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第8話 遺跡攻略。湖と地下空間。

「まず、皇帝宮殿のある場所だが……こっちの世界だと普通に森の中だな」

 ラディウスが地図を見比べながら宮殿の位置を確認し、そんな風に言う。

 するとそれに対してイザベラが頷きながら、

「そうですわね。でも、あの地下の空間……宮殿のある場所からは大分ズレていましたわよ。おおよそこっちの方向へ」

 と言って、宮殿のある場所に人差し指を置き、そのまま地図の上をツツッと滑らせていく。

 

「たしかにかなり歩いたな」

「はいです。思ったよりも宮殿内に入ってから歩いたのです」

 ラディウスの言葉に頷き、同意の言葉を口にするメルメメルア。

 そして、それにセシリアが続く。

「そもそもあそこって、地下にある空洞の一部を利用していたはずじゃ?」


「はい。遺跡の発掘を行っていく過程で広大な地下空間――大空洞を発見した際に、当時の皇帝……つまり、ご先祖様がそこを上手く使えないかと色々考えた結果、あのような形になりました。詳しくは知らないのですが、なんでも上手く湖の水を引き込む事が出来たのが決め手だったそうです」

 というリリティナの説明に対し、セシリアが「なるほど……」と納得し、そこに更にイザベラが続く。

「たしかに地下にある上に湖も近い位置にありますし、水をあそこまで引くのは割と容易そうですわね」

 

「となると……この辺りに、こっちの世界にも大空洞がある……のか?」

 と、腕を組みながら思考を巡らせ、地図の一点――湖の東岸、レマノー村のやや北辺りを指差しながらもっともな疑問を口にするラディウス。

 

「うーん……。そうねぇ、たしかにそういう事になるとは思うけど……そんなものがあるなんて話、聞いた事がないわ……」

「はいです。先程も言った通り、レマノー村に住んでいる私も聞いた事がありませんです。ただ、レマノー村は湖畔か村の中が主な仕事の場で、湖や森に立ち入る人自体が少ないので、湖や森に頻繁に立ち入る人ならばなにか把握しているかもしれないのです」

 ルーナとカチュアが顎に手を当てて記憶を探りながらそう返す。

 しかしそこでルーナがカチュアの一言からふと思いつく。

「……湖や森に頻繁に入る人……。あっ、漁師や猟師、あるいは冒険者ギルドなら何か把握してるかも? もしくはうちのお父さんとか」

 という事に。

 

「たしかにその辺りの人間なら何か知っている可能性はあるな」

 ラディウスが納得して同意すると、それに続くようにして、

「それで言うと、聖堂の書庫にも何か情報があるかもしれないね」

「あるいは、この街に昔からいる人に聞いてみるのもいいかもしれませんわね」

 セシリアとイザベラがそれぞれそんな風に言う。

 

「まあ、手分けして調べてみるか。俺はこの街に昔からいる人――シェラさんの所に、久しぶりに顔を出してみようと思う」

「たしかにあの人ならずっとこの街に住んでるわね。あ、私はお父さんに聞きに行ってくるわ。あとついでにシェラさんとは別の昔から住んでる人にも」

 ラディウスに続いてルーナがそう口にする。

 

「私はギルドへ行ってみるのです」

「でしたら、私も同行しますね。先日、色々あってギルドに登録しましたし」

 そんな風に言ったのはメルメメルアとリリティナ。

 

「であれば、残りは聖堂の書庫ですわね」

「はいです! しっかり探しますです!」

 イザベラに対してカチュアがグッと拳を握ってそう返した所で、

「――イザベラを書庫に入れるのって、すっごい躊躇するけど、まあ仕方ないね」

 なんて事を言って肩をすくめてみせるセシリア。

 

「大丈夫ですわよ。何度も入った事ありますもの」

「それ、全然大丈夫じゃないんだけどっ!? むしろ、とんでもない事をしれっと暴露してきたね!?」

 しれっととんでもない事を口にするイザベラに、セシリアが突っ込みを入れる。

 それを見ながらラディウスは、

「さすがは幻軍の将……としか言いようがないな……」

 と呟いた。

 

