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第2話 妖姫と鎖。アルベリヒの所在。

「ところで、この後はどうするのです? 妖姫様を連れて脱出するとなると、どう脱出するか考える必要があるのです」

「そうね。この鎖を破壊したら、もう連れて行かないと駄目だと思うし、ルートとかを今のうちに決めておいた方がいいんじゃないかしらね」

 メルメメルアとルーナがそんな風に言うと、

「ラディウス様が見つけた私の剣、あれを無窮の混沌の一件で、ゼグナム解放戦線の方から受け取っていて、それをそのまま所持していますので、一応戦う事は出来ますよ」

 と、妖姫。

 

「所持? どこに?」

 セシリアが首を傾げながらそう問うと、

「向こう側の世界の私……とでも言えばいいでしょうか? 封印状態になっている『私』が保管している感じです」

 なんて返す妖姫。


「あ、なるほど……って、封印!?」

「そういう状態になっていたのか……。始めて知ったな」

「すいません……今までその事を伝える機会がなかったもので……」

 驚くセシリアとラディウスに対し、妖姫が少し申し訳無さそうに言う。


「ああ、いや、気にしないでくれ。再びこうして相まみえるまで、これほど間が空くとは思ってもいなかったから仕方がない。だがまあ……剣が使えるというのなら、戦力としては数えられるな」

「そうね。ある程度は強引に突破する事も出来るわね」

「となると、どこからどう脱出するかのルートが重要です?」

「そうだな。まずは帝都に入り込んでいるイザベラから情報を得るのがよさそうだ」

 ラディウスはそんな風に言いながら、向こう側の世界を思い浮かべる。

 

 そして、向こうの世界に移動すると同時にイザベラが、

「こっちに来たという事は、何か進展があった感じですの?」

 と、そんな問いの言葉を投げかけてきた。

 

 ラディウスたちはそれに対して、ここまでの流れをイザベラと、その場に同じくいるクレリテに説明。

 それを聞いたクレリテが、まず状況を告げてきた。

「なるほどなのだわ。とりあえずこっちは、ディーゲルさんを拠点内まで連れて行くのに成功したのだわ。アルベリヒの配下にもバレていないのは確認済みなのだわ」

 

「それは良かったのです。これでようやく一安心というものなのです」

「そうだな。聖木の館から娘さんを救出して会わせるという一連の流れをようやく達成出来た感じだ」

「なんというか、思ったよりも長くかかってしまった気がするのです……」

「まあ、そこは仕方がないな……。途中で色々あったし」

 メルメメルアとラディウスがそんな風に話していると、

「なんにせよ、ディーゲルさんの協力を得られたのだわ。アルが帝都内で本格的に動き始めたのだわ」

 と、クレリテ。

 

「私の情報をアテにしているようですけれど、私はアルベリヒの動きを探る事を優先していて、残念ながら帝都の状況までは把握しきれていませんわね……。ただ、どうやらアルベリヒは帝都にはいないようですわ」

「いない? それなら、展開しているアルベリヒの配下たちはどこからの指示で動いているの?」

 イザベラの報告に、セシリアが首を傾げながら問うと、

「長距離での会話を可能とする古の時代のガジェットを使っているようですわね」

 と、イザベラはそんな風に言った。

 

「ああ、なるほどね。アルベリヒがそれを使って遠隔で指示を出していたってわけだね」

「その通りですわ。そして、なんとなく配下どもの動きがワンテンポ遅れているように感じていましたけれど……どうやら、リアルタイムに状況を把握する事が出来ていない為……だったようですわね」

 セシリアに対して頷きながらイザベラがそう言うと、

「それって、今の皇帝宮殿には厄介な人物がいないという事になるのだわ。今までアルベリヒを警戒して踏み込めなかった宮殿の深奥に踏み込むチャンスなのだわ」

 なんて事を口にするクレリテ。

 

 そしてそのまま、

「皇帝宮殿の深奥を探るべく、リゼが動き出したのだわ」

 と続けざまに言ってくる。

 

 流れるように言葉を続けているが、実際にはクレリテは一度向こうの世界へと移動して、アルフォンスたちと話をしていたりする。

 

「なら、合流した方が色々と都合が良さそうですわね」

「たしかにその通りなのだわ。――第3古代遺物保管庫に来るといいのだわ」

「わかりましたわ。メイドとして入り込んでいるヨナと一緒に合流いたしますわ」

 クレリテの指示に頷いてみせつつ、そんな事を告げるイザベラ。

 

「あ、そのヨナって人なら、既にリゼと一緒にいるらしいのだわ。リゼが宮殿内であれこれ調べて回っていたら、その人の方から接触してきて、それから共に動いているそうなのだわ」

「……宮殿内に良い協力者が出来たと前に報告されましたけれど、あなたの所の人間――リゼリッタだったんですのね……」

 クレリテの説明を聞いたイザベラが肩をすくめながらそんな風に言う。

 

「まあ、そういう事になるのだわ。それと……」

 クレリテはそう言いながらラディウスたちの方へと顔を向けると、

「監獄の下の水路から帝都へ出た所にアルが待っているそうなのだわ。妖姫を連れてそっちへ向かうといいのだわ。帝都からの脱出ルートはアルが用意しているそうなのだわ」

 と、告げた。

 

「なるほど、あそこか。わかった」

 ラディウスは短くそう返事をすると、

「それなら、私たちはこのまま水路から帝都へ出ればいいという事になるわね」

「うん。ささっと鎖を破壊して、ささっと脱出しちゃうのが良さそうだね」

 なんて事をルーナとセシリアが口にする。

 

「ささっと破壊……。あの鎖――グロース・インヒビションを生み出した側としては、なんだか複雑な気分ですわねぇ……」

 肩をすくめながら盛大にため息をつきつつ、そんな事を呟くイザベラ。

 そのイザベラに対し、

「まあ……その、イザベラさんの気持ちも分からなくはないのです。でも、ラディウスさんが凄すぎるだけなので、諦めて欲しいのです」

 などと言うメルメメルア。

 

「……それ、慰めに見せかけた追撃ですわよ……?」

 イザベラは更に盛大にため息をつきながらそう返すと、

「まあいいですわ。次はもっと強力なものを生み出すだけですのよ」

 と腕を組みつつ口にして、微笑んでみせた。

 

「それはまた厄介な代物になりそうだな」

 ラディウスはやれやれと首を横に振りながらそう言うと、一度言葉を切ってその場にいる皆を見回してから、

「ま、とにかくやる事は決まったし、向こうへ戻るとするか」

 という続きの言葉を紡ぐ。

 

 そしてそのまま皆が頷いたのを確認するなり、向こう側の世界――監獄へと戻り、

「とりあえず、この鎖――グロース・インヒビションを破壊するとしよう」

 と即座に告げた。

 

 ――ようやく、これを破壊出来る日が来たな……

 

 などと思いながら、これを破壊する為に作り上げたガジェットをストレージから取り出すと、それを起動させるラディウスだった。

本当、『鎖を破壊する時』に到達するまで、これほどの時がかかるとは思ってもいませんでした……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、5月26日(日)の想定です!

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