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第3話 偽帝。接触。

 イザベラから渡された地図に沿って進んでいくラディウスたちは、特に何の障害もなく、水鏡の楼閣まで辿り着く。

 

「地下にこんなものを作り上げるだなんて驚きだわ……」

 目の前の光景に対し、驚きと呆れの入り混じった言葉を発するルーナ。

 それに続くようにして、リリティナが、

「やはり、生まれ育った家というのは、懐かしいものがありますね」

 と、少し感慨深げに呟く。

 

「来る途中でイザベラから、こっちに移動したから塔の方へは行かずにそのままあの屋敷の中に入ってくるように言われたけど……そもそも塔なんてなくない?」

 セシリアがそんな風に言いながら周囲を見回す。

 

 そう……。ラディウスたちは皇帝宮殿内を進んでいる最中、再び向こう側へと切り替わり、そこでイザベラから水鏡の楼閣へと移動した事を告げられていた。

 

「塔と言っても逆さまの塔でして、大空洞に存在している下へ伸びている塔なんですよ。元々こことは繋がっていなかったのですが……どうやらいつの間にか、ここからも行けるようにしたみたいですね」

「そうみたいだな。まあ、そっちへの入口はこの際置いておくとして……」

 リリティナにそう返しつつ、マリス・ディテクターを発動させるラディウス。

 

 ――あの屋敷からの敵意は0……か。

 今の所、デュオロードは敵ではないようだな。味方でもないが。

 

「……周囲に、こちらに対して敵意を持つ者がいないというのも妙な感じなのです」

 同じくマリス・ディテクターを使って周囲を確認していたメルメメルアが、そんな風に言う。

 それに対してラディウスは頷きながら、

「ああ、たしかにな。そもそも……俺たちを探して各方面に戦力を展開しているというのに、俺たちが既にここにいるという事が伝わっていないっぽいのが不思議だ。デュオロードがアルベリヒに伝えれば、全て戻ってくるだろうに……」

 という、もっともな疑問を口にする。

 

「単にデュオロードが状況を知らないだけという可能性は……まあ、ないよねぇ……」

「ないだろうな。俺たちと接触したいと言ってきた時点で、既に状況を把握しているだろうし」

「だよねぇ。という事は、わざと伝えていないっていう事になるけど……。話次第では各方面に展開中の奴らが戻ってきて、逃げ道を封じてきたりする……とか?」

「ないとは言い切れない……というか、むしろ大いにありそうだな、それは。まあ……もしもの時の脱出ルートは、アルヴィンスが必ず確保すると言っていたから、それを信じるしかないな」

 セシリアとラディウスがそう話していると、

「一応、あの屋敷には緊急脱出用の隠し通路……というか、一方通行の転送魔法陣があるので、それを使えば外へは出られるはずです」

 なんていう秘匿されている情報をさらっと口にするリリティナ。

 

「いきなり重要な情報が飛び出したし……」

 ちょっと呆れ気味に肩をすくめながら言ったセシリアに続き、

「うぅーん。もしもの時は、その転送先にも兵を配置していそうな気がするのです……」

「そうねぇ……。でも、外へ出られさえすればどうにかなりそうな気もするわ」

 と口にするメルメメルアとルーナ。

 それに対し、ラディウスは腕を組みながら告げる。

「ま、色々と気にはなるが、これ以上ここで考えていても仕方がないし、とりあえず今はあの屋敷へ行くとするか」


「ま、そうだね。まずはデュオロードと接触してみないと、だね」

「はい。デュオロードなる者と話をしてみない事にはどうなるか分かりませんからね」

 セシリアとリリティナがそんな風に返すと、メルメメルアとルーナも頷いて、

「はい。向かうのです!」

「ええ。行きましょ」

 という肯定の言葉と共に、屋敷の方へ向かって歩き出した。


 ――敵意0という事は、伏兵なども配されてはいないという事になる。

 それはつまり、単独で接触してきた……という事でもあるが……

 そうしなければならないような話なのだろうか……


 ラディウスはそんな事を考えながら先に行くルーナたちの後を追って歩き出すのだった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「で、屋敷の目の前まで来たけど……。このまま入っていいのかしらね?」

 ルーナが正面玄関を眺めながらそんな風に言った所で、玄関の大扉がギィィッという音を立てて開かれた。

 もっとも……開かれただけで、誰も出ては来なかったが。

 

「……まあ、入れって事だよねぇ」

「だろうな。ま、入るとしよう」

 肩をすくめながら言うセシリアにそう返しつつ、屋敷の中へと歩を進めるラディウス。

 

 そして――

「ほう、そういう事であったか」

 屋敷に入るなり、そんな声が降ってくる。

 それに対して、

「この声は……お兄様……? いえ、そっくりですが少し違いますね」

 と言いながら、上を見るリリティナ。

 

 すると、そこにはデュオロードの姿があった。

 

「……声だけではなく、姿も雰囲気もお兄様そっくりですね。ここまで似ているとは……驚きです」

 リリティナがそんな風に言うと、

「やはり違いに気づくか。いや、ここはさすがというべきだな。――皇女リリティナよ」

 などと、大仰な仕草で肩をすくめながら返してくるデュオロード。

 そしてそのまま腕を組み、

「よもや、封印を破って舞い戻っていたとはな。いや、だからこその『この状況』と言うべきか」

 という言葉を続けてきた。

 

「やっぱり勘違いしてるわね……」

「だな。まあ予定通り『そういう事』にしておくぞ」

 小声のルーナに対し、ラディウスも小声でそう返す。

 そして、ラディウスはそのままリリティナへと視線を向けた。

 

 リリティナはそのラディウスの視線に、顔をデュオロードの方へと向けたまま小さく頷いてみせると、少し大げさに手を動かし、デュオロードに発言を求めるような仕草と共に、問いの言葉を投げかける。

「それで……? 私たちをここへ呼んだのは、いったいどういう理由があっての事なのですか?」

 

「何、少しばかり『話を聞きたい』と思っただけだ。……が、皇女リリティナが居るというのなら、状況は変わってくるというもの。もう少し『深い話』をする必要がありそうだ」

 そんな風に返事をするデュオロードに、「深い話……ですか?」と首を傾げながら再度問うリリティナ。

 

「まあ、このような場所で立ち話というのもなんだ。応接間へ来るがいい。お前たちの仲間の女たちも既にそこにいるのでな」

 腕を組みながらそう告げると、踵を返すデュオロード。

 

「――リリティナの存在によって『流れ』が変わった感じだね」

「はいです。もっとも……その『変化』が、良い方へなのか悪い方へなのかは、現時点ではさっぱりではあるですが……」

 セシリアとメルメメルアがそんな風に言うと、

「それこそ、話をしてみなければわからないというものです。さあ、行きましょう」

 と返し、応接間へ向かって歩き出すリリティナ。

 

 ラディウスはその後を追いながら、なんとなくのカンだが……今の所は『良い方』へ変わっている気がするな……と、そんな事を思うのだった。

前回、あまり進展しなかったので、今回はそこそこ進展するように若干展開をカットしました。


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新は予定通りとなります、8月1日(木)の想定です!

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