、

「――何かそのあたりについて、知っていたりはしない……よね?」

 という問いの言葉を投げかけてみた。

 

「はいです。残念ながら、まったく知らないのです……」

「同じく。そのあたりの事は最近知ったくらいですし……」

 そんな、ある意味予想通りの言葉にセシリアは、「そうだよねぇ」と返す。

 

「――それにしても、このあたりは魔物がいないわね」

「たしかにそうですね。魔物にとってこのあたりは住みづらいんでしょうか?」

 周囲を見回しながら言うルーナに続くように、ミリアも周囲を見回しながら言う。

 

「だとしたら、住みづらい何かがあるという事になるわね」

 そう言って考え込むルーナに、

「ウンゲウェダ・ドラウグの住処……なんて事はないよねぇ?」

 と、アメリア。

 

「このあたりにだけ出没するっつーんなら、そいつもありえっかもしれんが、そういうわけじゃねぇからなぁ……」

 そんな風に言って肩をすくめるアルヴィンスに、アメリアが「だよねぇ」と返す。

 

「だが、何があるというんだ……?」

 ラディウスはそう呟きながら魔力探知のガジェットを起動する。

 それは、以前ヨナが使っていたものを複製し、さらに強化改良を施したものだ。

 

「ん? この辺だけ魔力の反応がぐちゃぐちゃだな……。という事は――」

「――ジャミングを発生させているものがあるという事ですわね」

「で、そのせいで魔物が住み着けねぇっつーわけか」

 ラディウスに続き、イザベラとアルヴィンスがそんな風に言う。

 それに対してラディウスは、

「そうだな。更に言えば、このぐちゃぐちゃな反応の中心に何かある可能性が高い」

 と、頷きながら返し、『その場所』へ向かって歩み始める。

 

 そして、そのまま少し歩いた所で立ち止まり、

「……この辺が中心点だが……」

 そう呟きながら見回す。

 しかし周囲にこれといって何も見当たらない。

 

「でも、何もないような?」

「たしかにそうですわね……」

 セシリアに続きイザベラがそう言った所で、

「……周囲じゃなくて、下?」

 とルーナが呟いて湖底へと視線を向ける。

 すると、そこには良く見なければ見落としそうな程、湖底に埋まっている『金属』があった。

 

「何か埋まってるわね……。ちょっと掘ってみましょうか」

 ルーナはそう言ってストレージに入れてきたスコップを取り出す。

 と、次の瞬間、

「先生に掘らせるわけにはいきません! 弟子の私が掘ります! 貸してください!」

 なんて言いながら、ルーナに手を伸ばすミリア。

 

「え? ええ、それはまあ、別に構わないけれど……」

 ちょっとだけ困惑気味にミリアへとスコップを手渡すルーナ。

 そして、スコップを受け取ったミリアは、

「ありがとうございます! 頑張って掘りますね!」

 なんて言いながら『金属』の周囲を掘り始める。

 

 しばらくして『金属』の姿が少しだけ明らかになる。

 それは大きなリングに複数の突起が等間隔に取り付けられたもので、良く見るとリングの下部には柄と思われるものが顔を見せていた。

 

「なんですの? これ」

「僅かに柄が見えんな? 杖……か?」

 イザベラとアルヴィンスがそう言った直後、

「これって……。もしかして、レゾナンス・スタビライザー……?」

 と、そんな事をミリアが呟いた。

後半部分を大幅に調整していたら、いつもよりも更新が遅くなってしまいました……


ま、まあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月20日(日)の想定です!

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