表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

614/636

第11話 古の災厄。セヴェンカームと湖底遺跡。

 ――直前に話していたのは、セヴェンカームの話……王子の末裔が湖底遺跡で何かを見つけて、首都を丸ごと復元したって話だったな。

 

 ラディウスはデュオロードとの対話の場に戻って来るなりそう思考しつつ、

「――セヴェンカームの王子の末裔とやらが、湖底遺跡で何を見つけたのか気になるな」

 と、呟いた。

 そしてそれに続くようにして、リリティナが頷きながら言葉を紡ぐ。

「はい。首都を丸ごと復元するとなると、並大抵の代物ではありませんからね……」

 

「ところで、そもそもの話になるですが……こちらの世界にある湖底遺跡で見つけたものを、向こうの世界で使ったという事は、私たちと同じように、平行世界間を移動出来るガジェットを持っていた……という事になるですかね?」

 ラディウスとリリティナの発言が終わった所で、そんな疑問を口にするメルメメルア。

 

「まあ、持っていたんじゃない? あれ、何気に色々な所で手に入るっぽいし」

「たしかに、各地の遺跡でそれなりに見つかりますわね」

 セシリアとイザベラがリリティナの疑問に対してそう返事をした所で、

「……それもまた、今思えばおかしな話だ。あれは古の時代において、市井に出回っていたような代物ではない……。だというのに、大陸の様々な場所で発見されるのだからな」

 などと、顎に手を当てながら言うデュオロード。

 

「あのガジェットに関する情報は、帝国領内の各地に意図的に流されていた……いえ、流した上で、マインドコントロールによって『同じ物』を作らせていた……?」

 そう呟くように言ったルーナに対し、

「おそらくそういう事なんだろう。今思えば、あのガジェットは機能――というか、組み込まれている術式こそ同じだが、見た目が少しずつ違っていたからな」

 と、腕を組みながら返すラディウス。

 

「たしかにそうですわね。私の物をヨナの物は、少しだけ見た目……もっと言うなら、装飾に違いがありましたわ」

「そうだったのですか? 私には良く分かりませんが……」

 イザベラの発言に対してヨナはそんな風に返事をした後、

「しかし、あれを各地にばら撒いていた『何者か』は、一体何をしようとしていたのでしょうね?」

 と、考え込みながら口にした。


「そうですわね。ひっじょぉぉに気になりますけれど、現時点では推測のしようもありませんわね。情報が足りなさすぎですわ……」

 イザベラは『非常に』の所を、わざわざ伸ばしながらそう言って肩をすくめる。

 と、そこでセシリアが、

「でも、それだけばら撒かれているなら、セヴェンカームの王子の末裔がどこかで手に入れていたとしてもおかしくはないね。というか、湖底遺跡に普通に置かれていたんじゃないかって気もするし」

 なんて言った。

 するとそれに続くようにして、メルメメルアが疑問を口にする。

「というか、どうしてわざわざ向こうの世界へ行ったですかね?」

 

「向こうの世界でセヴェンカームがある辺りは、こちらの世界では帝国領ですからね。復興させても、帝国との争いになるのは明白です。なので、それを避けたのではないかと」

 ヨナがそんな風に言うと、それに対して、

「まあ、そういう事であろうな。向こう側のセヴェンカームがある辺りは、かつては『白銀の辺境』と称される雪と氷に閉ざされた地であり、どこの国のものでもない、言わば捨て去られた土地であったからな。こちら側よりも安全に国を復興させ、そして存続させられるというものだ」

 と、腕を組みながら言うデュオロード。

 

「でも、雪と氷に閉ざされたような場所に国を作って、よく発展したというか……よく人が集まったよね」

「それこそ『湖底遺跡で見つけた物』の力であろうな。今のセヴェンカームを見ればわかるが、それなりに雪は降り、積りもする。だが、それは冬の間だけだ。そして、冬でも『雪と氷に閉ざされた』などと呼べる程の降り方はせぬ。そして、年中極寒で作物が育たないなどという事もない」

 セシリアの発言に対し、デュオロードがそんな風に返すと、それを聞いたラディウスは、

「要するに、広範囲の気候を制御するような代物も、セヴェンカームにはあるという事だな。そんなガジェットがあるなんて聞いた事もないが」

 と言いつつ、ラディウスは疑問を抱く。

 

 ――そもそもの話として、それはガジェットなんだろうか? 

 首都の『復元』と同様に、ガジェットとは違う未知の魔導装置か何かなんじゃないか……?

 

「古の時代にも、そこまでの物が作られたという話は聞いた事がないのです」

「うむ。そもそも自然の力など、魔法の力をもってしても、そう簡単に制御出来るようなものではない。だからこそ、今いるこの場所のような、シェルターの類を作っていたのだからな」

 メルメメルアの言葉に頷きながら、そんな風に答えるデュオロード。

 するとそこで、ルーナが思い出したように、

「制御と言えば……あの湖やその近郊って、度々不自然な霧が発生していたわよね? ウンゲウェダ・ドラウグなんてものが出現するし」

 と、口にした。

 それに対してラディウスは思考を巡らせながらといった感じで、

「たしかにそうだな。……気候の制御を行うなんらかの代物が、まだ湖底遺跡に残っていて、それが暴走している……のか?」

 そう返事をした後、顔を前に向けて言葉を続ける。

「……やはり湖底遺跡は、どうにかして調べてみる必要がありそうだ。向こうの世界で不穏な状況にあるセヴェンカームの事を考えると、な」

 

「……ゼム=ドゥア湖はアルベリヒの要請を受けたベルドフレイムの命によって、以前よりも警戒が厳重になっている。そう簡単には到達出来ぬであろう。本来であれば、な」

 デュオロードはそう言って不敵な笑みを浮かべる。

 それに対して、

「あなたならば、どうにか出来る……と?」

 という問いの言葉を投げかけるリリティナ。

 

「それも含め、方法はふたつある。ひとつはアルベリヒを排除する事。そうすれば、横槍が入ることはないゆえ、簡単に警戒の撤回を指示する事が可能だ」

「それは、現時点ではかなり困難な方法ですね」

 リリティナがそう返すと、デュオロードは「であろうな」と言いながら、肩をすくめてみせる。

 そして、

「ふたつ目は、ゼム=ドゥア湖で何らかの『異常』を発生させる事だ。こうすれば、確認の為にそちらに人員が割かれる。というか、割くように指示する事が出来る。それこそ、侵入の為のルート上に配されている者たちを優先的にそちらに回せば、容易く侵入する事が可能となるであろう。ま、もうひとつの方法は否定されたゆえ、こちらの方法一択とも言えるがな」

 と、そんな風に告げた。

長らく放置されていた湖底遺跡や大封印にようやく近づいて来ました……


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定どおりとなります、2月20日(木)の想定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