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第15話 遺跡攻略。街に戻りて。

「やっと戻ってこられたっすね……」

 街の入口が見えてきた所で、そんな風に言うルティカ。

 それに対してラディウスが、

「思った以上に距離があったからなぁ……」

 と、そう返した所で、

「なるほど……。道すがらお聞きした通り、たしかに帝国の辺境にあるレヴァルタよりも発展していない感じですね」

 と、街を眺めながら言うヨナ。

 

「そうですわね。レヴァルタも鉄道ひとつ通っていないド田舎の辺境ですけれど、こちらの世界はそもそもが向こうの世界の『中世末期』と同レベルなんですのよね」

 イザベラは頬に手を当てながらため息混じりにそんな事を言った後、

「……って、誰がド田舎ですのよ!」

 なんていう突っ込みめいた言葉を口にした。

 

「イザベラ様って、時々自分で言った事に自分で突っ込みますよね……。私は帝国の辺境としか言っていませんよ……?」

「時々……なんですか? 私は今まで一度も聞いた事がありませんが……」

 呆れ顔で返すヨナに対し、小首を傾げながら言うリリティナ。

 口にしなくても別に良かった事だが、どうしても気になってしまったらしい。

 

「え? 本当ですか?」

「はい。あ、いえ、私が聞いた事ないだけかもしれませんが」

「いや、俺もさすがに自分で自分に突っ込む所は見た事ないな」

 素で驚きの表情をするヨナに対し、リリティナとラディウスがそんな風に答える。

 

 もっともラディウスはそのまま、想像していたイメージと大分違っていたというか、結構なポンコツ気味だったが……なんて事を、心の中で呟いたが。

 

 皆に視線を向けられたイザベラは、「うぐっ……」と呻いてから、

「……み、見知った人間がこちらの世界に来た事で、つい気が抜けてしまったのですわよっ!」

 などと、声を大にして告白した。

 

「いや、そんなに大声で告白しなくても良いと思うっすけど……」

「ま、まあ、その、たったひとりでビブリオ・マギアス――幻軍の将にまでなったわけですし、それなりにずっと気を張っていたというのは、良くわかります」

 頬を掻きながら突っ込むルティカに続くようにして、リリティナがそんなフォローめいた言葉を口にする。

 

「なるほど……。あれは気を抜いているが故のものだったわけですか。それは良い事を知りました」

 ヨナがそう微笑みながら口にすると、若干憤慨しながら、

「って、なんなんですのよ! その顔っ!」

 と、そんな風に返すイザベラ。

 

「いえ、長い間おひとりで良くやって来たものだと感心しているのです。さすがはイザベラ様ですね」

 などと言いつつ、イザベラの頭を撫でるヨナ。

 

「どうしてそこで頭を撫でるんですのよ!?」

「お嫌でしたか?」

 小首を傾げるヨナに対し、顔を赤らめながら、

「い、嫌ではありませんけれど……っ!」

 なんて返すイザベラ。

 それを見ながら、ラディウス、ルティカ、リリティナの3人は思う。

 

 ――嫌ではないのか……

 ――あ、何気に好きなんすね……

 ――少し羨ましいですね。

 

 と。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 その後も、あれこれと微笑ましいものを見せられつつ、店へと戻ってきた所で、

「あ、おかえりなさい。一応ギルド――というか、エレナさんとレインズさんには話をしてみたけれど、さすがに遺跡を封鎖するのは難しいそうよ」

 と、そんな風に告げてくるルーナ。

 

「あ、もう話をしてきてたのか。さすがに動きが早いな」

 そうラディウスが返すと、

「私たちもあの場で話を聞いていたからね。ちなみに街にいる『諜報部とのつなぎ役』の人間にも話をしてみたけど、何かが起きない限りは難しいだろう、だってさ」

 と、今度はセシリアがそう言ってきた。

 

「そんな人、この街にいたのね……。初めて知ったわ……」

「俺も初めて知ったが……。でもまあ、そういう人間がいなければ情報の伝達は出来ないか」

 ルーナとラディウスがそんな風に言うと、

「あ、うん。最近来たばっかりだからね。前にもいたんだけど、いつの間にか失踪しちゃってさ」

 なんて返しながら、イザベラの方へと視線を向けるセシリア。

 

「私は知りませんわよ?」

 視線に気づいたイザベラがそんな風に返しつつも、顎に手を当ててしばし思考を巡らせた後、

「……あ、もしかしてこの人物だったりしますの?」

 なんて言いながら丸められた紙をストレージから取り出し、それを開く。

 

 するとそこには、シスターと思しき女性の似顔絵が描かれていた。

 

「ん? このシスターは……ああ、セシリアが行方不明だと教えてくれてた人か。あの時、水をくれたから印象に残ってるな」

「へぇ、そんな所で面識があったんだ。そう、そのシスターが『つなぎ役』だった人だよ」

 ラディウスとセシリアがそう口にすると、

「……だとしたら、この女は三重スパイだったようですわね? この女は、ビブリオ・マギアスの人間――もっと言うのなら、幻軍の先遣隊のひとりだったのですけれど、セヴェンカームのスパイである事が判明したので、始末したんですもの」

 なんて事を告げてくるイザベラ。

 

「え? セヴェンカームの……スパイ? 三重?」

 セシリアがイザベラの想定外の発言に対して目を丸くしながらそう呟くように言うと、ルーナがそれに続くようにして、

「なんだか妙な所で妙な繋がりが出てきたわね……」

 と、肩をすくめながら口にする。

 

 それを聞きながらラディウスは、まったくもってそうだな……と、そんな事を思うのだった。

今回は本来想定している1話の長さなのですが、普段大幅に超過しすぎているせいで短く感じますね……


ま、まあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、10月24日(木)の想定です!

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