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第2話 偽帝。ガジェットとセキュリティ。

「――とまあ、こういう構造にすればいい」

「な、なるほどですわ……。どうやって無効化しているのかと思いましたら、処理の根幹というか、もっとも重要となる『始動部分』か『終端部分』のどちらかを打ち消すような仕組みになっていたんですのね……」

 ラディウスの説明を聞き終えたイザベラが、驚きつつも納得といった表情でそんな風に言う。

 それに対してラディウスは頷きつつ、

「そういう事だ。処理の始まりか終わりを潰してしまえば、あとの処理がいくら正常であったとしても、全て無意味と化すからな。ただ、一方だけ潰すのだと、その打ち消しだけでは駄目なパターンってのもあるからな。だから、両方潰せるようにして、可変させているってわけだ」

 と、そう付け加えるように説明する。

 

「両方打ち消せるようにして、なおかつ可変させるとか、普通に考えたら無茶苦茶ですけれどね……」

 呆れ気味に言うイザベラだったが、手の方はやる気満々だった。

「とはいえ、構造が分かればなんとかなりますわ。ササッと作りますわよ!」

 なんていう言葉を続けて口にすると、即座にガジェットの制作に入る。

 

「はやっ!」

「私よりも早いわね……。ちょっと悔しいけど、さすがと言うべきなのかしら……」

 工程を進める速度に驚くセシリアと、少し悔しそうな表情のルーナ。

 それに対し、

「何度も時間を逆行して、凄まじい数のガジェットを作ってきた事で熟練されただけですわ。言ってしまえば、単に年季が違うだけですわよ」

 なんて事を言うイザベラ。

 そして……

 

 ――そんな私に追いつきそうな勢いのルーナや、既に追い抜かれてしまっているラディウスが異常というものですわ……

 特にラディウスの方は技術だけではなくて、知識の方――ガジェットの構造の細かい部分まで把握して理解しているという点――も、とんでもないんですのよねぇ……

 例え時間を逆行したとしても、ここまでの知識は得られないように思いますわ……

 これが、メルメメルアのように古代人だというのであれば納得も出来ますけれど、そうではないんですのよねぇ……

 

 と、そんな事を考える。

 

「年季という言い回しはさておき、やっぱり場数って大事よねぇ」

 ルーナがそんな風に言うと、

「ですです。私も幾度となく殺されたお陰で、どの魔物がどういう特徴を持っているのかとか、どういう動きをするのかとか、ばっちり知識として蓄えられていますですからね!」

 なんて事を、何故かちょっとドヤ顔で言うカチュア。

 

「うん、まあ……その、たしかに凄いけど、その知識の蓄え方はちょっと……」

 セシリアが頬を掻きながらそう口にすると、カチュアが、

「あ、あれぇ? なんだか反応が想定外ですです……」

 と、今度はちょっと困惑気味に呟く。

 

「ええと、その……さすがはカチュアさんですね……。私も剣技を鍛える為に、次々に魔物に挑んでいって、返り討ちにあったりしたものですわ……。その度に、指南役に怒られたものです」

「皇女様が一体何をしているのだわ……。怒られるに決まっているのだわ……」

 リリティナのカチュアをフォローするつもりのような発言に対し、クレリテがやれやれと言わんばかりの表情でそう返し、首を横に振ってみせた。

 

 ……そんな会話をしている間にも、イザベラの作業は進んでいき――

「――完成しましたわよ! 確認してくださいませ!」

 と言いながら、イザベラはラディウスに完成したばかりのガジェットを差し出した。

 

 ラディウスはそれを受け取って、各所を確認すると、

「ああ、問題ない。……というか、しれっと無効化する範囲を大幅に狭める事も出来るような可変機能が増えてるし」

 と、そんな風に言った。

 

「このガジェット、効果範囲が結構広いですけれど、それだと状況によっては干渉を受けている事がバレてしまいますわ。効果範囲をごく一部分だけに絞るのも必要だと思って付け足しましたわ」

「ああなるほど……たしかにそうだな。連動式のセキュリティガジェットの事を考えて、範囲を広めにしておいたが、それが逆に怪しまれる結果になる事もあるか」

 イザベラの説明に納得し、顎に手を当てながらそう呟くように言うラディウス。

 

「なら、これはイザベラが持っていって、リゼリッタの持っているものと交換した方がいいな。リゼリッタの持っているものも、同じように改良してしまいたいし」

「……さすがにデュオロードの目の前でガジェットを交換するのは難しいですわね。デュオロードとの話が終わった後に、ラディウスが直接交換する方がいいですわ」

 ラディウスの話にイザベラが肩をすくめながらそんな風に返す。

 それに対してラディウスは、

「それもそうか……。なら、とりあえずそっちへ行くとしよう」

 と返事をした。

 

「ええ。では、向こうで待っていますわね」

 イザベラが頷いてそう言った直後、視界が切り替わり、向こうの世界へと移動するラディウスたち。

 

「――それで、どこから皇帝宮殿に入る感じなの?」

 そう問いかけるセシリアに、ラディウスはイザベラから受け取った地図を開き、

「どうやら、地下トラムの貨物専用線……皇帝宮殿内へ物資を搬入する為の線路から入るような感じだな」

 と答える。

 

「ああなるほど、あれを使って物資を皇帝宮殿内に運んでいるのね。なかなか良い方法を使っているわね。ある意味、さすがだわ」

 ルーナが納得しつつ感心してそんな風に言う。

 しかしすぐに、

「でも、そんな場所なら警備も厳重そうな気がするけど……」

 という懸念を口にした。

 

「いえ、搬入に使う専用貨物列車の警備は厳重ですけれど、線路はそこまで厳重ではありませんよ。搬入時以外は途中で障壁によって封鎖されていますので、警備の兵を配しておく必要がないんですよ」

「あ、なるほど、そういう事なのね」

 ルーナがリリティナの説明に納得した所で、

「どうやらそうみたいだな。で、その障壁なんだが……実は『メンテナンス用の通路』を使う事で無視して進めるようだ」

 と、地図に記されている走り書きを読みながら言うラディウス。

 

「……メンテナンスの為にセキュリティが脆くなるって、なんだか本末転倒感ない?」

「かと言って、セキュリティがガチガチすぎてメンテナンスも出来ないようだと、それはそれで問題よね。特にイレギュラーな事態が起こった時に」

 肩をすくめながら言うセシリアに、ルーナがそんな風に続く。

 

「何事も、柔軟性というものをある程度残しておかないと駄目なのだわ」

「なるほど……。メンテナンス用の通路なるものがあった事は始めて知りましたが、機会があったらその柔軟性というものを残しつつ、しっかりと強固さもあるような感じにしたい所です……」

 リリティナはクレリテの発言に対し、顎に手を当てながら、納得の表情でそう返すのだった。

思ったよりも話が進みませんでした……

次はもうちょっと一気に進みたい所です。


とまあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新は7月28日(日)を予定しています!

(なお、日曜日の更新から先はいつもどおり(平時)に戻ります)


※追記

誤字を修正しました。

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