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第8話 皇帝宮殿。保管庫とガジェットと。

「――やはりというか、目録の保管庫ばかりですね」

 部屋の中を確認しながらそう言ってくるリゼリッタに、

「そうですわね。もうこの階の探索は、ここで切り上げてしまっても良い気がしますわ」

 と返すイザベラ。

 

「私たちが入ってきたあの部屋だけ特殊だったんですかね?」

「いえ、おそらくあそこも元々は同じ目録の保管庫だったのではないかと……。ただ、外と繋げるのにちょうど良い部屋だったので改装したのではないでしょうか?」

 ヨナの疑問の声に対し、リゼリッタがそう返すと、

「あ、なるほど。たしかにあそこに入口を作るのなら、改装するしかないですものね」

 と、ヨナが納得の表情でそんな風に言う。

 

「ですわね。そしてそう考えると、これ以上この階に留まる必要はないと言い切っても良いですわね」

「まったくもって同意です。さっさと上の階へ行きましょうか、イザベラ様」

 肩をすくめるイザベラに対してヨナがそう返すと、リゼリッタも「そうですね」と言いながら首を縦に振った。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「――で、とりあえずひとつ上に来てみましたけど……下と同じような構造ですね」

「まあ……各階ごとに大幅に構造が変える必要は特にないですし? こういうものだと思いますわよ。迷宮を作るつもりだったとかなら別ですけれど」

 ヨナに対してそんな風にイザベラが返すと、

「古代の遺跡というと、なんとなく迷宮のような複雑なものをイメージしますけど、こういうシンプルな構造の方が実際には多いですからね」

 と、補足するように言うリゼリッタ。

 

「なるほど……。言われてみると、大昔の人間がわざわざ迷路の中で生活していたとは思えませんし、たしかにその通りですね」

「無論、迷路の如き構造の遺跡もありますけれどね。ただ……そういった遺跡は、『人が暮らす場所としては使われていなかった』としか思えないような場所ばかりですけれど」

 イザベラはヨナにそう言いながら――

 

 ――向こうの世界のガーディマ遺跡とかはまさにそんな感じですわね。

 メルメメルアが言うには、あそこはなにかの試験をするための場所だったようですし……

 あの遺跡もしっかりと探索してみたいところではありますけど、なかなかそっちまで手が回らないんですのよね……

 

 なんて事を考え、心の中でため息をついた。

 

「とりあえず一番手前の部屋に入ってみましょうか。気配も物音もしませんし、入っても大丈夫だと思います。……鍵がかかっていなければ、ですが」

 と言いながら、階段から一番近い部屋へと歩み寄り、扉の取っ手に手を触れ……ようとして、手を引っ込めた。

 

「……? どうかしたんですの?」

「この扉……なにか仕掛けられていますね……」

 イザベラの問いかけに対し、そう答えるヨナ。

 

「仕掛け……ですか? ――あっ、ラディウスさんのガジェットが動作していますね」

「それはつまり、ガジェットによる仕掛けが施されているという事ですわね」

 そんな風に告げてくるリゼリッタとイザベラに、ヨナは、

「ですね。まあ無効化されているのであれば大丈夫な気はしますが、一応詳しく調べてみます」

 と返してすぐに扉を調べ始めた。

 

 そして程なくして……

「ガジェット以外の仕掛けなどはなさそうです。このまま開けてしまいますね」

 なんて事を口にしつつ、扉を開けるヨナ。

 そしてそのまま扉の裏側を確認し、

「――扉の内側、取っ手の横に何かガジェットらしきものがくっついていますね……。セキュリティガジェットでしょうか?」

 と、言った。

 

「どれどれ、ですわ」

 などと呟きつつ、ヨナの所に歩み寄り、ヨナに示されたものを確認するイザベラ。

 

「……このガジェット、騒音の術式と拘束の術式が組み合わされていますわね。おそらく、不用意に扉を開こうとした者を拘束した上で、アラームを鳴らすという仕組みなんだと思いますわ」

「つまり、拘束機能付きの警報装置というわけですか……。そんなものもあるんですね」

「私も実際に使われているものを、この目で見たのは初めてですわね。解除して持ち帰りたい所ですわね……」

 そんな事を言うイザベラに対し、ヨナはちょっとだけ呆れ気味に、

「……イザベラ様、気持ちはわかりますが、さすがにそれはやめておきましょうか」

 という静止の言葉を告げる。

 それに対して、

「わかっていますわよ。言ってみただけですわ」

 と、そう返すイザベラだったが、視線だけはガジェットの方に向いたままだった。

 

「――まあ、それはそれとして、この部屋は……」

 と言いながら、部屋の中を見回すヨナ。

 

「壁を壊して、複数の部屋を繋いでいる感じですね」

「そのようですわね。でも、まさか古代のガジェットという『遺物を管理するような者たち』が、一部だとはいえ、遺跡を壊すような真似をしているとは思いもしませんでしたわ……」

 ヨナの言葉に対し、イザベラが一部強調しつつ返事をしてやれやれと首を横に振ってみせた所で、

「大きな机がいくつも並んでいますが……これは、何かの作業をする為のもの……なのでしょうか? 設計図らしきものや、何に使うのか良く分からない道具なども置かれていますし、何かを作っていた……?」

 という疑問の言葉を、ふたりの後ろから眺めながら発するリゼリッタ。

 

「置かれている道具は、外から運ばれてきたものを、ここで分類したり調べたりするのかもしれませんわね。少なくとも、セキュリティガジェットを扉の所に仕掛けている時点で、食堂とかではないのは間違いありませんわ」

 そう言いながら、メルメメルアがいれば、簡単に用途がわかるんですけれどねぇ……なんて事を思うイザベラ。

 

「それはまあそうでしょうね……。ですけど、もしそういった場所なのだとしたら、誰もいないのが妙な感じですが……」

「それこそ、『ラディウスたちの追跡の応援に呼ばれた』のかもしれませんわね」

 ヨナに対し、イザベラはそう返事をして肩をすくめてみせる。

 

「こちらの箱に、遺跡で発見されたと思われる古いガジェットが入っています。イザベラさんの言う通りな気がしますね」

 そんな風に言ったリゼリッタに続き、

「なるほど、ガジェットを調べるつもりだった所で応援に呼ばれてしまって、そのままになっている……と、そういう感じですか」

 と、口にするヨナ。

 

「まあ、保管庫に戻してから行くくらいの余裕はありそうな気もしますが……」

 そうリゼリッタが言うと、その場にやってきたイザベラが、

「何らかの理由で、保管庫から出すのも入れるのも大変なのかもしれませんわね」

 と言いながら、箱の中を見る。

 そして、

「……これ、ひとつくらいかっぱらってもバレそうにない気がしますわ……」

 などという発言を続けた。

 

 それを聞いたヨナが、

「イザベラ様? 急に盗人みたいな事言いだしましたね? 駄目ですからね?」

 と、呆れた表情で返すのだった――

なかなかガーディマ遺跡の所まで進めません……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新は7月7日(日)となりまして、その先からはいつもどおりに戻ります!

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