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第9話 皇帝宮殿。作業部屋と執務室。

「わ、わかっていますわよっ。……というか、ここにはこれ以上調べられそうなものはありませんわね。――目の毒ですし、そろそろ他の所に行きますわよ」

「目の毒なのはイザベラ様だけですけどね……」

 イザベラに対してヨナがそんな突っ込みを入れる。

 

「い、いいから行きますわよっ!」

 そう言い放ちながら部屋の外へと出るイザベラを、ヨナがやれやれと首を横に振りながら追う。

 

 リゼリッタはというと、向こうの世界とこちらの世界とを行き来しながら、箱の中にあったガジェットを向こうの世界へ持っていき、どういうものなのか確認してから戻ってきて箱に戻すという行動を繰り返していた。

 無論、イザベラやヨナにとっては一瞬でしかないので、ふたりともそんな事をしているなどとは気づいていないどころか、考えてすらいないが。

 

 ――ラディウス様ほど詳しい人間はいないとはいえ、ウチの組織にもこのくらいのものであれば、調べられる者はいますからね……

 しかし、向こうの世界特有の物が混ざっている……ですか。あちらの勢力にもふたつの世界を行き来する事が可能な者がいる……という事ですね。

 まあもっとも、そういった者がこちらの勢力にしかいないなどという事はありえないですし、当然と言えば当然かもしれませんが……

 

 リゼリッタは一通り確認し終えた所で、そんな風に思考を巡らせつつ、イザベラとヨナの後を追った。

 

「――それで、次はどちらへ? このまま順番に見ていきますか?」

「中に人がいないのなら、そうするのが一番確実な気がしますわね」

「少なくとも、私が気配を察知出来る範囲内には誰もいなさそうです。……私以上の技量で隠れ潜んでいるとかでなければですが」

「いつ来るかも分からない侵入者のために、常にそんな事をし続けて待ち構えているような人間なんていませんわよ……」

 なんて事を話しているイザベラとヨナに、

「順番に見ていくのが確実ではありますが、ラディウス様たちの追跡を諦めて戻って来られると危険ですし、扉を開けてみて、特に何もなさそうな所は詳しく調べずに次に行く感じでもいいと思います」

 と告げるリゼリッタ。

 

「たしかにそうですわね。――ヨナ、そんな感じで行きますわよ」

「わかりました。とりあえず扉は私が開けますね。罠の解除や鍵開けをする必要のある所も多そうですし」

「ええ、任せましたわ」

 ヨナに対してイザベラが頷きながらそう返すと、ヨナは早速次の扉へと移動し、

「ここは何も仕掛けられていませんね。鍵もかかっていません」

 と言いながら扉を開ける。

 

「……鍛冶場みたいな部屋ですね。炉の火は消えていますが」

 そんな風に告げてくるヨナに、イザベラは中に入って見回すと、

「なるほど……。ここはガジェットを融合させたり素材に戻したりする為の部屋な気がしますわ。特にないと思いますし、次へ行きますわよ」

 と告げた。

 

 ……そんな感じで、次々に部屋の中を軽く確認しつつ先へ進んでいくイザベラたち。

 しかし、特に何の発見もないまま、10部屋目に到達した。

 

「……ここまで10部屋ほど見てきましたけれど……この階は、作業場として使われているだけのような気がしますわ」

「そうですね……。たしかにどの部屋も何かの作業に使う部屋といった感じでしたね」

 肩をすくめながら言うイザベラに、リゼリッタが同意する。

 

「この部屋も作業用の部屋っぽい感じですね。何かの器具とかが置いてありますし」

 そう扉を開けて言ってくるヨナに続くようにして、

「うーん、順番に見ていくのが確実……と言っておいてあれですけど、この階はもう調べなくてもいい気がしますわ」

 と、イザベラ。

 

「そうですね……。ただ、作業報告などを保管している部屋がどこかにあるかもしれませんが……」

 懸念を口にするリゼリッタに、イザベラが答える。

「そういうものって、纏めて保管するものなんじゃありません? 各階にそれぞれ保管部屋を作るのは、管理するのが面倒なだけな気がしますわよ」


「たしかにイザベラ様のお屋敷では、あらゆる報告書をひとつの部屋で纏めて保管、管理していましたね」

「ええ、そうですわね」

 イザベラがヨナに対して頷いて見せると、

「なるほど……。ウチでは『拠点を破棄せざるを得ない状況』になる可能性を考えて、各拠点に情報を分散させる形で保管、管理しているので、そういう考えには至りませんでしたが、たしかに普通はその方が楽ですね」

 なんて事を口にしつつ、納得の表情をするリゼリッタ。

 

「はい。というか、この塔を破棄せざるを得ない状況……なんてのは、そうそうあり得ないというか……あったら大事ですからね。報告書などはどこかで纏めて保管、管理しているのではないかと私も思います」

「ですね……。他の階へ行きましょうか」

 ヨナに対してリゼリッタがそう返したので、最初から異論のないイザベラとヨナは頷いてみせ、速やかに別の階へと向かうため、階段へと戻る。

 

 そして、階段を登ってさらに上の階へと移動。

「下の階と同じように、手前からある程度確認してみますわよ」

 と告げるイザベラ。

 

「わかりました。……というかこの階、下と比べて少しキレイな感じがしません?」

 と言ってくるヨナに対し、周囲を見回しながらイザベラが返す。

「たしかに宮殿内……とまではいかないにしても、それなりに整っていますわね」

 

「まあ、とりあえずそこの扉を開けてみますね」

 そう言いながら一番近くの扉へと歩み寄るヨナ。

 そして、

「施錠されていますが、罠などはなさそうです」

 と告げつつ、速やかに解錠を始めた。

 

「施錠……という事は、何か重要なものがあるという事になりますわね」

「そうですね。施錠のみである事を考えると、奪われてはまずい程の重要さはなさそうですが」

 解錠を進めるヨナを見ながら、そんな風に言うイザベラとリゼリッタ。

 

 その直後、ヨナが「開きました」と言いつつ扉を開け、部屋の中を確認。

「……執務室みたいな感じですね」

 と告げた。

 

「この階が整っている理由がなんとなくわかりましたわ……」

「それなりに高位の者が使っている階のようですね。……もし、ここがアルベリヒの執務室だったら大当たりですが……」

「それならこう……もっと入口の扉に『偉い人の部屋』である事を示すものがあってしかるべきだと思いますけれど……。ああでも、あの男の事ですし、敢えて目立たなくしている――隠蔽している可能性もないとは言い切れませんわね」

「はい、その可能性はゼロではないと思っています。まあ……とりあえずここが本当に執務室なのか、そして執務室であるのなら、誰の執務室なのか……その確認が最優先ですね」

「そうですわね。すぐに判明するといいんですけれど……」

 イザベラとリザリッタはそんな風に言いながら、ヨナの開けた扉から部屋の中へと足を踏み入れるのだった。

一体誰の部屋なのでしょう……?


といった所でまた次回!

次の更新はいつも通りとなりまして、7月11日(木)の想定です!

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