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第2話 遺跡攻略。来店者たち。

「ところで、お店を開けたのは、何か理由があるのですか? です」

 店内の様子を見ていたカチュアが、ラディウスに対してそんなもっともな疑問を投げかける。

 すると、ラディウスはそれに対し、

「いや、そこまで深い理由があるわけじゃないぞ。しばらくこっち側の世界に居る事になるだろ? で、居るのに閉めっぱなしというわけにはいかないってだけの話だ。そんなにひっきりなしに人が来るような店ではないから、遺跡の攻略準備をする時間がなくなるってわけでもないしな」

 と、そんな風に答えた。

 

「ひっきりなしには来ないかもしれませんですが、それでも結構来ると思いますですよ……?」

 カチュアがそう言った所で、

「む……。なるほど、リリティナという者が話していたが、たしかに開いているな」

 なんていう声が店の入口から聞こえてくる。

 

「あ、カルティナさん。今日からしばらく開いているですよ。というか、リリティナさん本当に宣伝して回っているですね……」

 声の主にもっとも近い所にいたメルメメルアがそんな風に言った直後、

「うむ。私と似た名前ゆえか、私が宣伝して回っているかのように勘違いする者もいてな。もし問われても答えられるよう見に来たのだ」

 と言いながら、カルティナが店内に入ってくる。

 

「あ、なるほど。そう言われてみるとたしかに、『ティナ』の部分は一緒ね……。というか、問われても答えられるようにする為に確認しにくるとか、カルティナも大概に律儀ねぇ……」

「ま、知らぬ仲ではないからな。それに……開いていれば、探索と調査に使えそうな良いガジェットがないか見させてもらおうと思っていたところであったゆえ、どの道来るつもりではあったのだ」

 軽く肩をすくめながら言うルーナに対し、カルティナはそう返しつつ店内を見回す。

 

「見るのは別にいいけど、触りまくって壊したりしないでよ? カルティナ、時々雑貨屋でやらかしてるし」

「……否定は出来ぬが、最近はそこまでやらかしてはいないぞ? というか……だ。それを言うならセシリアも、たまに聖堂や店内でやらかしているであろうに」

 セシリアに対して、やれやれと首を横に振りながらカルティナがそう返すと、

「うぐっ。た、たまにだし! 聖女モードではやらかした事ないし!」

 などという返事をするセシリア。

 

「聖女モードとか自分で言っちゃ駄目な気がするっすよ……」

 ルティカが肩をすくめながらそう口にすると、メルメメルアがそれに続く。

「でもまあ、たしかに『聖女っぽい立ち居振る舞い』をしている時は、凄く外面(そとづら)がいいのは間違いないのです」

 

「……外面(そとづら)っていう言い回しに、微妙な引っかかりを感じるんだけど……」

「気のせいなのです。いたって普通の言い回しなのです」

 セシリアにジトッとした視線を向けられたメルメメルアは、涼しい顔でそんな風に答える。

 

 そのふたりのやりとりを聞いていたカルティナに対し、

「ところでカルティナ、どうして探索と調査に使えそうなガジェットが必要なの? どこかの遺跡にでも探索に行くの?」

 と、アメリアが問いかける。

 問われたカルティナは顎に手を当てながら、

「ああ、探索というか……明日から『ギルド関連』の用事で、バークラードへ行く必要があってな。あの辺りはあまり詳しくない上に、遺跡や洞窟などが多い地域だと聞いているゆえ、念の為に……と思ったのだ」

 なんて答えた。

 

「そのバークラードというのはどこにあるのです?」

 あまりこちらの世界の地理に詳しくないメルメメルアが、ある意味当然とも言える問いを口にした。

 それに対してメルメメルアの左右に立つルーナとセシリアがそれぞれ返事をする。

「セヴェンカーム王国領内にあるわ。周囲の遺跡探索の拠点にもなっていて、冒険者が多く集う都市……という印象が強いわね」

「そうだね。ちなみに王都から一番近い距離にある都市でね、クレリテも明日、『その都市の郊外にある大聖堂』へ行くはずだよ」

 

「うむ、そのようだな」

「あれ? 知ってたの?」

 頷くカルティナにセシリアが問いかけると、カルティナは、

「実は、ちょうどギルドに聖堂の方からバークラード――正確には大聖堂まで、シスター・クレリテを護衛して欲しいという依頼が来ていてな。同じ場所へ向かうのだから都合が良いだろうと受付で告げられて、半ば強引にその護衛依頼を押し付けられたのだ」

 なんて言って肩をすくめてみせた。

 

「なるほどっす。でも、クレリテに護衛がいるとも思えないっすけど……」

 頷きつつも疑問を口にしたルティカに対し、

「まあ、護衛をつけておけば、『異端審問執行官』っぽさは減らせるんじゃない? あくまでも『シスター・クレリテ』って事になってるみたいだし」

 と、そんな推測を返すセシリア。

 

「そうですわね。護衛なしでシスターが単身でいきなりやってきたりしたら、『何かある』と警戒されますけれど、護衛付きのシスターが堂々とやってきたのであれば、戦闘はあまり得意ではないシスターが巡回で来ただけだと思われて、警戒を解く者は多いと思いますわ」

「そうだね。普段の巡回範囲――つまり、この国内なら単独でも『いつもの巡回シスター』程度に思われるかもしれないけど、セヴェンカームは普段の巡回範囲どころか、完全に他国だから、堂々と人数多めに向かった方が、むしろ怪しまれないというものだね」

 セシリアがそんな風に言った所で、

「ええ、その通りです」

 などと、リゼリッタがさも最初からその場にいたかのような、そんな佇まいで言葉を紡いでみせる。

 

「リ、リゼリッタさん!?」

「まだイザベラから話を聞き終えてないっす!」

 アメリアとルティカがそんな驚きの声を発すると、リゼリッタはそれに対して、

「いえ、こちらにはその件とは別の件で伺いました」

 と、そんな風に返した。

 

「別の件……ですの?」

 そう言いながら首を傾げるイザベラに、

「はい。実はラディウス様にお話がありまして……」

 と返しつつ、ラディウスの方を見るリゼリッタ。

 

「うん? 俺に話?」

「はい。正確に言うと、可能なら依頼したい事……ですね。――ラディウス様は『聖剣』というものがどういうものかご存知で、その構造も理解しておりますよね?」

 腕を組みながら問うラディウスに対し、リゼリッタがそんな風に返す。

 ラディウスはそれに、

「それはまあたしかに理解しているが……」

 と、怪訝な表情で答える。

 

「……言いたい事の予想がなんとなくつきましたわ……。もっとも……もし予想通りだとしたら、そんな事をする理由が良くわかりませんけれど……」

 イザベラがそう呟いた直後、

「――聖剣を1本丸ごと作っていただけませんか?」

 なんて事を、リゼリッタがラディウスに告げたのだった――

何やら言い出していますが……?


といった所でまた次回!

次の更新は完全に平時通りに戻りまして、9月8日(日)を予定しています!

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