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第11話 皇帝宮殿。デュオロード。

「ただ……なにかこう……少し妙な感じなんですよね……」

 驚くヨナとイザベラに、そんな言葉を投げかけるリゼリッタ。

 

「妙……ですか?」

「どういう事ですの?」

 ヨナとイザベラが、共に首を傾げながら問いかける。

 それに対して、

「記されている『皇帝として行動する日時』なんですが、ひとつ残らず全てベルドフレイム皇帝が姿を見せた時なんですよ」

 と、そんな風に言うリゼリッタ。

 

「えっと……。影武者なのであれば、当ぜ……ん?」

 ヨナはそこまで口にした所でハッとした表情になり、そして呟く。

「……ひとつ残らず全て……?」


「……それはたしかに妙ですわね。ベルドフレイム本人は今まで一度も姿を見せずに、全てこのデュオロードなる人物が姿を見せていた……という事になりますもの」

「皇帝という地位に立つものがそれでいいのかという気はしますが、ベルドフレイムの人嫌いはここまで徹底するほどだという事なのでしょうか?」

 イザベラの言葉に続くようにして、ヨナがそんな疑問を口にした。


「……いえ、レヴァルタでの一件を考えると、そこまでではないはずですわ。……なんというか、少し度が過ぎているというか、さすがに不自然さすら感じますわね。これは……」

 イザベラがそうヨナに対して返事をすると、ヨナは顎に手を当てて納得しつつ、イザベラへと新たな疑問を投げかける。

「……たしかにそうですね。イザベラ様を殴る蹴るしてた皇帝は、本人と影武者のどっちなんでしょうね?」

 

「――レヴァルタでの一件を考えると、あれは本人な気もしますけど……絶対にそうだと言い切るのは難しいですわね」

 顎に手を当てながらイザベラがそんな風に言うと、リゼリッタがそれに続くようにして、

「影武者が本人ではないと悟られないように、敢えてそういう行動を取った可能性も普通にありますからね」

 なんて事を言った。

 

「そうなんですのよねぇ……。まあ……日時を確認してるのが一番ですわね。それ、ちょっと見せて貰えません?」

「ええ、もちろん構いませんが……ベルドフレイム皇帝と直接接触した日時を覚えているのですか?」

 問いかけるイザベラに対してリゼリッタはそう返しつつ、手に持っていた日誌あるいは日記のようなものを手渡した。

 

 イザベラは礼を言いながらそれを受け取ると、

 「ええ。しっかり覚えていますわよ。どこでその情報が必要になるかわかりませんもの。……実際、こうして必要になったわけですし」

 と、そんな風に返事をしながら中を確認していく。

 

 そして一通り確認し終えた所で、

「――少し前まではベルドフレイム本人で間違いなさそうですわ。私がベルドフレイムと直接話をした日時については何も書かれていませんもの」

 と告げた。

 

「少し前までは……という事は、最近は違うと?」

 イザベラの言葉に小首をかしげながらヨナが問う。

 イザベラはそれに頷いてみせると、

「ええ。最近は私がベルドフレイムと直接話をした日時について……どころか、私との会話の内容についてまで書かれていましたわ」

 と、そんな風に答える。

 

「なるほど……。つまりデュオロードは皇帝の真似をして、イザベラ様を殴る蹴るした……というわけですか」

「ええ、そうなりますわね。……言われてみると、最近は反応が少し悪かった気がしますわ。少し飽きられつつあるのではないかと、そんな風に思っていたりしましたけれど、どうやらそういうわけではなかったようですわね」

 納得の表情をみせるヨナに、過去を思い出しながらそう返すイザベラ。

 

「ですが、このデュオロードなる者が皇帝の代わり――影武者をしていたのなら、何故もっと表に出なかったのでしょうね? わざわざ大陸全土に『現在の皇帝が何者なのかを気にしなくなるマインドコントロール』なんてものを施すよりも簡単な気がしますが……」

 リゼリッタが顎に手を当てて思考を巡らせながらそんな疑問を口にする。

 それに対してイザベラは、

「ええ、そうですわね。そこに関しては私も同じ事を考えていましたわ。無論、そのマインドコントロールについては、最初から『されている事自体』は認識していましたけれど」

 と、返した。

 

「それはまあ、直属の諜報員が認識していなかったら色々と支障がありますからね」

「ただ、どういう方法でそうしたのかはさっぱりですわね。気になってベルドフレイムに聞いてみたら、速攻で蹴り飛ばされましたし……」

 イザベラはそう言って肩をすくめてみせた後、

「あ、ちなみにその時のベルドフレイムは『本人』でしたわ」

 なんていう補足の言葉を紡いだ。

 

「大陸全土にマインドコントロールを施す方が、実は簡単だという判断でもあったんでしょうか?」

「もしそうだとすると、何か理由があるはずですけれど、さすがにそこまでは書かれていませんわね」

 ヨナに対してイザベラがそう返した所で、

「もう少し色々調べてみましょうか。もしかしたら、その辺りについて書かれたものとかが出てくるかもしれませんし」

 と、そんな風に言うリゼリッタ。

 

「そうですわね。この部屋は全て調べ尽くした方が良さそうですわ」

 イザベラは頷きながらそう口にすると、そのまま周囲を見回す。

 

 ――さて、そういったものを隠すとしたら……

 

 イザベラがそれについて思案し――始めたその直後、「その必要はない」という男の声が部屋に響く。

 

「「「っ!?」」」

 3人は唐突な男の声に驚きを隠せなかった。

 

 ――まさか、この部屋の主……デュオロードだったりするんですの?

 この私が、潜んでいる事に気づかなかっただなんて……

 

 イザベラは心の中でそんな風に呟きつつも、素早く周囲を探る。

 と、そこで本棚が重い音を立てながら、横にスライドし始めた。

 

「隠し扉……っ!?」

「……隠し部屋に潜んでいたというわけですか……」

 ヨナの驚きの声に続くようにして、ため息交じりにそう呟くリゼリッタ。

 

「その通りだ。お前たちが『下』で何かを嗅ぎ回っていたのを『見つけた』のでな。きっとここにも来るだろうと考え、こうして『自室の隠し部屋』にて待ち構えていたのだ」

 という声と共に、男――この部屋の主であるデュオロードが、3人の前にその姿を現すのだった。

いきなりの登場となりましたが果たして……?


といった所でまた次回!

次の更新は予定通りとなります、7月18日(木)の想定です!


……が、その次の更新とその更に次の更新に関しましては、所々諸々の都合により、6月末~7月頭と同じような更新間隔になりそうです……

(ただし、その更に先からは元の更新間隔に戻れる予定ではいます)

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