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第5話 皇帝宮殿。情報の出処の謎。

 ヨナが扉に手を掛け……そして開く。

 

「鍵がかかっていたり、罠が仕掛けられていたりする可能性はなさそうですね」

 ヨナはそう呟きながら扉の周囲と中を確認。

 問題ないと判断すると、イザベラとリゼリッタに対して合図を送った。

 

 そのヨナの合図に対してイザベラとリゼリッタは、一度屋敷の方を見て、こちらに対して視線を向けている者がいないか確認。

 そのまま顔を互いに見合わせると、

「屋敷の方も大丈夫そうですわね」

「はい、誰も見てはいなさそうです。移動しましょう」

 という言葉をそれぞれ口にする。

 

 ふたりは『判断が一致したので問題なし』という意味で、共に首を縦に振ると、速やかにヨナのもとへと移動した。

 

「少し確認しておきましたが、見張りの気配はありませんでした。……というか、皇帝が使う通路の割には殺風景ですね」

 やってきたふたりに、開口一番そんな事を言うヨナ。

 それに対してイザベラは、

「この手の通路を豪奢にしても仕方なくありません?」

 という突っ込みめいた言葉を返した。

 

「しかし、入口が簡素というか……まるでカムフラージュしているかのような造りなのは、双蛇の反転塔へと続く通路だと悟られないようにする為……なのでしょうか?」

「双蛇の反転塔と繋がっている事を知られて困るような相手が、こんな所まで来るんですかね? いえ、まあ……私たちはこうして来ていますが……」

 リゼリッタの疑問に続くようにして、そう口にするヨナ。

 

「侵入者対策……にしては、情報が外に漏れているのも良く分かりませんわね」

「実は意図的に漏らされていて、この先にはトラップがある……とかではないですよね?」

 イザベラに対してヨナがそんな風に問うと、イザベラは、

「……可能性はないとは言い難いですけれど、ラディウスのガジェットなしで、ここまで来ようとしたら至難の業ですわよ? もしここに誘導して罠に嵌めるつもりだというのなら、それはもう罠を張る場所を間違えすぎているとしか言いようがありませんわね」

 と答えて、肩をすくめてみせた。

 

「そもそも、ここの情報はどうやって外に漏れたのでしょうね……? 皇帝の人嫌いっぷりを考えたら、漏れる要素が無いように思えるのですが……」

「そうですね。ベルドフレイムが他人を信用せず、周囲に人間をほとんど配していない以上、漏らせる人間は限られます。情報を漏らせばすぐにバレそうなものです」

 ヨナの発言に頷きながら、そう口にするリゼリッタ。

 そんなふたりに対し、

「どうやら『情報を漏らした誰かさん』は、同時に複数の人間に対して情報を渡した上で、さらにその情報を複数の人間に流すよう指示していたようですわね。その結果、情報元が『複数ある』という状態になっていましたわ」

 と、答えるイザベラ。

 

「なるほど……。情報の出処を多数作る事で、『大本の出処』がどこなのか、簡単には判別出来ないようにしている……というわけですか」

 そう言って納得顔のリゼリッタに、イザベラは腕を組みながら、

「そういう事ですわね。しかも、既に『かなりの数』になっていますのよ。なので、もはやベルドフレイムの周囲にいる人間が漏らしたものかどうかすらも、分からない状態ですわ。無論それだけではなく、情報の内容にも微妙に差を付けていたりして、複数の情報を統合しないと正確な所が把握出来ないようにもなっていましたわ」

 なんて事をため息混じりに言って、首を横に振ってみせる。

 

「それって、『複数人がそれぞれ知っている情報を漏らしている』……という偽装ですか?」

「……その可能性もありますし、実際に複数人が漏らしている可能性もありますし、そのどちらかに偽装していると思わせる偽装……の可能性もありますわね。つまり、なんとも言えない状態ですわ」

 ヨナの問いかけにイザベラがそう答えると、ヨナに代わるようにしてリゼリッタが、

「なるほど、要するに『どれも普通に考えられる』……と思わせてきているわけですか。『情報を漏らした誰かさん』は、相当なキレ者ですね」

 と言って顎に手を当てる。

 

「まあ、こんな所の情報を外に流せる時点でそうでしょうね」

「ですわね。少なくとも、その『誰かさん』と情報戦――諜報戦で真っ向からやり合うのだけは避けたいですわ……。というか、なんでそんな人物が諜報部にいないのかが不思議ですわ……」

 ヨナの言葉に頷きつつ、そんな風に言うイザベラに、

「諜報部よりも重要な立ち位置……ベルドフレイムの『側近』とかなのではないでしょうか」

 という推測を口にするリゼリッタ。

 

「その可能性はゼロではないですけれど、もしそうだとしたら、側近に情報を漏らされているという事になりますわね」

 そう言ったイザベラに対してヨナが、

「それはなんというか、色々と『ヤバい』状態ですね」

 と、『ヤバい』の所を強調しながら返事をする。

 

「たしかにそうですね。ですが、話を聞く限りではそのくらいの人物でなければ、情報を漏らす――外に流すというのは難しいようにも感じますが……」

「そうなんですのよね……並の人間に出来るような芸当ではないんですのよねぇ……」

 リゼリッタの言葉に、イザベラはため息をつきながらそう返す。

 

「つまり、『側近』の可能性もある……と。でも、アルベリヒ並に皇帝に信頼されている人間がいるという話は、聞いた事がありませんが……」

 そんな風にヨナが言うと、リゼリッタがそれに頷いて同意の言葉を口にする。

「そうですね。噂すら耳にした事がありません」

 

「まさか、アルベリヒが流しているなんて事は……」

「……さすがにそれはないんじゃありません? たしかにアルベリヒならば、配下の者たちを使う事で、情報を流すのも偽装工作をするのも簡単ですけれど……」

 ヨナの推測にそう返しつつも、否定はしきれないイザベラ。

 

 そうこうしている内に、双蛇の反転塔の入口が見えてきたので、3人は情報の出処に関する思考と会話を中断し、双蛇の反転塔の様子を窺う。

 

「どうやら見張りの姿はなさそうですわね。……にしても、相変わらず妙な建物ですわねぇ……」

「はい、最初見た時は驚きました。巨大な地下空洞に作られた『逆さまの塔』……まさに『反転塔』という名の通りですし」

 やれやれと首を横に振るイザベラに続き、そんな風に言うリゼリッタ。

 

「ですわねぇ。こちらは古代の遺跡ですけれど、どうして古の時代の人間は、このような構造にしたのやら……ですわ」

「重力を反転させていた……昔は上が下で、下が上だった……とか?」

「そんな馬鹿な……と言いたい所ですけれど、重力の魔法を研究していたガーディマという国の存在を考えると、否定は出来ませんわねぇ……」

 ヨナの推測に対してそんな風に返しつつ、イザベラは――

 

 ――実際、向こうの世界に現存しているガーディマ遺跡は、重力異常によって周囲の地面ごと浮いていますしねぇ……

 

 と、心の中で付け加えたのだった。

上下が逆さまになっている塔……ファンタジー世界だとたまにある名物ですね(何)

そして、何故か逆さまになっている理由が謎のままだったりする事が多かったりします。

……まあ、現実にも逆さまのピラミッドみたいな建物はありますけどね……


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、6月23日(日)の想定です!

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