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第6話 湖底探索。耀紋庵にて。

 翌日――

 

 メルティーナ法国の耀紋庵へとやってきたラディウスたちを、グラッツが出迎える。

 そして――

「これがサンプーチャン! たしかに面白いですわね!」

「面白いという感想の方が面白い気がすっけどな。ま、理解は出来るけどよ」

 サンプーチャンを食べるイザベラに対し、そんな風に言うアルヴィンス。

 さらにそんなアルヴィンスに、

「というか、どうしてアルヴィンスがここにいるんだ?」

 という、もっともな疑問を口にするラディウス。

 

 そう……ラディウスたちを出迎えたのは、グラッツだけではなかったのだ。

 

 そしてそれにセシリアが続くようにして、

「そうだね。てっきりセヴェンカーム方面に行っているかと思っていたよ」

 この場に教会関係者がいない為、聖女ではなく普段通りの言葉遣いで言う。

 アルヴィンスは、そんなふたりを見ながら、

「さすがに立場上表立って踏み入るわけにはいかねぇからな。こうして聖都で留守番していたんだが……なんだか面白そうな事をするっつーから、来てみたってわけだ」

 などという返事をした。

 

「面白そうって……」

「まあ……昔からこういう感じだし……」

 呆れ気味のセシリアに対し、アメリアがそんな風に言って、やれやれと首を横に振ってみせる。

 

「それにしても、よく周囲の者――ゼグナムの方ではなくて、教会の方ですわよ――が許しましたわね?」

「法国領内で定期的に暴れていやがるウンゲウェダ・ドラウグをどうにか出来るってんなら、それを『見届ける役』が必要だろ? んでまあ、お前たちは『護衛としては最強の布陣』だからな。これを超える護衛を用意する方が難しいって事で割とあっさりだったぜ?」

 イザベラの問いかけに、そんな風に答えると、

「話によると、どうせ言っても無駄だろうしという感情もあったみたいだけどね」

 と、付け加えるように言うアメリア。

 

「ははっ、ちげぇねぇ」

「そこは否定してくれないかな……」

 笑うアルヴィンスに対して呆れ気味に返すアメリア。

 アルヴィンスはそれに、

「否定のしようがねぇからな! つかそんな事より、見た事ねぇのがいるな? もしかして例のデュオロードの配下の奴か?」

 と返しつつ、ミリアの方を見る。

 

「ちょっと違いますね。私はデュオロード卿の配下である前に、ルーナ先生の弟子です!」

「あ、そっちが『主』なんだ」

 ミリアの宣言に続いてそんな風に呟くセシリア。

 そして、そのセシリアの呟きを聞いていたミリアが、

「当然です! 今はデュオロード卿よりもルーナ先生の方が大事です! どちらかを選べと言われたらルーナ先生を選びます! 必要ならリンクも変えます!」

 なんて事を熱を帯びた声で言った。

 

「いや、リンク変えたら駄目でしょ……。というかなんて発言してるのよ……」

 呆れと照れの入り混じった表情で額に手を当てながら呟くように言うルーナ。

 それに対してミリアではなくグラッツが、

「まあ、その時は私がどうにかしますのでご安心を」

 などと返す。

 

「どれに対する『どうにかします』なんですか……? それ……」

 ルーナがため息混じりにそう口にした所で、

「ははっ、デュオロードの配下っつーのがどんな感じなのかと思っていたが、なかなか面白れぇじゃねぇか」

 と言って笑うアルヴィンス。

 

「すぐ『面白い』の一言で括るんだから……」

 アメリアが、やれやれと言わんばかりの表情でため息混じりに言うと、

「なるほど、これがゼグナムの……。ある意味、『表』に立つに相応しい御仁ですね」

 なんて返すグラッツ。

 

「あれ? グラッツさん、ここにお店を構えているのに面識なかったんですか?」

 ミリアがそんな風に問いかけると、それに対してグラッツは、

「ここでの私は一介の市民ですからね。面識は『こちらからの一方通行』ですよ。こうして互いに互いを『認識しあった』のは、今日が初めてです」

 と、部分的に強調しつつ答える。

 

「なるほど……。でも、たしかにそういうものですよね。私もアルジラの王様なんて、私の方から目にするくらいでしたし。――グラッツさんは逆に、アルジラの王様とは普通に話をした事がありますよね?」

「それはまあそうですね。これでも王とは近しい立場でしたから」

 グラッツはアメリアに対してそんな風に返した後、アルヴィンスの方を見て、

「――デュオロード殿からの伝言ですが、可能ならば次は『裏』同士での接触を所望したいとの事です」

 なんて事を言った。

 

「んなっ!?」

 アメリアが驚きの声を発し、それに続くようにして、

「え? いきなりそこに踏み込むの?」

「たしかに驚きねぇ」

 と、セシリアとルーナも驚く。

 もっとも、こちらはアメリアとは意味が異なる『驚き』だが。

 

「あ、これもうひとついただけます?」

 イザベラにいたっては、最早気にもとめずにサンプーチャンのおかわりを頼み始めた。

 

 無論、ラディウスやメルメメルアもまったく驚いておらず、むしろ興味深そうな表情で眺めているだけだった。

 

 そんな光景に、

「なんで身内が一番驚いてんだよ!?」

 などというツッコミを口にするアルヴィンス。

 いや、口にせずにはいられなかった……と言うべきか。

 

 アルヴィンスはそのまま「はぁーっ」と深く嘆息してから、

「……ま、ここにいる全員にバレバレな時点で、あんたらも当然そこまで把握してるよなぁ……」

 と、そう呟くように言った。

 

 ちなみにイザベラ以外は、『なんとなくそういう事なんだろう』という認識だっただけで、完全にバレていたわけではなかったりする。

 要するに、結果的に『あ、やっぱり』となっただけだったのだ。

 

「はい。ですが、その件についてデュオロード殿はアルベリヒには伝えていません」

「おっと、そうくるか。そうだな……一応、伝えるだけ伝えておくぜ。なんせ『太陽が嫌い』な奴だから、出てくるかはわかんねぇけどな」

 グラッツに対し、そう言って肩をすくめてみせるアルヴィンス。

 

「ええ、それで構いません。こちらも伝えておきましょう」

「ま、期待しないで待っていてくれ」

 アルヴィンスはグラッツに頷きながらそう返すと、ラディウスの方を向き、

「……話が再び脱線する前に、湖底で何をするかについて詳しく説明してくれ。あ、それと、湖底へ行くためのガジェットも頼む」

 と、そんな風に告げた。

 

「あ、ああ、そうだな。わかった」

 ラディウスはそう返しつつ、ストレージからベルト型のガジェットを取り出し、アルヴィンスへと手渡すのだった。

投稿設定が間違えて13日になっていました……

気づいて手動で上げましたが、大分遅くなってしまいました……。申し訳ありません。


ゼグナムの『裏』のリーダーについては、以前からちらほらとそれっぽい話は出てきてはいますが、登場するのがいつになるのかというと……


とまあ、それはそれとしてまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月13日(日)の想定です!


……次回は投稿設定をミスらないよう、注意したいと思います……


※追記

誤字脱字を修正しました。

表現がおかしなところがあったので修正しました。

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