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第21話 遺跡攻略。浮上する島々。

 ――2日後の夜。

 

「うん? 薄っすらと霧が出てやがんな」

「この辺りで夜に霧が出るなんて珍しいわねぇ」

「霧が濃くなる前に街に戻った方がいいかもしれませんね。少し急ぎましょうか」

「ん、了解」

 

 ガーディマ遺跡から出てきた4人組の冒険者がそんな風に言いながら、足早に街へ向かって移動し始める。

 そして、その様子を遠くからガジェットを使って監視していたラディウスが、

「今ので中にいるのは最後か?」

 と、呟くように言った。

 

「そうだね。他の街へ行く依頼を増やしておいた効果が出てるみたいだね」

 ラディウスに対してそう答えるセシリア。

 イザベラがそこに続いて、

「なるほど、そんな事までしていたんですのね」

 なんて事を言うと、今度はリリティナがそれに答える。

「少しでもこの街の冒険者の数を減らしておけば、こうやって誰もいない時間帯が出来やすいですし、入れない状態になった時も騒ぎが最小限で済みますので」

 

「たしかにここの所、依頼で他の街へ行く前に寄ったっていうお客さんが多かったけど……そういう事だったのね。腑に落ちたわ」

 ルーナがそう口にした所で、

「でも、どうやって依頼を増やしたのですか? です」

 という、もっともな疑問を投げかけるカチュア。

 するとそれに対して、

「セヴェンカームでの『新たな剣の聖女が誕生した』事を利用して、セヴェンカームへの荷運びをギルドに流したんだよ」

「それと……カレンフォート市のマークス様という商人の方と繋がりがあるという話でしたので、そちらとも少し交渉して依頼を用意いたしました」

「あとは、この辺りですと、少し離れた所にある山でしか採取出来ないらしい『素材』の採取依頼とかですね」

 なんて返事をする、セシリア、リリティナ、ヨナの3人。

 

「なるほど、たしかに怪しまれる事なく遠くへ行く依頼を増やせますわね」

「はいです。納得しましたです」

 イザベラとカチュアが納得顔でそんな風に言うと、

「特にセヴェンカームの一件は、結構な人数を一時的にこの街から離す為の、良い呼び水となってくれましたね」

「まあ、新しい剣の聖女が見られる上に、それなりに良い報酬が得られるしね。結構飛びついてくれたよ」

「そうですね。マークス様からの依頼という形でも、セヴェンカーム行きを用意する事が出来ましたし、ちょうど良いタイミングでした」

 と話す3人。

 

「ある意味、これもクレリテたちのお陰と言えるかもな」

「それを言ったら、聖剣をでっち上げたラディのお陰でもあるけどね」

 ラディウスに対してそんな風にセシリアが返すと、

「でっち上げたのは俺ではないが……」

 と呟くラディウス。

 しかしすぐに、

「いや、似たようなものか。そして、今からもうひとつ『大事』をでっち上げるわけだが」

 などと言って、肩をすくめてみせた。

 

「私もこれまで色々と『でっち上げ』てきましたけれど、ここまで盛大に魔法を使った『大掛かりなでっち上げ』は、初めてですわね」

「たしかに私も経験ないのです。上手くいくのか、ちょっと不安になってきたのです」

 イザベラに続くようにしてそんな風に言いながら、胸に手を当てるメルメメルア。

 

「なに、事前に行った実験でちゃんと上手くいく事は実証済みなんだ。問題ないさ」

 ラディウスはそう返しながら、周囲を見回す。

 先程よりも霧が濃くなっており、既に遺跡の目視もほとんど出来なくなっていた。

 

「――と、そうこうしている内に、随分と霧が濃くなってきたな」

「ヘイジーミストの魔法から、思考を混濁させる性質を無くす代わりに超広域化する……。一見すると簡単なようですが、実際にはとんでもない改造ですよね……」

「まあ、元がヘイジーミストなので、霧を濃くするのに時間がかかるという点はどうにもなりませんでしたけれどね」

 ラディウスに続くようにして、ヨナとイザベラがそんな風に言う。

 

「その代わり、自然に発生する霧とほぼ同じだから、『隠蔽魔法を看破する魔法』でも破られないという利点があるわけだし、少し待つくらいなら別にいいんじゃないかしらね」

「ああ。元々は黒い霧を生み出す隠蔽魔法を『色を白くして』使うつもりだったが、あれは看破される可能性があるからな。こっちの方が『誰かがこちらを監視していたとしても』バレにくいというものだ」

 ラディウスはルーナに対して頷きつつそう返した後、

「ともあれ、これだけ濃くなっていればもう良いだろう。遺跡へ移動するぞ」

 と告げ、浮遊島へと静かに駆ける。

 

 他の皆もそれに続くようにして、静かに移動を開始した。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 遺跡の入口までひとりでやってきたラディウスが、ガジェットをストレージから取り出し、それを設置していると、

「私以外は、全員途中の指定した場所で待機しているわ」

 と告げながら、ルーナがやってくる。

 

 ラディウスとルーナ以外は、しっかり浮遊島が『上昇』したかどうかを確認する為に、各浮遊島に散っていた。

 これで全員が、『上昇』を確認した上でここへ辿り着ければ、『問題なし』というわけだ。

 

 ラディウスはルーナに対して頷いてみせながら、

「ああ、わかった。なら、早速魔法を発動するとしよう」

 と返事をし、設置したガジェットを一気に起動。魔法を発動させた。

 

 するとその直後、一斉に幾つもの魔法陣が頭上に展開し、ガーディマ遺跡の周囲に広がる浮遊島群が『上昇』し始める。

 

 そして程なくして、

「浮遊島と階段が浮かび上がりましたです!」

 一番遺跡に近い浮遊島で待機していたカチュアが、そう言いながらやってくる。

 

 更にそれから少し待つと、

「まだ大跳躍すれば届くかなぁ?」

「それ程の大跳躍が出来る人は、あまりいないと思うのです……」

「そもそも、大跳躍とは一体……」

 などという話しつつ、ラディウスたちの方へと歩いてくるセシリア、メルメメルア、リリティナの3人。

 

 そこからまた更に少し待った所で、残りのふたり――イザベラとヨナも、

「かなりの高さまで『上昇』しましたね。あ、念の為に魔物は片付けておきました」

「ええ。あと、浮遊島を繋ぐ階段が壊れたりしないかどうかが少し心配でしたけれど、そちらも特に問題ありませんでしたわ」

 という報告と共にその姿を見せた。

 

「どうやら問題なさそうね」

「そうだな。とりあえずこれで俺たち以外が遺跡に侵入する事はなくなったと言っていいだろう」

 ラディウスはルーナに対してそう返しつつ遺跡の方へと向き直り、

「あとは、この遺跡をなるべく速やかに突破するだけだ。出来れば混乱は最小に抑えたいし……な」

 と、そんな風に言った。

思ったよりも長くなってしまったものの、どうにか遺跡の中へ突入する所までいけました……


次回はプロット調整の為に1回更新を飛ばします!(この先の展開を少し早くなるようにします)

というわけで、申し訳ありませんが次回の更新は、ぴったり1週間後となる11月17日(日)です!


※追記

脱字と衍字を修正しました。

また、一部のセリフで前後の繋がりが不自然だったので調整しました。

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