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第12話 遺跡攻略。空洞と水鏡の楼閣。

「無事、底まで下りてきましたけれど……ここ、かなり深いですわね……」

「そうですね。先程までいた場所がまったく見えません……」

 イザベラとリリティナがそう言いながら上を見る。

 たしかにふたりの言う通り、降下してくる前の場所は既に闇に包まれて見えなかった。

 

「ロープ、ありったけ繋ぎ直してギリギリだったっすからね……」

 と言いながら、ロープを手にするルティカ。

 ラディウスは「たしかにな」と返すと、そのまま左右を交互に見る。

 そして、

「で、横穴がふたつ……か」

 と言った。

 

「どっちへ行くのが正解なんすかね?」

「こっちの横穴は、少し進んだ先であの断崖の方へ曲がっていませんか?」

 首を傾げるルティカに続くようにして、横穴のひとつを覗きながらそう告げるリリティナ。

 

「たしかにそうだな。風の流れからしても、あそこに出そうだ」

「という事は行き止まりですの?」

「その可能性が高いが、まあ……崖沿いに道になる場所があるかもしれんし、まずはこっちを調べてみるか」

 ラディウスはイザベラに対してそんな風に返しつつ、横穴へと入っていく。

 

 すると、程なくして予想通り断崖へと出た。

 

「行き止まりですわね。というか、これだけ下りてきたのに、まだ底が見えないですわね……。一体どれだけ深いんですの……ここ」

「たしかにな。あの死の大地の中心にあった穴ほどはさすがに深くないだろうが……」

 イザベラにそう返しつつ、小石を投げ入れてみるラディウス。

 しかし、いつまで経っても何の音も聞こえてこなかった。

 

「……途轍もなく深い事だけはわかりましたわね」

 そう言ってやれやれと首を横に振るイザベラに続くようにして、

「そうっすね……。これを下りるのは骨が折れそうっす」

「いや、下りるだけなら出来なくもないが、戻ってこられなくなりそうだ」

 なんて事を言うルティカとラディウス。

 

「――たしか、帝国の記録だと5000フォーネ(5000メートル)までは調べられていたはずです。もっとも、それでもまだ底に辿り着かなかったそうですが」

「5000って……。しかもそれでもまだあるのか……」

 リリティナの言葉に、ラディウスは驚きと呆れの入り混じったなんとも言い難い表情でそう返す。

 

「なんでこんなものが存在しているのかとか、色々と気にはなりますけれど、ここを下りる必要は今の所ありませんわね。というか、この先もあって欲しくはないですわね」

「そうだな。引き返してもうひとつの横穴を進んでみるとしよう」

 イザベラに同意しつつラディウスがそう告げると、ルティカとリリティナがそれに頷いてみせる。

 

 そして4人は来た道を引き返し、もうひとつの横穴へと移動。

 すると、そちらは少し進んだ所から、上へ向かって低い段差が続いていた。

 

「普通に登れないほどの段差ではないっすけど、あれだけ下りてきたのにまた登るっていうのは、なんだかこう……遠回りをさせられている気分になるっすね……」

「遠回りという表現はともかく、言いたい事はわかりますわ……」

 ルティカとイザベラがそんな事を言いながら段差を登っていく。

 

「ですが、この感じ……なんとなく見覚えがあるような……」

 リリティナがそう口にした所で、開けた場所に出た。

 

「それなりに広いですけれど、水鏡の楼閣――あの屋敷がある所ほどではありませんわね」

「ここは……広さ的に、水鏡の楼閣にある倉庫と同じくらいのような……」

 やれやれと首を横に振るイザベラに続き、顎に手を当てながらそんな事を呟くリリティナ。

 

「という事は、水鏡の楼閣はあの横穴の先にある……のか?」

 ラディウスはそう言いながら、少し離れた場所に見える横穴へと顔を向ける。

 

「マジっすか!? 行ってみるっす!」

 と言うやいなや駆け出すルティカ。

 他の3人はそのルティカを追いつつも、走らずに歩いて行く。

 すると、横穴の入口に差し掛かった所で、

「ものすっごい広さの空洞があるっすーっ!」

 というルティカの声が横穴の先から響いてきた。

 

「どうやら辿り着いたみたいですわね」

「そうだな。思ったよりも湖からの距離があったが、たしかにこれなら水を引く事も出来るか」

「そうですね。所々穴を掘ったりする必要はありそうですが。そのくらいであれば、あの当時の技術力でも十分可能だったはずです」


 3人はそんな風に言いながら横穴を進み、ルティカの所へと向かう。

 そして程なくして、件の空洞へと辿り着いた。

 

 ラディウスは死の大地でも使ったドローンをベースに作り出したガジェットをストレージから取り出すと、それを使って空洞全体を確認し、そして告げる。

「ここで間違いなさそうだな」

 

「なら、あとは向こうの世界へ行って、ヨナにガジェットを渡すだけですわね」

「そうですね。私とラディウス様がデュオロード卿に対して問いかけている間に、手渡す感じですよね? どんな問いを投げかければ良いのですか?」

 イザベラに頷きつつ、ラディウスの方を向き問いかけるリリティナ。

 そのリリティナに対して、

「ああ。ガーディマ遺跡の『構造変化』についてちょっとな。構造変化のタイミングや変化の仕方に法則があるのなら、それを聞いておけば対処が容易になるし」

 と、そう説明するラディウス。

 

「なるほどっす。たしかにその情報の有無は大きいっすね。いきなり変化して『分断』されると厄介っすから」

「そうですね。素直に教えていただけるかどうかは微妙な所ですが、聞いてみるのはありだと思います」

 ルティカとリリティナがそんな風に言い、

「でも、案外あっさりと説明してくる可能性もないとは言えませんわよ? なにしろ、結構色々な情報をさらっと話してきましたもの、あの男」

 と、イザベラが続く。

 

「言われてみると、たしかに……」

「ま、さらっと話して欲しい所ではあるな」

 納得の言葉を口にするリリティナと肩をすくめながらそれに続くラディウス。

 

「なんにせよ、私は隙を見てヨナにこれを渡すだけですわ。ちなみに……渡しさえすれば、あとは自動でインストールされて、転移が発動する……はずですわよね? 何気に他人に渡すのって初めてなんですのよ、私」

 イザベラのその言葉にラディウスは、

「ああ、そうなるのか。手にした瞬間、起動するから大丈夫だ」

 と納得の表情で返事をする。

 

「わかりましたわ。上手くやってみますわね」

 イザベラのその言葉に、ラディウスは「任せた」と短く返した後、

「さて、それじゃ早速向こうへ行くとするか。たしか、最後の会話は――」

 と口にして、こちらへ飛んでくる直前にしていた会話の内容を思い出しながら、向こうの世界へと飛んだ。

思ったよりも会話が長くなってしまったので、一旦ここで区切りました……


とまあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、10月13日(日)の想定です!


※追記

サブタイトルに不要な句点が入っていたので修正しました。

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