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第7話 偽帝。エル・ガディアと王都。

「……少し前の時代へと流れ着いた古代人の末裔?」

 セシリアが首を傾げながらそう口にすると、

「この場所を見れば分かると思いますが……皇帝の一族は、ウィンザームに属する都市国家のひとつ『ガルガンザ』の長であった一族です。故に、かつてのガルガンザの遺跡を動かし、古の時代の技術を――今のこの世界においては圧倒的に高度な魔導技術を――復活させ、力とする事が出来たのです」

 と、そんな風に答えるリリティナ。

 

「この国――帝国の名がその都市国家と同じ名なのは、そういう事だったですか……」

 メルメメルアがそんな風に呟くと、

「一般的には、『この地にあった遺跡に記されていた名前から取った』と言われているけど、実際には皇帝の一族そのものが、『ガルガンザ』の人間だった……という事ね」

 と、イザベラが補足するように言った。

 

「聖木の館の地下に広がる遺跡にウィンザームの紋章があったのも納得だな」

「え? あそこの地下にウィンザームの遺跡があったのですか?」

 ラディウスの言葉に対し、驚きの表情で問うリリティナ。

 

「ああ。って、知らなかったのか?」

「はい。あそこは私が無窮の混沌に囚われる前は、至って普通のサナトリウムでしたので……」

 首を傾げるラディウスに、リリティナがそう返すと、

「サナトリウムを拡張する際に、古代の遺跡が発見されたのだ。そして、アルベリヒがそこを調査した事で、あそこは様変わりしていった」

 などと、リリティナに代わるようにしてそんな風に説明するデュオロード。

 

「なるほど……。アルベリヒはあの遺跡からウィンザームの技術を更に得ようとした……いや、既に得たってわけか」

「そういう事だ。……あそこで封魂術によって災厄を逃れようとした者たちの魂が宿ったガジェット――『胚』と奴が呼んでいるもの――が見つかったのが、全ての元凶だと言えなくもないな」

 デュオロードがラディウスの言葉に頷き、肩をすくめながらそう口にする。

 それに対してリリティナが、

「たしかにそうですね……。それが見つからなかったら、聖木の館があのようなおぞましい場所へと変貌する事はなかったでしょうし……」

 と、額に手を当てながら言った。

 

「まさか、マグナ・ヒストリアの実験島が丸々ひとつあそこに落下し、地中に埋まっているとは私も思わなかった」

「あそこも実験島のひとつだったですか……」

「うむ。時流転換の実験の際に浮遊制御機構に異常をきたし、落下してしまった島だ」

 メルメメルアに対して頷きつつ、そんな事を告げるデュオロード。

 

「そもそもの話になるけど、その時流転換というのはどういうものなのかしら?」

「時の流れを分岐させ、その分岐した時へと自在に『転移』するというものだ。これによって、『災厄で滅びなかった世界』という『もしもの世界』へと渡る事で、災厄から逃れようとしたのだ」

 ルーナの問いかけにデュオロードがそう説明する。

 

「その実験は上手くいったのですか?」

「何度か失敗したが、最終的には上手くいった。そして、その結果、我が祖国エル・ガディアの首都とその周辺地域は『もしもの世界』へと転移し、災厄を逃れた。……もっとも、そのままそちらの世界に定着し、こちらに戻ってくる事はなかったがな」

 リゼリッタの問いかけにそんな風に答えるデュオロード。

 

「――随分と色々と話してくださるのですね。いえ、とてもありがたいですが」

 リリティナがそんな風に言うと、デュオロードは再び肩をすくめながら、

「なに、ラディウス以下『その世界の者たち』なら、いずれその事を知るのは間違いないであろうからな。私は少し早く教えただけにすぎん」

 などと告げた。

 

「っ!? 私たちの世界が……エル・ガディアが転移した『もしもの世界』!?」

 セシリアが驚きの表情でそう口にする。

 ラディウスはそれに対し、思いっきり自分から『はいそうです』って言ってるようなもんだな、それは……と心の中でため息をついた後、まあそれならもうその前提で話せばいいか……と考え、

「……なるほど。王都ローダリアや、俺の故郷はその転移したエル・ガディアの可能性が高いと考えると、色々と納得出来るな。貴方が『古代人の末裔』である可能性があると言っていた事も……な」

 なんて事を、顎に手を当てながら呟くように言った。

 

「うむ。先程お前は、『自分の生まれた村には異様に古代の遺物や技術書があった』と言った。だから私は、お前が我が祖国エル・ガディアの民の末裔なのではないか……と、そう考えたのだ」

「言われてみると、王都ローダリアって、少し帝都っぽい雰囲気があったりするよね……。街のあちこちに金属の梁があったりするし」

 デュオロードの話に対してセシリアがそう口にすると、デュオロードは、

「ふむ。金属の梁……か。それは帝都の商業区のようなものではないのか?」

 という問いを投げかけてきた。

 

「商業区……屋根のある道が特徴的な区画なのです。雨でも濡れずに各商店を巡れるのが利点なのです」

 メルメメルアがそんな風に言ってくる。

 

 ――それって地球……というか日本のアーケード商店街と同じもの……か?

 ……言われてみると王都ローダリアの金属の梁はそこに屋根があってもおかしくない感じだな。

 そもそも、『古の蒼き穹窿(きゅうりゅう)広場』は、完全に天蓋付きの空間だし。

 

 なんて事をラディウスが考えていると、

「それって、『古の蒼き穹窿(きゅうりゅう)広場』にそっくりだね。ドーム状の透き通った屋根があって、市場として使われているんだけど」

 と、セシリアが告げた。


 まあセシリアにとっては当然のように見慣れている光景だよなぁ……とラディウスが思った所で、

「ほう、その話は実に興味深いな。まさに私の知っている『光の天蓋(てんがい)』と『(きら)めきの回廊』に酷似している。一度、()の国の王都……ローダリアを訪ねてみたいものだ」

 などと顎に手を当てながら言ってくるデュオロード。

 

「……うん? 訪ねて……みたい?」

 首を傾げたルーナに続くようにして、

「……もしや、デュオロード卿は『向こうの世界』との行き来が可能なのですか?」

 と、リリティナがいきなり核心を突くかのような問いの言葉を投げかける。

 するとデュオロードは、

「その通りだ。そもそも皇女リリティナの拉致を実行したヴィンスレイドに、マグナ・ヒストリアの端末を渡したのは私だからな。とはいえ……私のあちらでの行動範囲はそこまで広くはない。ローダリアについては、地名こそ知ってはいたが、どういう場所なのかについては、今の今まで知らなかったくらいだからな」

 なんて事をサラッと口にした。

 

「なるほど……ですわ。なんとなくですけれど、色々と繋がりが見えてきましたわ……」

 と呟いたイザベラに対し、

「ふむ、そうか。……まあそもそもの話として、イザベラよ、お前とは向こうでも接触しているのだがな」

 などと、腕を組みながら告げるデュオロード。

 

「……っ!?」

 唐突なその言葉にイザベラは驚きを隠せず、半ば反射的に声を大にして、

「ど、どういう事ですの!? 私は貴方の顔を見たのは始めてですわよ!?」

 と、デュオロードへ問いの言葉を投げかけるのだった。

第2話という超序盤から出している伏線を、ようやく回収する事が出来ました……


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、8月15日(木)を想定しています!

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