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第14話 遺跡攻略。変化と暴走。

「――さて、インストールすると自動的に発動する都合で、ひとつ質問しただけでこっちに戻ってきてしまったからな。もう一度向こうへ行って、もう少しデュオロードから情報を引き出すとするか」

 ラディウスがそう告げると、

「ヨナ、こちらへ飛んでくる直前の状態に戻りますわ。驚いたり慌てたりしないようにお願いしますわね。あ、あといきなり視界が――見えているものが変わるのにも注意ですわ」

 なんて言いながらヨナの方へと顔を向けるイザベラ。

 

「わかりました。何事もなかったかのようにしておきます」

 そうヨナが答えたのを確認したラディウスは、

「それじゃ、早速向こう側へ移動するぞ」

 と言って、再び向こう側へと移動する。

 

 ――なるほど、本当に一瞬で見えている物が変化しますね……

 

 ヨナはそんな風に思いつつも、何事もなかったかのように視線をデュオロードへと向ける。

 

 と、そこでデュオロードが、

「あの辺りは、地面が空中に浮いている状態になっているのであったか?」

 などという問いの言葉を口にした。

 

「そうだな。浮き森の沼なんて言われている通り、地面の一部が空中に浮いて浮遊島群を形成している感じだ」

 ラディウスが頷きながらそう答えると、

「ふむ……。周囲の地面を浮遊させているのは時空間を制御している機構になんらかの異常が生じている――要するに術式が暴走状態になっているのであろう。そして、それゆえに内部の空間も不安定になっていると思われる」

 なんて事を言ってくるデュオロード。

 

「あの辺り一帯を浮遊させてしまっている術式の暴走が、内部構造の変化にも異常を与えている……というわけか?」

「そういう事だな。もっとも原因はそれだけではないだろうが」

「というと?」

「そもそも、あそこは力量に応じて内部が変化する仕組みがそもそもあるのだが、多くの冒険者たちの集団が同時に足を踏み入れ続けた事で、処理に遅延が発生し、本来のタイミングとは異なるタイミングで処理が実行されているのだと考えられる」

 デュオロードのその言葉に、ラディウスは地球でのインターネットを思い出す。

 

 ――要するに……アクセスが集中しすぎた為に、サーバーが処理しきれなくなってしまったようなものって事だな。

 昔、ネトゲでプレイヤーが集まりすぎた結果、ログインする時やコンテンツのインスタンスにアクセスする時に、リトライを繰り返さないといけなくなったり、長時間待たないといけなくなったりした事があったが、それに似ているな。

 

 そんな事を考えながら、

「なるほど……。しかもそれがいくつも重なった結果、最早予測不可能なタイミングで構造変化が生じ続けるようになってしまったというわけか」

 と口にすると、それに対してデュオロードが頷いてみせる。

「うむ。ゆえに解消する方法はひとつ。溜まっている処理を全て終わらせてしまう事しかない」

 

「溜まっている処理を全て終わらせる……か。結構面倒だな、それは。だがまあ、今のガーディマ遺跡が本来の状態ではなくなっている事は理解した。それを踏まえた上で攻略方法を考えてみるか……」

 ラディウスはそんな事を呟くように言うと、再び世界を移動。

 大空洞に戻ってくるなり、

「思った以上に有用な情報が聞き出せましたけれど、なかなか難しいですわね」

 と、ため息混じりの言葉を紡ぐイザベラ。

 

「イザベラさんが随分と深いため息をついているっすけど、一体どういう情報が得られたんすか?」

「ああ、実は――」

 ラディウスは問いかけてきたルティカに、デュオロードから聞いた話を少し噛み砕いて説明する。

 そして、その説明を聞いたルティカは、

「なるほどっす。それはたしかに厄介な話っすね……。やるとしたら、冒険者ギルドに話をして、あの遺跡をしばらく封鎖するぐらいしか手がない気がするっすよ」

 と、腕を組みながら口にした。

 

「たしかにそうだな。だが、その方法は冒険者の収入源のひとつを潰すようなものだ。簡単には受け入れて貰えないだろう」

「そうですね……。もし封鎖出来たとしても、処理異常というのが解消されるまでに、どれだけ時間がかかるのかわかりませんし、忍び込む人が現れそうな気がします」

 リリティナがラディウスの言葉に頷きつつ、そんな風に言う。

 

「あの場所の性質を考えると、入口を封鎖しておけば、そうそう忍び込まれはしないと思いますけれど、まあ……確実に不満は出ますわね。あまりに封鎖が長引けば、強引に入ろうとする者との間で争いになるかもしれませんわ」

 イザベラがそう言って肩をすくめてみせると、それに頷きながら答えるラディウス。

「ああ。だからまあ……封鎖という方法以外で入れないようどうにかするか、諦めて今の状態のまま攻略するか、そのどちらかしないだろうな」

 

「とはいえ、封鎖以外の方法となると、あの遺跡に張り巡らされている『処理』の術式を改善するくらいしかありませんけれど、それをしようとすると最深部まで行かないと駄目ですわよねぇ……。絶対」

「そっすね。その術式のコアとなるであろうものが、そんな浅い所にあるとは思えないっす。というより、もし浅い所にあるのなら、もうとっくに見つかってるはずっす」

 今度はルティカが肩をすくめてみせながら、イザベラに対してそんな風に返事をする。

 それに対してイザベラは、

「ですわよねぇ……。いくら構造が変化するといえど、それがある場所は、さすがに変化の対象外でしょうし」

 と、再びため息混じりの言葉を紡いだ。

 

「……ま、ここで俺たちだけで考えていても、何か良い案が出るとも思えないし、一度街へ戻って他の面々も交えて相談するとしようか」

「そっすね。……って、ここから戻るのも結構大変っすね……」

 ラディウスの言葉に頷きつつも、来た時の事を思い出しウンザリとした表情で肩を落とすルティカ。

 

「ここは皇帝宮殿――水鏡の楼閣がある場所なのですよね? こちらの世界にはここまで通じている通路などはないのですか?」

「まったくありませんわ。完全に手つかずの自然洞窟ですのよ、こっちでは」

 こちらの世界についての知識がないヨナの問いかけに、イザベラはそんな風に返しつつ、やれやれだと言わんばかりの仕草と共に、首を横に振ってみせた。

 

「たしかに面倒だが……こればっかりは仕方がないな」

「ヨナに道すがら、こちらの世界について詳しく説明する事が出来る利点がある……と、そんな風に思うしかありませんわねぇ……」

 ラディウスに続くようにして、頬に手を当てながらそう口にするイザベラ。

 

 ――そうしてラディウスたちは、ヨナにあれこれ話をしつつ来た道を引き返すのだった。

デュオロードの話が終わり、ようやく遺跡の攻略に向かって進展しました。……僅かにですが。


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、10月20日(日)の想定です!

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