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第6話 偽帝。マグナ・ヒストリア。

「……それで、私たちにそんな話したその理由はなんなのですか? まさか、私たちに皇帝ベルドフレイムを倒せとでも言うのですか?」

「私は彼の国の復活を阻止したいのだ。無論、皇帝やアルベリヒを排除する事が出来るのであればそれでも構わない。それが一番手っ取り早い方法ではあろうからな」

 リリティナの問いかけに、サラッとそんな事を口にしてくるデュオロード。

 それに対し、

「また随分とぶっちゃけたねぇ……」

 なんて言って肩をすくめてみせるセシリア。

 

「なぜ、古の時代に存在していた国の復活を阻止したいと思っているのです?」

「それは簡単な話だ。皇帝は彼の国を手中に収める――支配する事が出来ると考えているが、それは不可能に近いのだ。彼の国は今の技術力で太刀打ち出来るようなものではない。逆に蹂躙され、大陸全土が奴らの支配下となってしまうであろう」

 メルメメルアの問いかけに、デュオロードがそう答える。

 

「ちなみに、その国の名はなんというのですか?」

 今度はリゼリッタがそう質問すると、デュオロードはそれにも即座に答えた。

「ガーディマだ」

 

「ガーディマ……。最終的にウィンザーム以上の技術力となった国ね」

「ああ。たしかにあの国なら、国ひとつ丸ごと封印するような事も出来そうな気がするな……」

 ラディウスは向こうの世界のガーディマ遺跡の事を思い出しながら、ルーナの言葉に頷いてみせる。

 

 ――なにしろ、遺跡とその周囲の時空を歪ませているくらいだしな……

 

 と、そんな風に心の中で付け加えた所で、イザベラが唐突に、

「……なるほど、やっと分かりましたわ。塔までの侵入経路……。あの情報は、あなたが流したんですのね……」

 なんて事をため息混じりに言って、やれやれと首を横に振ってみせた。

 

「ほう? どうしてそう思ったのだ?」

「簡単ですわ。ああやって情報を流して、その情報をもとに自分の所まで辿り着いた者であれば、皇帝とアルベリヒのやろうとしている事を止められる力もある……と、そう考えたんですのよね? ……まったく、とんだ『試し』ですわ」

 面白そうな笑みを浮かべるデュオロードに対し、イザベラは再びため息混じりにそう答え、そして肩をすくめる。

 

「まあたしかに、あの情報があったからといって、簡単に忍び込めるようなものではありませんからね。普段は警備が厳重な上、セキュリティガジェットも多数ありますし」

「そうですわね。どっちも『ラディウスによって』あっさりと無力化していますけれど」

 イザベラはヨナの発言に頷きつつ、敢えて『ラディウスがやった事』であると強調するように返事をする。

 

「ほう……。セキュリティガジェットをことごとく無効化し、アルベリヒの下僕どもを撹乱したのはお前だったのか」

 などと言って興味深そうにラディウスを見るデュオロード。

 

 そこへ更にリゼリッタとセシリアが、

「まあ、ラディウス様の作ったガジェットによって、セキュリティガジェットは全て無意味と化していましたからね」

「あいつら――アルベリヒの配下を撹乱したり撃破したりするのにも、ラディのガジェットを使っているしね」

 と、まるでラディウスの凄さを語るかのようにそんな事を告げた。

 ……無論、ふたりともわざとそんな言い回しをしているのだが。

 

「どっちも大したものではないけどな」

 なんて事を肩をすくめながら返すラディウス。

 

 ――こんな感じで返しておけばいいか。

 

 などと思いながら。

 

 するとそれに対してデュオロードは、

「ふっ、ははははははっ! お前のその技術力、あのアルベリヒ以上――いや、祖国エル・ガディアの全ての技術者よりも高そうだ!」

 なんて事を笑いながら言ってきた。

 

「祖国エル・ガディア……? デュオロード卿はエル・ガディアの人間なのですか?」

 リリティナがデュオロードの発言に対して問うと、

「その通りだ、皇女リリティナ。私はエル・ガディアにて、ウィンザームと共同で『時流転換機関マグナ・ヒストリア』の研究、および開発を行っていた実験施設の長を務めていた」

 などと返すデュオロード。

 

「マグナ……ヒストリア……? どこかで聞き覚えがあるのです……」

 メルメメルアがそう呟くように言うと、デュロードは腕を組みながら、

「それはそうであろう。お前たち亜人が彼の時代に暮らしていた『箱庭』……。そここそがマグナ・ヒストリアの実験場なのだからな」

 と、そんな風に告げた。

 

「え? あそこがマグナ・ヒストリアの実験場……だった……です?」

 驚きと困惑の表情でそう口にするメルメメルア。

 デュオロードは「そうだ」と短く肯定すると、そのまま何かを考え始める。

 そして、しばしの思案の後、

「その見た目からすると、お前は第37実験島の者であろう」

 と言った。

 

「第37……。たしかにそれにも聞き覚えがあるのです」

「というか、37って随分な数だな。そんなに実験島があったのか?」

 メルメメルアの言葉に続くようにして、そう言ってデュオロードを見るラディウス。

 

「当時は全部で138の実験島――浮遊島があった」

「ひゃ、ひゃくさんじゅうはち!?」

 デュオロードの言葉に、ラディウスよりも先に驚きの声を発するセシリア。

 

「大陸ひとつを分割して浮遊させたのだ。そのくらいの数があって当然であろう」

 何を当たり前の事を言っているのだと言わんばかりの表情で告げてくるデュオロード。

 それに対し、セシリアは、

「いや、当然と言われても……」

 と、頬を掻きながら答える。

 

「大陸ひとつを分割して浮遊……。なるほど、それがこの大陸の他に大きな大陸が存在していない理由か……。この大陸の半分程度の大きさの小大陸は存在するが、それもかなり離れているしな」

「そこに気づくとは驚きだ。もしや、お前は古代人なのか?」

 ラディウスの発言に、そんな問いの言葉を投げかけるデュオロード。

 

「残念だが俺は古代人ではない。……はずだ」

「はず……というのはどういう事だ?」

「俺の村には、古代の遺物や当時の文明や技術について書かれたものが多数存在していたんだ。だから、絶対に古代人とは無関係だと言い切る事は出来ない」

「なるほど。皇帝ベルドフレイムや皇女リリティナのように、少し前の時代へと流れ着いた古代人の集団――その末裔の可能性もある……という事か」

 ラディウスの発言に、デュオロードがそう返す。

 

 ――無論、俺がそれに気づいたのは、それだけが理由なのではなく、別の世界――地球というものを知っている為に、この世界の『形』に違和感を覚えたという理由もあるのだが、そこを言うつもりはない。

 ……それにしても、向こうの世界へと流れ着いた古代人の末裔の可能性……か。たしかに俺の村は色々と気になる点が多いのは事実だし、位置的にもこっちの世界だと聖木の館があった辺りだから、あり得ないとは言い切れないな……

 

 ラディウスはデュオロードの言葉に、そんな事を思うのだった。

全体的に説明が多いので圧縮したのですが、その結果、一気に色々と出し過ぎた気がしています……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、8月11日(日)の想定です!

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