                    ◆

 

「ここに来るのも久しぶりだな……」

 ラディウスは、シェラの店の前でそんな事を呟きながら中へと入る。

 

 すると、

「おや、久しぶりじゃのぅ。まあ、話はカルティナやマクベイン、それと最近来るようになったルティカとアメリアから聞いておる。どうやら色々あったようじゃな?」

 という声と共にシェラが顔を見せてくる。

 

「そうですね。色々ありました」

「それで、今日は何の用じゃ? 何か必要な素材でもあるのかの?」

「いえ、実は――」

 シェラにそう返しつつ、大空洞について心当たりがないか尋ねるラディウス。

 シェラはそれに対し、しばし考え込んだ後、

「大空洞……かどうかは分からぬが、湖底で採れる良質な泥を仕事に使っておったウチのダンナから、湖底に洞窟があったという話を聞いた事があるのぅ」

 なんて事を少し懐かしそうな表情で言った。

 

「湖底に洞窟……ですか? ちなみに、中がどうなっているかは話していました?」

「うむ。ダンナも洞窟の奥が気になったそうでの、潜っていってみたそうじゃ。すると、少し進んだ所で崖になっていたらしく、空気はあったがその先には進めなかった……と、そんな風に言っておったのぅ」

「なるほど、そのような感じですか……」

 ラディウスはそう口にしつつ、リリティナが『湖の水を引き込む事が出来た』と言っていた事を思い出す。

 

 ――詳しくは知らないと言っていたが……もし、その引き込みに湖底にあるという洞窟を使われていたとしたら……

 

 ラディウスはそこまで思考を巡らせた所で、

「シェラさん、ちょっと欲しい素材があるんですが……」

 と、そんな風にシェラに対して切り出した――

 

                    ◆

 

 ラディウスはシェラの店から戻る途中で冒険者ギルドに寄ってみる。

 メルメメルアとリリティナがまだそこにいるかもしれないと思ったからだ。

 

 そして、ラディウスがギルドに入った所で、

「あ、ラディウスさん。シェラさんから何か良い話が聞けたですか?」

 と、メルメメルアがラディウスに気づいて声をかけた。

 横にはリリティナの姿もある。

 

「ああ、ちょうどそれについて話があってな。実は――」

 ラディウスは頷きながらそう切り出し、シェラから聞いた話をふたりにする。

 

 そして話終えた所で、

「――つまり、湖底にあの地下空間へ繋がる洞窟があるかもしれないというわけですか」

 と、リリティナがそんな風に言った。

 それに対してラディウスは、

「ああ。それで気になったのが、リリティナが言っていた『湖の水を引き込む』という話だ。その洞窟を使っていたかどうかってわかったりするか? あるいは、何かあの場所が関係する『水』についての話と……」

 と、顎に手を当てながらそう問いかける。

 

 問われたリリティナは、「うぅーん……そうですね……」と言いながらしばし考え込んだ後、

「そう言えば……なのですが、大雨が降った際に反転塔の所に一時的に滝が出来て、反転塔の中が水浸しになったという話を、あの場所について教わった時に聞きましたね。なので、それ以降は水の対策もしたそうです」

 と言った。

 

 それを聞いたラディウスは顎に手を当て、思考を巡らせる。

 

 ――滝……?

 それって、上から水が漏れてきたって事だよな……? それも大量に。

 シェラさんは湖底の洞窟は、先が崖になっていると言っていた。

 もし湖が大雨で増水し、その洞窟に対して通常よりも水が多く流れ込んだとしたら、水がその崖を超えて先へと流れていった――反転塔まで到達した……というのは、十分に考えられる話だな。

 ……やはり、湖底の洞窟とやらを調べてみるのが良さそうだ。

 少なくとも、行き止まりという事はなさそうな感じがするし。

 

 と。

あまりにも長くなったので、途中の展開を大幅にカットしました……

その結果、シェラの店での会話がごっそり減ってしまいましたが、大分一気に進んだ気がします。

……それにしても、レマノーという名称を使ったのが、久しぶり過ぎな気が……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、9月29日(日)の想定です!

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