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第7話 遺跡攻略。セヴェンカームの変容。

「例のガジェットを手に入れる方がオマケ……ですか? です。それは一体どういう事なのですか? です」

「簡単に言えば、少し叩いたら怪しいものがいっぱい出てきた感じなのだわ。モクモクボロボロなのだわ」

 カチュアのもっともな疑問に対して、クレリテがそんな風に答える。

 

「つまり、セヴェンカームという国は、今の私の国――帝国のように、『まともな国ではなくなっている可能性がある』という事ですか」

「そういう事なのだわ。どうもあの国は色々ありそうな感じなのだわ。それこそ、ビブリオ・マギアスや魔軍だけに留まらない邪悪な何かが蠢いていてもおかしくないくらいな感じなのだわ。だから、大々的に動く必要が出てきたのだわ」

 リリティナの言葉に対し、再びクレリテがそう返事をする。

 

「邪悪な何か……か」

 ラディウスはそう呟きながらふと気づき、そして思考を巡らせる。

 

 ――そう言えば、今の時代に遡ってくる前の歴史で、この国がおかしくなり始めたのは、セヴェンカームを攻め滅ぼした後だったような気がするぞ……

 ……いや、決定的におかしくなったのは、その後のメルティーナを滅ぼした時からだ。

 もっとも……滅ぼしたと言っても、殲滅する事は出来ず、結構な数の人間が地下に潜った為、その後あちこちで延々と反抗活動をされ続けてきたんだけどな。

 まあ、あの歴史でも当然アルヴィンスたちはいるのだから、そう簡単にやられるわけがないよなぁ。

 ……っと、それはそれとして……

 俺はあの歴史におけるこの国の暴走は、大陸全体の抑止力となっていたメルティーナが滅びた事でストッパーがなくなり、破壊と侵略の歯止めが効かなくなったせいだと思っていたが……

 もしかして、セヴェンカームで何かを見つけたのが発端だった……のか?

 

 と。

 

「ラディ? どうかしたのだわ?」

 考え込むラディウスの姿に疑問を感じたクレリテが問いかけると、ラディウスは、

「ああいや……そこまでの国なのに、今まで異端審問執行官がほとんど立ち入っていないっていうのが不思議に感じてな」

 と、そんな風に返した。

 さすがに別の歴史について語るのは、現時点では避ける事にしたらしい。

 

「それに関しては、私たちも不思議に思ったのだわ」

「はい。なので過去を調べてみたのですが……過去のセヴェンカームからは、これといって怪しい所は出てきませんでした」

 クレリテの言葉を引き継ぐようにして、そう口にするリゼリッタ。

 

「それはつまり、最近になって急に怪しい動きをし始めた……という事ですか?」

「そういう事なのだわ」

 リリティナの問いかけに対し、頷いてみせるクレリテ。

 それに対してリリティナは、

「……まさにそこも帝国と同じですね……。邪悪な何かが蠢いているという言葉に納得です」

 と、そう呟くように返す。

 

「しかも、今までのセヴェンカームからしたら考えられないような動きを堂々としているとなると、その『邪悪な何か』はメルティーナに――教会の異端審問執行官に目をつけられても構わないと思っているって事だし、かなり危険な存在よね」

 腕を組みながらそんな風にルーナが言うと、クレリテがそれに対して首を縦に振って同意する。

「その通りなのだわ。だからこそ私たちも大々的に動く必要があると判断したのだわ」

 

「なるほどな。しかし、セヴェンカームか……。俺としても色々と気になる国だな。というか……だ。その状況であのガジェットをすぐに確保出来るものなのか? 必要によっては、一旦セヴェンカームの方を手伝ってもいいが……」

「大丈夫なのだわ。あのガジェットは、攻略に間に合うように真っ先に入手する感じで動き方を調整しているのだわ。ラディたちの攻略準備が整う頃までには確保するのだわ。だから、こっちの事は気にせずに攻略準備を進めてしまうのだわ」

 ラディウスの発言に対し、クレリテは敢えて自信満々に腕を組みながらそう返す。

 それは、そこまで手伝わせてしまうわけにはいかないと考えたからだった。

 

