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第1話 皇帝宮殿。イザベラたちの遭遇。

「ま、なにはともあれ戦力としては申し分ないな。それなら予定通り――」

 アルフォンスがそう口にした所で、唐突にラディウスたちの視界が切り替わった。

 

「って、どうしてこっちに……? もしかして、イザベラかカチュア?」

 セシリアがそんな風に問いかけながら、イザベラとカチュアを交互に見る。

 すると、

「いえ、私ではありませんです」

「私の方ですわ。皆に用……というか、伝える事がありますの」

 と、カチュアとイザベラが続けて返事をした。

 

「一体なにがあったのですか? です」

 カチュアがイザベラに問いかけると、

「皇帝宮殿深奥――『双蛇(そうじゃ)反転塔(はんてんとう)』で『皇帝』と遭遇いたしましたわ。……いえ、偽物の『皇帝』と言うべきですわね」

 なんて事を言ってきた。

 

「偽物の皇帝? 一体どういう事だ?」

 ラディウスが首を傾げながら問うと、イザベラはそれに対して、

「そのままの意味ですわ。とりあえず、順を追って話をしますわね」

 と告げて、ここまでの事を話し始めた。

 

                    ◆


 ――少し前……皇帝宮殿・黒鉄回廊(くろがねかいろう)――

  

「まさか、ヨナさんとがあなたの部下だとは……。想定外です。よもや皇帝直属の諜報部隊の人間が、皇帝宮殿の深奥を探っているだなんて夢にも思っていませんでしたし」

 リゼリッタがため息混じりにそう言って首を横に振ってみせると、

「申し訳ありません……。その辺りを説明すると、信用されないのではないかと思いまして……」

 と、申し訳なさそうな顔で、そんな返事をするヨナ。

 

「それはまあ……たしかにそうですね……」

 リゼリッタが頬に手を当てながら呟くようにそう言うと、今度はイザベラが、

「とはいえ、ヨナがレヴァルタの地下組織の人間であるというのもまた事実なのですけれどね。いえ、私もそうなのですけれど」

 なんて事を口にした。

 

「つまり、あなたは皇帝直属の諜報部隊の人間であり、レヴァルタの地下組織の人間でもあり、幻軍の将でもある……と? とんでもないですね」

 呆れ気味に言うリゼリッタに対し、

「そうしなければならなかったから、そうしただけの事ですわ」

 と返して肩をすくめてみせるイザベラ。

 

「幻軍……というのは良く分かりませんが、レヴァルタの民が彼の地で今なお生き延びられているのは、お嬢さ……イザベラ様のお陰です。――彼の地は、いまだに皇帝に見張られています。民を他の地に逃がしたくとも逃がせないのが現状ですから」

「……いまだに見張られている……ですか?」

 ヨナの発言に、リゼリッタが顎に手を当てながら問う。

 すると、ヨナに代わってイザベラが、

「皇帝はずっと怪しんでいましたわ。住人は本当に『レヴァルタを占拠した者たち』によって虐殺されたのか……と」

 と、そんな風に答えた。

 

「ああ……。そう言えば、あなたはレヴァルタ――というか、あなたの『家』をハメめて(おとし)めようとした者たちを逆にハメ返して、レヴァルタをその者たちの棺桶としたんでしたね」

「ええ。正直、連中にはもったいなさすぎる棺桶だと思っていますわ。……もう少しショボい棺桶で済む方法――要するに、もっとスマートにカタをつけられる手段があったのではないかと、今でも時々考えてしまうくらいですわね」

 イザベラがリゼリッタに対してそう返した所で、

「……正直、あの状況下では、あれが最良だったと私は思います。最早取れる手段は限られていましたし…、実際我々を含め、レヴァルタの者たちは、皆生き残る事が出来ましたから。ただ……破壊したレヴァルタの街から、住人が虐殺された痕跡がまったくない事に対して、皇帝が不信感を抱いたのは少し誤算でしたが……」

 と、そんな風に続くヨナ。

 

「色々誤魔化しては来ましたけれど、そろそろ限界といえば限界ですわね」

「……そうですね。誤魔化す度にイザベラ様が皇帝に殴る蹴るの暴行を受ける様を見続けるのも、そろそろ我慢の限界というものですしね」

 ヨナはイザベラの発言に対し、そう口にしながらギュッとスカートの裾を握る。

 

「え? そっちの限界ですの……?」

「当然です! 本来であれば、私が身代わりにならなければならない所だというのに、それが出来ないというのは破壊されていくレヴァルタを眺めていた時と同じくらいの悔しさと怒りなんですよ。それに……そもそもの話ですが、イザベラ様、わざと皇帝を怒らせてますよね……?」

