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第10話 皇帝宮殿。部屋の主の名は。

 ――ここが執務室なのかどうか、そして……もしそうであるのならば誰のものなのか、それがわかるようなものは何かありませんの……?

 

 そんな事を考えながら部屋の中を見回すイザベラ。

 しかし、さすがに見回しただけで、それらがすぐに判明するようなものは見当たらなかった。

 

 どうしたものかとイザベラが思った所で、

「……ラディウス様のガジェットが動作しています。どうやら、正面の執務机らしきものの引き出しと、あちらの壁際の戸棚、その双方にセキュリティガジェットが仕掛けられているようですね」

 なんて事を告げてくるリゼリッタ。

 

「なら、そのふたつを調べてみるのが良さそうですわね」

 イザベラがそんな風に言いながら執務机に歩み寄り、引き出しを開け――ようとして、開かなかった。

 

「……って、引き出しは鍵がかかっていて開きませんわね」

 そうイザベラが言った直後、今度はリゼリッタが「戸棚のほうも同じですね」と言って戸棚にも鍵がかかっている事を告げる。

 

「鍵がかかっている上に、セキュリティガジェットまで仕掛けられている……となると、重要なものが入っていそうな感じですわね」

「ですね。とりあえず鍵を開けましょうか」

 ヨナはイザベラに対して頷きながらそう言って引き出しの鍵を開けはじめる。

 

 そして、程なくしてあっさりと鍵は開き、「次は戸棚の方を開けますね」と言いながら、リゼリッタのいる戸棚の方へと向かうヨナ。

 それを見送りながら一番上の引き出しを開けて中を調べていくイザベラ。

 

 ――ううーん……。ここには特に目ぼしいものはありませんわね……

 

 一番上には何もなさそうだと判断し、イザベラは次の段へと移る。

 そして中を調べていると、ヨナがイザベラの所へ戻ってきて問う。

「戸棚の方は開きました。イザベラ様、何か見つかりましたか?」

 

「いいえ。今のところ特になにもありませんわねぇ……」

 と言いながら、更に次の段へと移る。

 

 すると、筆記用具類の隙間に、カードのようなものが置かれていた。

「うん? カード? 一体なんの……ですの?」

 とつぶやきながら、それを手にして確認するイザベラ。

 するとそれは、帝国の人間――帝国領内で活動する冒険者を含む――全てに与えられる身分証の代わりにもなるカードだった。

 ただし、イザベラが持っているものとは少し色が違っていた。

 

 ――この金縁に黒塗りは、高位階級用の……

 

「……これ、帝国民固有IDカードですわね。高位階級用の」

「そうなんですか? たしかに私の物とは色が違いますね……」

 イザベラに対してヨナがそう言うと、

「これは一般人や冒険者用の物とは権限レベルが違う事を示しているんですのよ。このカードがあれば、一般人や冒険者が立ち入り禁止の場所に入れたり、検問などをスルー出来たりしますわ」

 と、腕を組みながら説明するイザベラ。

 

「なるほど……。そういう代物なのですか」

 納得顔でそう口にしたヨナだったが、すぐに別の疑問が頭に浮かぶ。

「……IDカードって、所有者の情報が記録されていますよね? 調べれば、この部屋が誰のものなのか、わかるのでは?」


「――たしかにそうなのですけれど、この高位階級用のカードは情報にプロテクトがかかっていて、普通のカードチェッカーでは駄目なんですのよねぇ……」

 イザベラはヨナの呟きを引き継ぐようにそう言うと、ため息をつきながら首を横に振ってみせる。

 すると、リゼリッタがそれに続くようにして、

「それでしたら、高位階級用のIDカードでも中の情報を知る事が可能な『方法』に心当たりがありますので、調べてみますね。カードを貸していただけますか?」

 と、『方法』の所を強調しながら言って、イザベラへと歩み寄る。


「ええ、もちろん構いませんわよ。任せましたわ」

 頷きながらそう言って、リゼリッタにカードを手渡すイザベラ。

 リゼリッタはそれに対して「任されました」と返事をすると、そのまま部屋の外へと出ていった。

 

「えっと……。リゼリッタさんは一体どこへ?」

「……まあ、リゼリッタが持つ『特殊な情報伝達手段』で、『お仲間』とやり取りするんだと思いますわよ」

「そんなものがあるんですね」

「ええ。私も詳しくは知りませんけれど。あるそうですわよ」

 もっともな疑問を口にしたヨナに、そんな風に返すイザベラ。

 そして……

 

 ――どう考えても、向こうの世界へ移動して誰かに調べさせてくるんだとは思いますけれど、それをヨナに説明するのはなかなか難しいですわね。

 というか……私自身、リンクについて知ったのは最近ですし。

 

 ……なんて事を心の中で付け足した。

 

 イザベラが適当にはぐらかしながらヨナと会話を続けていると、リゼリッタが敢えて時間をかけたフリをして戻ってくる。

 そして、

「――判明しました。これは『デュオロード』という人物のカードです」

 と告げた。

 

「えっと……デュオロード? ちょっと変わった名前ですが、誰なのでしょう? 聞いた事もないんですが……」

 唐突に出てきた知らない名前に、困惑しつつ呟くように言うヨナ。

 そのヨナに対して、イザベラが腕を組みながら返事をする。

「そうですわね……。私もまったく知らない名前ですわね。というか、名前的にはどうにも引っかかるものがありますわねぇ……。なんらかの理由で情報が秘匿されている者なのか、それとも最近入った者なのか……判断に迷いますわね」

 

「なら、もう少し物色してみましょうか」

 ヨナはイザベラにそう返しつつリゼリッタの方を見て、

「って、そう言えば戸棚の方には何かありましたか?」

 と、そう問いかけた。

 

「はい。こちらには日誌あるいは日記のようなものがありました。今、詳しく記されている内容を確認している所ですが……。って、これは……」

 そんな風に返事をする途中でページをめくる手が止まるリゼリッタ。

 それに対して、イザベラがヨナに代わって再度問う。

「どうかしたんですの?」

 

「え、あ、はい。そ、その……えっと……『皇帝』として行動する日時、そして行動した際の記録が……」

「校庭として行動する……? そ、それってつまり……デュオロードは皇帝の影武者……?」

「そうなりますわね……。デュオロード――二人組の君主……。まさか、名前の通りだとは思いもしませんでしたわ……」

 リゼリッタの言葉に、ヨナとイザベラは驚きの表情でそう口にする。

 そして、

「本当に影武者が存在していたという事に驚きです……」

「ええ。まったくですわ。――ある意味、大当たりですわね、この部屋……」

 と、そんな風に言葉を続けたのだった。

今回の話、実は元々はもう少し長かったのですが、無駄に長くなっているだけな感じしかしなかったので、スパッとカットして、今の長さになりました。

……若干カットしすぎて、デュオロードの名が出てきてからの展開が高速過ぎるような気もしてはいますが……

ま、まあ、テンポ重視という事で……


といった所でまた次回!

次の更新も予定通りとなりまして、7月14日(日)の想定です!


……来週は諸々の都合により、また少し間が空く形になるかもしれません……(まだ未定ですが)

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