「そうか。と言っても、準備自体はもうちょっとで整うんだけどな」

「むむむ、それは大変なのだわ。こっちも急ぐのだわ」

 ラディウスの言葉に、クレリテがそんな風に言うと、ラディウスは額に手を当て、

「ああいや、今のは言い方が悪かったな、すまん。まあ……なんだ? あまり無理しなくていいぞ。無理に動いてその後に影響が出たりしたら、その方が俺としては申し訳ない気持ちになるしな」

 と、そんな風に告げた。

 

「わかったのだわ。それならなるべく早め……いわゆる『なる早』でいくのだわ」

「そうですね。『なる早』でいきましょう」

 そう口にするクレリテとリゼリッタに対し、なる早って言葉、久しぶりに聞いたな……。この世界にも存在していたのか……。なんて事を思うラディウスだった。

 

                    ◆

 

 そして、それから10日後――

 

「ラディ、アメリアから例のガジェットを受け取ってきたわよ。クレリテがついさっき手に入れたらしいわ」

 ラディウスの店に入るなりそんな風に告げ、そのまま懐中時計型のガジェットを、カウンターの上に置くルーナ。

 

「思ったよりも早いというか、さすがと言った感じだな」

「ええそうですわね。異端審問執行官は動き出したら速いんですのよねぇ」

 ラディウスに対して同意しつつ、ちょっと悔しそうな表情をするイザベラ。

 そしてそのまま、続きの言葉を紡ぐ。

「……そのスピードの前に何度か煮え湯を飲まされましたし。グギギ」

 

「いや、グギギって……」

 セシリアは、呆れ顔で肩をすくめながらそう言うも、

「でも、そう口にしたくなるくらい、敵に回したくない相手だってのはたしかだよね」

 なんて言葉を続けてイザベラに同意してみせた。

 

「裏の人間同士のあれこれが見えるのです……」

「ま、まあ、裏は裏で色々あるものですからね……」

 メルメメルアの呟きに対し、そんな風に言って頬を人差し指で掻くリリティナ。

 

「それはそれとして……ガジェットが手に入った事だし、早速ヨナとリンクしてしまうか?」

「そうですわね。……ただ、どうやって渡すかですわね……」

 ラディウスに頷きつつ、そんな風に言うイザベラ。

 それに対してカチュアが頷きながら言葉を紡ぐ。

「たしかに、どうやっても一瞬は向こう側へ行かないといけませんですね」

 

「ちょっとデュオロードに聞いてみたい事があるし、準備をする前に聞きたい事があるという体で言ってみるか……」

「なるほどね。ラディが話をしている間に渡すって感じだね」

 納得しつつセシリアがそう言うと、

「だとすると、こちらの世界のあの場所をまずは確認しておかないと駄目ですわね。なにしろ最初の移動先は、ほぼほぼ同じ座標の場所になりますし、どういう場所なのかを確認しておかないと、さすがにちょっと危険ですわ。なにしろ今回は場所が場所ですもの」

 なんて事を言ってくるイザベラ。

 

「まあ、ある程度は人の立てる場所に飛ぶよう調整されるようだが、再移動がし辛い状況なのはたしかだし、今回に限ってはしっかりと確認しておいた方がいいっていうのには同意だな」

 ラディウスがそんな同意の言葉を口にすると、イザベラはこめかみを人差し指をあて、

「……でも、あそこってこちらの世界だとどこになりますの……?」

 と、呟くように言った。

 

「……そう言えばどこなのかしら……」

「思いっきり地下なんだよねぇ、あそこ……」

 そんな風に言いながら考え込むルーナとセシリア。

 

 更にラディウス、メルメメルア、リリティナ、カチュアも、

「うーん……。俺もまったく見当がつかないな。ヴィンスレイドの屋敷の地下に広がる遺跡は、ノースエンドから帝都の中へと繋がっていた遺跡と同じだから、あっちの方へは繋がっていないだろうし……」

「こちらの世界は、まだ把握しきれていないのです」

「ええ、私も残念ながら……」

「私もわかりませんです。あの辺りに住んではいますですが、洞窟のようなものがあるという話は一度も聞いた事がありませんです」

 と続き、結局誰も分からなかった。

 

「……ま、考えてても仕方ないし、とりあえず地図を見比べてみるか」

 ラディウスはそう言って、ふたつの世界の地図をその場に広げるのだった。

今回、かなり長くなりましたが、他に区切れそうな所がなかったもので……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、9月26日(木)の想定です!

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