「それは当然ですわ。あれこれ言葉を弄するよりも、怒らせて気が済むまで殴らせる方が楽ですもの。あの程度で誤魔化されてくれるのなら安いものですわ。傷などリジュヴァネートで簡単に治癒出来ますもの」

 なんて事を軽い口調で言った後、「でも……」とため息をつくイザベラ。

 

「でも? どうかしたのですか? まさか何か治せない傷でも……?」

 と、不安と緊張の面持ちでヨナが問う。

 しかしイザベラはというと、

「……ラディ――ラディウスが『レストア』で完全治癒させてしまう事を思い出したら、なんだか無性に悔しくなってきましたわ……。改造されているとはいえ、ただのレストアですのよ? レ・ス・ト・ア! リジュヴァネートとは比べ物にならないくらい『下位の魔法』なのに、リジュヴァネートを超えた性能を持つとか意味がわかりませんわ……っ」

 と、そんな風に返事をして更にため息をついてみせた。

 

「あ、そっちですか……」

 あまりの返答に拍子抜けしたのか、鳩が豆鉄砲を食らったような顔というのが似合いそうな、そんな表情でヨナがそう呟く。

 それを見ていたリゼリッタは、イザベラが話の流れを『冗談』で終わらせようとしているのだろうと考え、

「まあ、その、あの方は次元が違うので……。イザベラさんが凄いのはわかりますが、竜と『ただの魔物』との差をひっくり返すのは不可能というものです」

 なんていう言葉を口にした。

 『ただの魔物』の所を強調してイザベラへと視線を向けながら。

 

「そうですわね……って、なんだか凄く(けな)されているような気がするんですけれど?」

 ジトッとした目を向けてくるイザベラに対し、リゼリッタは真顔で、

「気のせいです」

 と答える。

 

「気のせいではないよ――」

「気のせいです」

「………………」

「………………」

 そんなやり取りを見ていたヨナは、

「え、ええっと……だ、大丈夫ですよ。イザベラ様の凄い所は他にもありますからっ!」

 なんていうフォローの言葉を口にした。


「……それ、ガジェット――魔工技術ではラディウスに『及ばない』と言ってるのと同じような気がしますわよ……?」

「えっ? あっ! そ、そそっ、そんな事はありませんっ!」

 首を全力で横に振りながら否定してくるヨナを見ながら、やれやれと言わんばかりの表情で首を横に振ってから、

「……まあいいですわ。実際、私が文字通り『長い時間』をかけて生み出した、渾身の最高傑作であるグロース・インヒビションまで『短時間』で破ってきたりと、末恐ろしい事をしてきますし……」

 と、そんな風に言った。

 更に、それと同時にヨナに分からないよう、リゼリッタに対して小さく手で『ありがとう』を示す。

 

「――それにしても……随分と不用心ですわね。こうもあっさり深奥に入れてしまうだなんて。そこかしこにセキュリティガジェットらしきものがありますけれど、どれも稼働している様子はありませんし、何のために設置されているのやら……ですわ」

 イザベラが肩をすくめながらそう口にすると、

「いえ、それらのセキュリティガジェットは普通は稼働しているんですよ」

 なんて返事をするヨナ。

 

「そうですの? ではどうして今日は……?」

 首を傾げるイザベラに対して今度はリゼリッタが、

「それは、ラディウス様の作ったこのガジェットで、全て無効化――正確に言うと、強制的にスリープ状態にされているからです」

 なんて答えながら、ラディウス製のガジェットをイザベラに見せる。

 

 それを聞いたイザベラはというと――

「……今なんと?」

 リゼリッタの言葉に理解が追いつかず、そんな馬鹿なと言わんばかりの表情で、それだけ口にするのが精一杯だった。


「ですから、ラディウス様の作ったこのガジェットで、全て強制的にスリープ状態にしているんですよ。この辺り一帯にあるセキュリティガジェットの全てを」

 再びそう告げてくるリゼリッタに対して、イザベラは何か言葉を返すそうとするも、あまりの驚きに返す言葉が何も出て来ず、ただただ口をパクパクさせる事しか出来なかった――

話があまりにも長くなってしまったので大幅にカットした所、イザベラたち側の話が大半で、ラディウスたち側の話はほんの少しという事態に……

これなら前回の話に含めてしまった方が良かった気がします……

カットしたのにも関わらず、結局かなりの長さになってしまいましたし……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、6月9日(日)の想定です!


※追記

場所の名前が誤っていたので修正しました。

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