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第23話 遺跡攻略。ヨナVSドールガジェット。

「以前戦ったのに似ている気がするのです。あの時は倒したと思ったら増援が来て、3人ではさすがに厳しそうだったので撤退したですが」

 メルメメルアが甲冑を鎧った巨人――正確に言うなら、巨人型ドールガジェット――を見ながらそんな風に言う。

 

「つまり、倒そうと思えばひとりでも倒せるわけですわね。ヨナ、相手していいですわよ」

 と、ヨナの方へと顔を向けて告げるイザベラ。

 

「……さっきの雑魚の群れと比べて、急激に難易度が上がりすぎな気がしますが……。ですがまあ、ちょっとやってみましょうか。多分、倒せると思いますし」

 ヨナはイザベラに対してそう返しながら、鎌のような形状の剣――ハルパーと呼ばれるものに近いが、その刃は極端に湾曲しているわけではなく、どちらかというと刃が内側にだけ付いている曲刀といった感じのもの――を両手に持つと、順手持ちの右手をやや斜め前へと出し、逆手持ちの左手を脇腹に近づけるようにして構える。

 

「そういうわけですので、皆様はそこでしばしの間、ご観戦いただければ……と」

 ヨナはそんな事を言うと、「はっ!」という掛け声と共に急加速。

 巨人型ドールガジェットとの間合いを一気に詰めていく。

 

 それに気づいた巨人型ドールガジェットは迎撃の構えを取った。

 

 更に間合いを詰めて行くヨナと、それを待ち構える巨人型ドールガジェット。

 そして、ヨナが巨人型ドールガジェットの間近に迫った所で、巨人型ドールガジェットが迎撃に動く。

 

 そこで巨人型ドールガジェットの取った行動は蹴り。

 どうやらヨナひとりであれば、これで十分だと判断したようだ。

 

 しかしヨナは、

「随分とぬるい思考……というか、舐めてくれますね」

 なんて言いながら、その繰り出してきた蹴りを横に素早く回避。

 逆にその足に向かって剣を振るう。

 

「え? あんな所で振っても届かないような?」

 セシリアがそう呟いた通り、ヨナの振るった剣は、巨人型ドールガジェットにまったく届いていなかった。傍から見たら素振りと同じである。

 それに対して、

「あれで問題ないんですのよ」

 と、イザベラが口にした次の瞬間、光の刃が――しかも、剣身の数倍もあるような幅広のものが剣から扇状に発生し、巨人型ドールガジェットを斬り裂く。

 

「なるほど、光の刃を発生させる仕組みの剣でしたか」

「それはわかったけど、その光の刃が大きすぎ! あれだともう光の刃っていうよりも、光の扇とか光の翼とか言うのが妥当な気がするよっ!」

 納得の表情で呟いたリリティナに続くようにして、そんな事を驚きながら言うセシリア。

 そして、

「外側に刃がついていないのって、もしかして単なる『引っ掛け』?」

 という疑問を続けて口にした。

 

「いえ、人間相手ならあっちの刃で引き裂く感じですわね」

「あー……。そういう……」

 セシリアはイザベラの説明にちょっとだけ顔をしかめつつも納得し、そんな風に返す。

 

 そんな話をしている間にも、ヨナは素早く動きながら立て続けに左右の剣を振るっていく。

 そして、それによって生じる光の刃は、明らかに巨人型ドールガジェットの足や腕を完全に『真っ二つに』している程の大きさだったが、どういうわけかまったく『真っ二つに』なっていない。

 それはまるで、足や腕を避けるように扇状の光が広がっているかのようであった。

 

「でも……普通でしたら、あの光の刃で『切断』しているはずなのですけれど……どうやら、あの手の攻撃に対して威力を弱める仕組み――術式が、あの『装甲』には組み込まれているようですわね」

「なるほどですです。どこからどう見ても切断しているように見えるのに、切断出来ていないのはそういう事でしたですか」

 巨人型ドールガジェットを見ながら呟いたイザベラに対し、合点がいったらしいカチュアがそんな風に言う。


「なんというか、私が前に来た時に戦った相手よりも魔法的な攻撃に対する頑丈さが高い気がするのです」

「さっき、魔法で瞬殺したから、魔法への耐性を上げてきた……とかなのかしらね?」

 メルメメルアの呟きに、ルーナがそう推測を口にする。

 

「以前はそのような事はなかったですが……もしかして、『処理が追いついている』状態だからだったりするですかね?」

「そうね。その可能性は十分あるわね」

 メルメメルアに対し、顎に手を当てながらそんな風に答えた所で、

「とはいえ、完全に防げているわけではなく、ダメージはしっかり累積しているみたいだな」

 と、ラディウス。

 

 ラディウスがそう言ったように、たしかに光の刃は『明らかに斬り裂いているのに斬り裂けていない』という奇妙な状態ではあったが、その代わり、刃によって斬られた……いや、『包まれた』部分は、ヒビが入っていた。

 更にその下――床を良く見てみると、甲冑の破片が散らばっていた。

 

「なるほどですわ。先程から同じような所ばかり斬りつけていたのは、『そういう事』ですのね」

 何かを理解したイザベラがそんな風に言うと、

「ま、たしかにこういう時はこうするのが一番だしな」

 と、腕を組みながら返すラディウス。

 そしてそのまま、

「どうやら、このまま問題なく倒せそうだな」

 と言ってヨナの方を見る。

 

「当然ですわ。この程度、ヨナの相手ではありませんもの」

 などと、イザベラが少しドヤ顔になりながら口にした直後、

「どうしてイザベラ様が、そんなドヤった顔をしているんですか……」

 なんて返事をするヨナ。

 

 そしてそれと同時に、ガシャァン! というけたたましい音を響かせながら、巨人型ドールガジェットが『自壊』した。

 

「累積したダメージが一斉に限界を突破した……といった所でしょうか?」

「はいです。どうやらそのようなのです。というか、もしかしてこれを計算して攻撃を繰り出していた……です?」

 リリティナとメルメメルアがそんな風に言うと、

「はい。何度か攻撃を仕掛けて強度は把握出来ましたので、どうせなら派手かつ一気に倒そうと思いまして、このような『崩壊』を狙ってみたのですが、思ったよりも上手くいってくれました」

 なんて事をサラッと、そして少し満足気な表情で告げてくるヨナ。

 

 そんなヨナの言葉に、さすがは自らイザベラの『副官』だの『懐刀』だのと口にしているだけの事はあるな……と思うラディウスだった。

この辺り、プロットを調整している時にもう少し短縮するかどうか(ヨナ以外で秒殺するかどうか)迷ったのですが、ヨナの単独戦闘描写がなくなってしまうので、ベースはそのままで1話でケリがつく形にしました(結果、どうにかギリギリ1話で収まりました……)


とまあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、11月24日(日)の想定です!

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