第3話 古の災厄。滅界獣と復活。
――いや、待てよ? 喰われた……?
セヴェンカームが……『隔絶』されたとして、そこに居た人間はどうなる?
『隔絶』されたその場所は、『滅繭』となって、そこから滅界獣が生み出される……
ラディウスはそこまで思考を巡らせた所で、
「滅界獣は、隔絶に飲み込まれた人間から生まれている……?」
なんていう『思考の続き』が口をついて出た。
それに対してセシリアが反応し、
「え? でも、さっき隔絶されてしまった場所はどうなるか謎だって……」
と、そんな風に言う。
「たしかにそうだが、それは『ここのシステムが得ている情報』での話だ。セシリアが魔人に関して問いかけた時に、魔人は別の国で生み出された存在で、入国を禁止している為に情報がないと言っていただろう? つまり、この国――ガーディマは滅界獣の正体に気づいていないか、気づいていながら『隠蔽』していたんじゃないか?」
「滅界獣の正体に関して、当システムには情報がありません。残念ながら、その推測への返答は出来ません」
ラディウスの言葉に、『声』がそう反応する。
「当システム……たしかにラディの言う通り、この声――いえ、もうシステムと呼称してしまった方が良いわね――が持つ情報は、ガーディマが有していた情報の一部……という事になりそうね」
「ええ、そのようですね。このシステムを作った者……というか管理者は、ここへ辿り着いた者に対して教えても構わないと判断した情報しか、与えていないという事なのでしょう。まあ……ある意味、管理者としては当然の対応、判断であると言えなくもないですが」
ルーナの発言に、リリティナが頷きながら返した所で、
「――それなら、もうひとつ聞きたい。今の推測をそちらの持っている情報で分析した場合、結果はどうなる?」
という問いの言葉を口にするラディウス。
「――分析には制限があります。推測を判断する事は出来ません」
ラディウスの問いかけに対し、そんな風に答える『声』――システム。
「……そうきたか。やはりなんらかのセーフティ……プロテクトがかかっているな」
顎に手を当てながらラディウスがそう呟くように言うと、
「そうなると、ガーディマが滅界獣の正体に気づいていなのではなく、『隠蔽』されている可能性の方が高くなってきましたわね」
と言って、肩をすくめるイザベラ。
「そうですね……。ですが、ここへ辿り着いた者たちに、次元侵食という『災厄の名』を教えておきながら、そちらは隠したままというのはどういう理由なのでしょうね?」
「それに関してはさっぱりですわね……」
頷きつつも疑問を口にするヨナに対し、イザベラはそんな風に返すと、そこで上を向き、
「――滅界獣の名の一部に人名が使われているのはどういう理由ですの?」
という、問いの言葉をシステムへと投げかけた。
「――当システムが保有している情報に、どうしてそのような識別名が世界共通で使われているのかという情報はありません。故にその質問への返答はいたしかねます。しかし、その名前は滅界獣の復活を阻止し、完全に倒す事に繋がります」
「復活……です?」
「完全に倒す……?」
システムの反応に対し、イザベラに代わってメルメメルアとルーナが、同時に首を傾げながらそんな風に呟く。
「それはつまり、普通に倒しただけでは駄目だという事ですか? です」
そうカチュアが問いかけると、
「はい、その通りです。 滅界獣は普通に倒しても一定の期間が経過した後、再び蘇ります」
というシステムの声が返ってくる。
「倒しても蘇る……。つまり、私たちが倒した滅界獣は、いずれまた復活するって事だね……」
「そう言えば、サウスロードエンドへ行った際に、冒険者ギルドで『最近、見た事もない大型の魔物が各地で現れるようになった』……という話を聞いたですが、その『復活』が影響している……です?」
セシリアの言葉に続くようにして、メルメメルアがそんな風に呟く。
「……たしか、前に帝国軍が各地で大型の魔物を倒していたはずですわ」
「そう言えば、そのような話を聞いた事がありますね。どういうわけか、公表などはされていませんが」
イザベラとヨナがそんな風に言った所で、
「公表されていない情報、記録……ですか。となると……お父様、あるいはベルドフレイムお兄様かアルベリヒが、なんらかの理由でそう判断した……という事になりますね。もっとも、『復活』によって、結果的に表に出てしまっている状態ではありますが」
と、リリティナ。
「その辺りは、デュオロードが何か知っていそうな気もするな。……いや、だからこそ、俺たちにここへ行くように言ってきたのかもしれない」
「そうね。次元侵食と含めて、こちらが一定以上の情報を有している状態にしておきたかった感じはするわね。……何故、自分で説明せずに、わざわざこんな回りくどい方法を取ったのかは良く分からないけど……」
ラディウスの言葉に同意しつつ、そんな疑問を口にするルーナ。
それに対してイザベラが肩をすくめながら告げる。
「まあ、あの男の真意についてはさっぱりですけれど、とりあえずシステムから得られるだけの情報を得た上で、向こう側へ戻って話をするしかありませんわね」
「たしかにそうだな」
ラディウスはそう返しながらイザベラに頷いてみせた後、。
「――それで『人の名前』が完全に滅界獣を倒すのに関係しているというのは、どういう事なんだ?」
と、そうシステムに問いかけた――
投稿設定がミスっていた為、いつもよりも投稿が遅くなりました……
(気づいて手動で投稿しました)
今回、思ったよりも話が進んでいない気がします……
とはいえ、これ以上進むと話の区切りが難しかったので、一旦ここで区切りました。
とまあ、そんな所でまた次回!
……なのですが、諸事情により今週末は2日程更新出来ない為、申し訳ありませんが、次の更新は1月21日(火)の想定となります。




