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第27話 遺跡攻略。最終試験。

 ラディウスたちが開け放った大きな扉の先は、広い円形の部屋だった。

 

 ――いかにもボス部屋ですと言わんばかりの構造だな……

 

 なんて事をラディウスが思った所で、

「受験者グループ『42億9496万7295番』は計測と判定により、テストプログラムの工程を12段階スキップし、最終試験の実施が妥当と判断しました。最終試験の準備を開始しますので、受験者グループのメンバーは、部屋の中央付近に移動してください」

 という声がどこからともなく響いてきた。

 

「この遺跡の管理システムか何か……か?」

「古の時代の遺跡で時たま流れてくる機械音声といった感じでしたし? その可能性は高い気がしますわ」

 ラディウスの呟きに対し、そんな風に言うイザベラ。

 

「部屋の中央へと移動しろと言っていましたね」

「そうですね。わざわざそう告げてきたという事は、中央に移動する事で、『最終試験』が開始される仕組みになっているのではないかと」

 ヨナに対して頷きながら、リリティナがそう返す。

 

「逆を言えば、中央までいかない限りは最終試験は始まらないって事だよね? しっかり準備しろって事なのかな?」

「おそらくそういう事なのだと思うです」

 セシリアの疑問に、メルメメルアがそんな風に答えると、それに続くようにして、

「もっとも、何も準備するような事はありませんけれどね。大して消耗もしていませんもの」

 なんて言って、肩をすくめてみせるイザベラ。

 

「ま、たしかにそうだな。既にもう準備万端だと言っても過言ではない状態だし、部屋の中央へ向かうとしようか」

「ええ。さっさと最終試験を開始してもらいましょ」

 ラディウスの言葉にルーナが頷きながら返事をする。

 

 そして、他の皆も同じく頷いてみせると、そのまま部屋の中央へ向かって歩き出した。

 

「それにしても、42億って……多すぎじゃない?」

「何度も出入りされているとはいえ、そこまでいくものなのかしらね?」

 歩きながら、ある意味もっともな疑問を口にしたセシリアとルーナに、

「わからん……。今まで処理が追いついていなかったせいで、カウントがエラーしているというのも、十分考えられる話だし」

 と、返すラディウス。

 そして――

 

 ――42億9496万7295って、『むこのごんざぶろう』こと、65536を累乗して1を引いた数だしな……

 計算処理がバグってカンストした……みたいな可能性は普通にあり得そうだ。

 まあ、42億9496万7295がカンストなのかはわからんし、単なる偶然だというのもまた、普通にあり得る話ではあるが。

 

 なんて事を思う。

 

「それにしても、最終試験って何をさせられるのでしょうか? です」

 カチュアがメルメメルアの方を見て、そんな疑問を口にする。

 それに対してメルメメルアは顎に手を当てて考え込みながら、

「うーん……ちょっと分からないのです。今までの流れからすると、何かと戦わされるのだとは思うですが……」

 と、そう返事をした。

 

「そう言えば、あの声……『準備』とか言ってなかった?」

「ああ、言ってたな。わざわざそう告げてきたって事は、最終試験用にこの部屋の構造が変化したりするのかもな。この部屋、いくらなんでもだだっ広すぎるし」

 セシリアの疑問に、ラディウスが推測しつつそう答えると、セシリアがそれに対して頷いてみせる。

「あー、たしかに。ここまでの広さにする意図が良く……いや、さっぱり分からないね」

 

「まったくなのです……。『眼』で見回してみた所、この部屋全体が『疑似的な戦場を構築する為』という『用途』だという事は判明したですが、それ以上は完全に謎なのです」

 メルメメルアのその発言を聞いたラディウスは、

「擬似的な戦場……? 仮想空間的なもの……か? だとしたら、何かを仮定した、あるいは何かを模倣した戦いを行う……という事なのか?」

 と、そんな事を呟くように言う。

 

「まあ、もう中央に着くし、すぐにわかるわよ」

 ルーナがそう口にした通り、ラディウスたちは部屋のほぼ中央までやって来ていた。

 

 するとそこで案の定と言うべきか、

「受験者グループ全メンバーの所定位置への移動を確認しました。これより『構築』を開始します」

 という声が響き、壁、床、天井……部屋の全てが唐突に『真緑』になった。

 

「上も下も左も右もっ! どこを見ても緑一色ですですっ!」

 そうカチュアが驚きの声を上げた所で、今度は部屋全体に格子状のラインが走り始める。

 

 ――この格子状のライン……。これは……まさか、グリッドか?

 

 ラディウスがそんな風に思った直後、部屋全体が眩い光に包まれた。

 そのあまりの眩しさに、

「ま、眩しいのですっ!」

「な、なんですのっ! 一体っ!」

 メルメメルアとイザベラがそんな声を発した。

 

 その光はしばらくすると収まり始め……

「ふぅ。どうにか収まってき――って、な、なにこれぇっ!?」

 と、目の前の光景に対して、セシリアが困惑の表情で叫んだ。

 

「……荒……野?」

 リリティナはセシリアと同じく困惑しつつも、叫ばずに呟いて首を傾げた。

 

 そう……。ラディウスたちの目の前には、どこまでも広がる赤茶けた地面があった。

 といっても、ラディウスたちのいる所からある程度進むと断崖絶壁になっており、荒野というよりかは、高台のような感じだが。

 

「……断崖までの距離が、部屋の壁までの距離とほぼ同じですね」

「という事は、ここはあくまでも部屋の中という事になるわね。案外、あの崖も幻の類だったりするんじゃないかしら」

 ヨナの発言に対し、ルーナは顎に手を当てながらそう返すと、崖の方へと視線を向けた。

 そして、そんなヨナとルーナのやり取りを見ながらラディウスは思う。

 

 ――やはり、仮想空間の類だったか……

 となると、出てくる『敵』も、やはり何かを模倣した存在……なのだろうか?

 

 と。

仮想空間と言っていますが、魔法的な技術なので「幻影空間」と言う方が近い気がします。


とまあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、12月8日(日)の想定です!


なお、その次から年末進行的な都合により、更新タイミングが若干変わると思います……

(あまり空きすぎてしまわないように調整するつもりです)

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