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第2話 古の災厄。滅繭と滅界獣。

「これ、隔絶されてしまった場所はどうなるんですの?」

 イザベラがもっともな疑問を口にすると、

「現時点ではその場所がどうなっているのかは不明です。その場所から生還した人間も、サルベージ出来た監視ガジェットも存在しない為、情報を得る事が出来ないのです」

 『声』がそんな風に返事をする。

 

「そうですの……。でもまあ、たしかにそうですわよねぇ……」

 そんな風に納得の言葉を口にするイザベラ。

 そして、一呼吸置いてから、

「――説明を続けてくださいませ。次の段階はどうなるんですの?」

 と告げた。

 

「はい。第2段階の説明をいたします。第2段階は第1段階からおおよそ1ヶ月程度経過した状態です」

 と、そう『声』が告げた所で、モニタに映されている画像が切り替わる。

 

 新たに映し出されたのは、大きくなった穴の中に紫色の靄が満ちており、更に白い球体状の靄が幾つも浮かぶ、そんな光景だった。

 

「これは……刻の崩滅(ときのほうめつ)……でしょうか?」

 リリティナがそんな風に言うと、

「たしかに死の大地で見た大穴――刻の崩滅に似てはいるけど、あそこに浮かんでいたのは、『半透明のブロック』で、中に風景が映し出されているものだったから、違うんじゃないかしら……」

 と、そう返すルーナ。

 

「これが第2段階『滅繭(めっけん)』と呼ばれている状態です」

「滅繭……?」

「妙な名称なのです……。たしかにあの白い球体状のものは、繭であると例えられなくもないですが……」

 『声』の説明に対し、ルーナとメルメメルアがそんな風に反応し、

「そうですわね。楕円じゃなくてまんまるですけれど」

 という突っ込みめいた一言を続けるイザベラ。

 

「楕円ではない点は、この際どうでもいいのではないかと……」

 さらにそんな突っ込みをヨナが入れた所で、

「……これ、妖姫がいればもっと色々詳しい話が出来そうだよねぇ……」

 と言って、肩をすくめるセシリア。

 そのセシリアに対し、ラディウスは腕を組みながら、

「まあ、そうだな……。もっとも、アルヴィンスやクレリテたちの方でも必要だったし、そもそもこの遺跡には入れないとか言ってたから仕方ない」

 と言って、首を横に振ってみせた。

 

「説明の途中でごめんだけど、魔人ってどういう存在?」

「魔人……我が国とは別の国が生み出した者たちですね。我が国では入国を禁じているので詳細な情報は分かりません」

 セシリアの問いかけに対し、『声』はそんな風に答える。

 

「なるほど……そういうわけか」

「たしかにそれだと入れなさそうだね」

 ラディウスとセシリアが納得した所で、

「――質問は以上でしょうか?」

 という問い掛けの『声』が響く。

 

「あ、うん。大丈夫」

 セシリアがそう答えると、

「では説明に戻ります。――この繭のようなものは、滅界獣の卵……のようなものです」

 などと告げてくる『声』

 それに対し、当然と言えば当然ではあるが、

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 と、その場にいた全員が驚きの表情をみせた。

 

「こ、ここから滅界獣が生み出される……ですか? です」

 驚きの表情のまま、そんな風に言うカチュアに続き、

「……なるほどですわ。だから『滅繭』という名称なんですわね」

 なんて事を、腕を組みながら口にするイザベラ。

 

「た、たしかにそれなら納得なのです」

「そうね……。でも、こんな風になっているとは思わなかったわ……」

 メルメメルアとルーナがそう言った所で、モニタに映っていた繭が砕け散り、中から放出された『紫色の光球』が穴の外へと飛び出してくる。

 そして、外へと出た瞬間、光球が『生物の形』へと変化した。

 

「こ、これって……」

 そう呟くように口にしたセシリアに続き、リリティナが顎に手を当てながら言葉を紡ぐ。

「滅界獣の孵化……とでも言えばいいんでしょうか?」

 

 その直後、リリティナが紡いだ言葉通りだといわんばかりに、生物の形をした光はその輝きを徐々に失っていくその代わりに、『肉体』が姿を現す。

 それは――

 

「――『深淵ヨリ来タリシモノ』……だと!?」

「イザベラが食べられた滅界獣!?」

 そうラディウスとセシリアが同時に驚きの声を発した。

 

「私が食べられたという言い回しはどうなんですの……? せめて、飲み込まれたにしてくれません……?」

「……突っ込む所はそこなんですか?」

 イザベラの発言に、再び突っ込みを入れるヨナ。

 

「CEVENCALM ALICE ESTER LILLIA? これって、あの時は後ろに『VE LO FOD DYG NEU』って付いていたような……?」

 映し出されている滅界獣『深淵ヨリ来タリシモノ』に対して伸びる白いラインの先に表示されている文字を読みながらそんな風に言うセシリアに対し、

「そうだな。そこの部分は個体ごとに異なっている……と、そう考えるのが妥当だろう。ただ……こっちは完全に表示されているが」

 と、そう返すラディウス。

 

「明らかに名称――地名と人名よね、これ。セヴェンカーム。アリス。エスター。リリア……」

 ルーナがそんな風に言うと、

「セヴェンカームはともかく、アリス、エスター、リリアというのはなんですの?」

 と、もっともな疑問を口にするイザベラ。

 

「こいつに食べられてしまった人の名前……とかです?」

「だとしたら、あの時の『深淵ヨリ来タリシモノ』の後ろに、IZAとか付いてそうじゃない?」

 メルメメルアの推測にセシリアがそう返すと、メルメメルアもそれに納得し、頷いてみせる。

「なるほど、たしかにそうなのです」

 

 すると、それに続くようにして、

「……この滅界獣、生み出されたばかりじゃありませんの。まだ誰も食べていないですわよ……?」

 と、イザベラがため息混じりに言った。

 

「ええっと……。その、食べられた人の名前ではないとしたら……一体なんなのでしょうか? です」

「――これって、3つとも繋げて、この滅界獣の真の名前……になるとかなんじゃないかしらね?」

 カチュアの疑問に対し、今度はルーナが推測を口にする。

 

「アリス・エスター・リリア……という名前だという事ですか? まあ、たしかにありそうですが……」

「そもそも、それって女性につける名前ですよね? これメスなんでしょうか……?」

 リリティナとヨナが、そんな風にルーナの推測に対して言葉を紡ぐのを聞きながら、ラディウスは思う。

 

 ――真の名前……か。たしかに『深淵ヨリ来タリシモノ』なんていうのは、どう考えても個体固有の名前ではないし、個体別に識別する為に名前が付けられていたとしてもおかしくはないが……

 そうなると、今度はその名前を『誰が付けているのか』という話になってくるよなぁ……

 それに、その前のセヴェンカームというのはどういう事だ?

 ……セヴェンカームのアリス、エスター、リリア……。メルは喰われた人の名前だと言っていたが、喰われたのがセヴェンカームだとしたら……?

 いや、そっちもおかしいか。まだ生み出されたばかりなんだから、セヴェンカームが襲われているわけがないな。

 そもそも、セヴェンカームって古の時代から存在していたのか……?

 まあ、古の時代の記録に出て来ているわけだし、存在していたのかもしれないが……

 

 と。

まあ……なんとなく予測出来そうな気はしますが……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新は予定通りとなります、1月16日(木)の想定です!


ただ、その次はもしかしたら、また1~2日間が空くかもしれません……

(まだ不確定なので、普通に予定通りに更新出来る可能性もあります)

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