第14話 古の災厄。エル・ガディア製かガーディマ製か。
「まあ、たしかに複雑だな。所々難解な処理になっているし」
「そうですわね。簡単には解析――いえ、解読出来ませんわね、これ」
「ううーん……。半分くらいしかわからないのです」
ラディウス、イザベラ、メルメメルアの3人がそんな風に言い、
「……デュオロードに対してどうにかなりそうって言わなかったっけ?」
と、セシリアがジト目で続く。
「あ、あの場ではああ言っておかないと、低く見られそうな気がしたのよっ!」
セシリアに対してそんな風にルーナが返すと、
「まあたしかに、ここは『余裕です』という雰囲気を出しておいた方がいいかもしれないけどな」
などと言いながら、ある意味ルーナにあれこれ教えた『理由』というか『目的』は達成出来た気もするな……なんて事を思うラディウス。
「そこは否定出来ませんわね。デュオロードは、おそらく私の技量は把握しているでしょうけれど、ラディウスとルーナの技量は把握出来ていないはず。ルーナの技量を高く見せておけば、必然的にラディウスの技量はさらに高いと思われますわ。……まあ、元々高いですけれど」
なんて事を言って肩をすくめるイザベラ。
そんなイザベラに対し、
「そんな事はないぞ。俺だって得意ではないものくらいあるしな。それこそイザベラの得意そうな拘束系ガジェットなんて、アストラルアンカーくらいしか作れん」
と、そう返すラディウス。
「……その得意分野も奪われそうな気がしていますけれどね」
若干照れながらため息をつくという妙な言動をするイザベラに、
「イザベラ様、照れるのか嘆くのか、どっちかにしましょう」
などというツッコミを入れるヨナ。
そんなヨナに対してイザベラは、
「そんな突っ込み、いりませんわよっ!」
と返しつつ、ラディウスとルーナを交互に見て、
「おほんっ、で、それはそれとして、これはどうしますの?」
と、立体映像を指差しながら問う。
するとその直後、
「改良する事をおすすめします」
なんていうシステムの声が響く。
「へあっ!?」
唐突に素っ頓狂な声を発して驚くイザベラ。そして、
「……そ、そう言えば、あなたがいたんでしたわ……」
と、思い出したように呟いた。
「その設計図は民生用に調整された術式を、ペキュリアーウェポンと同じ術式へと書き換える為のプラグインガジェットの設計図であると解析いたしました。しかしそれは、エル・ガディア製のSWOADSをベースにしているようです。その為なのか、我が国の最新規格よりもSWOADSのバージョンが古いようです。出力効率に20%の差があります」
などと告げつつ、空間に2種類の構成図を同時に表示し始めるシステム。
「スウォードズ? ソードス? ……良くわからないけど、剣のこと?」
「そういう略称の何かなんだろう。さっきちらっと見た時に、俺にもよくわからない部分があったが、そこら辺がそうなのかもしれん」
首を傾げながら呟くルーナに対し、ラディウスがそんな風に言う。
そして、そこにイザベラが付け加える。
「で、目の前に表示されているのが、おそらくその部分の『違い』だと思いますわ」
「あ、なるほど……そういうわけね」
納得してそんな風に言うルーナだったが、すぐに、
「でも、そうすると……」
と、顎に手を当てながら呟いた。
「――あのペキュリアーウェポンも、エル・ガディア製って事になる……のか?」
ラディウスがルーナの呟きの先を引き継ぐかのように、そう口にする。
するとセシリアが、
「そこはたしかめてみるしかないんじゃない?」
と言った。
「たしかにそうだな。……ルーナ、ちょっと『うん?』みたいな感じで『それ』に対して違和感を覚えたフリをしておいてくれ」
「え? あ、あー、そういうわけね。わかったわ」
ラディウスの発言の意図を理解したらしいルーナが、そう返事をして頷く。
「良くわかりませんですが、もう一度向こうへ行って、また戻ってくる感じですか? です」
カチュアのそんな問いかけに、
「ああ、そういう事になるな。すまん」
と答えるラディウス。
「いえ、気にしないでくださいです」
「何度もごめんね」
カチュアに対し、ラディウスに代わるようにしてルーナがそう返し、そのまま、
「……それで、たしかこれを構えたままだったわよね?」
という問いの言葉を投げかける。
「そうだな。構えた状態で向こうへ戻るとしよう」
「わかったわ。たしかこんな感じだったはず……」
ラディウスにそう返事をし、立体映像を表示した状態にするルーナ。
そして、
「それじゃ、戻るわね」
と告げて、向こう側へと移動する。
「……ん?」
ルーナは、移動するなりそんな呟きを発しつつ首を少し傾げてみせた。
すると、
「どうかしたのか?」
当然のようにそのルーナの言動に対し、デュオロードが疑問を口にする。
「いえ、なんでもないわ。ちょっとだけ引っかかりを覚えたのだけど、気のせいだと思うから気にしないで」
「ふむ、そうか」
ルーナの返答に、デュオロードは顎に手を当てながらそう返すと、
「ともあれ、それがあれば聖剣持ちは問題ない。残りの6人でパーソナライズを実行してしまうと良いだろう」
と、続けた。
「そうですわね」
「ああ、そうだな」
「はいです。そうするです」
イザベラ、ラディウス、メルメメルアの3人がそんな事を言いながら椅子から立ち上がる。
そしてそれに続いてリリティナが椅子から立ち上がりながら、
「ところで、あのペキュリアーウェポンですが、あなたの祖国……エル・ガディアで作られたものなのですか?」
と、ペキュリアーウェポンの収められている黒い箱の方を見て、自然な感じで問いの言葉を投げかける。
するとそれに、
「その通りだ……と言いたいところだが、残念ながら違う。本当なら我が国のものを用意したかったのだが、保管されているものにはなかったのでな。仕方なくガーディマ製のものを用意した」
と返すデュオロード。
「なるほど、そうだったのですね」
そう返事をしつつ、リリティナも先に箱の前へと移動していたラディウスたちに続いて箱の方へと向かう。
そして、ルーナとヨナが箱の前へとやってきた所で、
「とりあえず、俺からやるとしよう」
と告げ、ラディウスが箱の上部にある認証パネルに手を触れた。
するとパネルが薄い青色へと変化。
パネル上に『認証中……』という古代文字が表示される。
「なんと書いてあるのでしょう?」
「認証中と書かれているですね」
ヨナの疑問に対してメルメメルアが答えた直後、
ピコンッ! という音と共に『パーソナライズ完了』と表示された。
そして、自動的に箱が開き――
「……随分とゴツい銃剣だな……」
というラディウスの呟きどおり、箱の中に入っていたのは、一見スナイパーライフルに見えなくもないが、銃口部分がガトリング砲のようになっており、その下に幅広の刃が取り付けられているという、なんとも言い難い形状の重厚な銃剣だった――
色々あって今日の分が未完成状態だった為、更新が遅くなりました……
ギリギリ日が変わる前に更新が間に合いましたが、未調整の為、あとで調整する可能性もあります。
とまあ、そんなこんなでまた次回!
次の更新も予定通りとなります、3月2日(日)の想定です!
……想定です!
いつもの時間に更新したいとは思っています……




