第3話 暗き監獄。遥かなる時の彼方の可能性。
――やはりというかなんというか……寸分違わず、この場所に来るんだな。
視界が監獄の目の前へと切り替わったのを確認しつつ、声には出さずに心の中で呟くラディウス。
「なあ、逆に1つ問うが……ガーディマというのを知っていたりするか?」
ラディウスは、扉の向こうにいる妖姫に向かってそう尋ねた。
すると、
「ガーディマ……。先程言った封魂術によって魂を込められたガジェットを保管するために建造された『刻ヲ渡リシ魂魄ノ方舟』の1つですね。残念ながら長い時の間に失われてしまったようで、この世界には既に存在していないようですが……」
というような答えが返ってくる。
それを聞いてラディウスは思考を巡らせた。
――存在しない……か。ヴィンスレイドが始末されているという発言から考えると、ひとつの可能性が浮かび上がってくるな……。確定に近づけるために、もう少し聞いてみるか。
「……先程言っていた、ウィンザームというのは?」
「ウィンザームは、ガーディマのあった共和国の名前ですね」
ラディウスの再びの問いに対し、妖姫がそう返してくる。
「なるほど……。実は、そのガーディマだが『アーヴァスタス王国』の『グランベイルの町』の北にあるんだよ。遺跡としてな」
ラディウスがそう告げると、しばしの沈黙の後、
「……先程も言いましたが、私の知識――いえ、リリティナの知識でも、そのグランベイルという町もアーヴァスタスという国も、この地にはありません。……この数年で新たに興されたとかですか? そうであれば私が知らないのも頷けますが……」
と、そんな風に言ってくる妖姫。
「いや、そうじゃない。……アーヴァスタス王国やグランベイルの町があるリーベスタ大陸と、ガルガンザ帝国のあるリーベスタ大陸とは別物だったんだよ」
そう告げたラディウスの言葉が理解出来ず、
「えっと……? 別物……ですか?」
と、妖姫が扉越しに怪訝な声で呟き返す。
「ああ、そうだ。俺もその考えにようやく辿り着いたんだが……この情報の食い違いをもっとも的確に表す事が出来るパターンがある。――今、星煌歴何年だ?」
「……ここに幽閉されたのが星煌歴953年で、あれから15年が経過しているので……星煌歴968年ですね」
妖姫の言葉に、自分の推測に間違いない事を確信するラディウス。
「俺の知るリーベスタ大陸も星煌歴968年だ。――そう、つまりどちらも同じアストネイテルという世界だが、辿った歴史が異なっている世界……だという事だ」
「辿った歴史が異なる……」
「そう、こっちのアストネイテルのガーディマは、何らかの理由で失われてしまったのだろう。しかし、失われない『可能性』も同時にあったんだと思う」
ラディウスがそう言うと同時に沈黙が訪れる。
そして、十数秒ほど経過してから、
「……つまり、失われない可能性が『現実』と化したのが、ラディウス様の方のアストネイテルで、そうならなかったのが、こちらのアストネイテルである……と、そういう事ですか?」
と、自分の発言を一つ一つ確認するかのようにゆっくりと言葉を返した。
ラディウスが「そうだ」と言って肯定を示すと、続けて妖姫は、
「……なるほど。たしかに可能性としてはありえなくはない話ですが……ラディウス様は、どうしてそのような考えに至ったのですか? 何か根拠があったりするのですか?」
という、ある意味もっともな疑問を口にする。
その妖姫の疑問に対し、ラディウスは一呼吸置いてから、
「ああ、それは簡単な話だ。……俺も時を遡って、歴史を変えたばっかりだったからな」
と、そんな風に答えたのだった――
一言で言えばパラレルワールドですね。
そして、ラディウスはパラレルワールド間を行き来している感じです。
なので、タイトルとあらすじの一番下2行は要するに……
※追記
誤字を修正しました。