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第6話 ノースロードエンド。通路の先へ。

「えっ!? ど、どういう事!?」

 驚くセシリアに、

「……消し去ると同時に幻影を展開したのか」

 と、そんな風に告げるラディウス。

 

「はいです。これで穴を開けつつも、その穴を隠す事が出来るのです」

「なるほどねぇ……。これ、追われている時とかにも使えるね」

 セシリアがメルメメルアの言葉に頷きつつ、壁を眺めてそう口にする。

 

「これ、一体どういう仕組みなの?」

「シュラウデッド・ダミングスアスという魔法の術式をベースに、ルーナさんがディーゲルさんに化けるのに使った魔法の術式を組み合わせたものを、狭い範囲に無音で発動させられるよう調整した感じなのです」

 問うルーナに対してそんな説明を返すメルメメルア。

 

「なんつーか……全員色々とぶっとんでんな……。その『術式のベース』とやらのシュラウ……なんちゃらって魔法すら、俺は知らねぇしな」

 クレドがため息混じりに言って、やれやれと首を横に振ってみせる。

 そして、

「だがまあ……これで奴らがここに踏み込んできたとしても、この先に行った事がバレる可能性は低くなったな」

 と、腰に手を当てながらそう言葉を続け、ニヤッとした。

 

「うん、たしかにそうだね。それじゃ、奴らが来る前に奥へ行くとしようか」

 そんな風に告げるセシリア。

 それに対してラディウスは頷きつつ「ああそうだな」と返すと、クレドの方へと顔を向け、

「クレドさんはどうする感じですか?」

 という問いの言葉を投げかけた。

 

「俺はここまでだ。もし奴らが踏み込んできたら、お帰り願わねぇといけねぇしな。その役割を担う者も必要だろ?」

「たしかにそうなのです。でも、ひとりで大丈夫なのです?」

 クレドの言葉に納得しつつも、そこが気になり問いかけるメルメメルア。

 

「なーに、この後ウチのモンが来る事になってっから心配ねぇさ。『俺たちがここにいる理由』も既に考え済みだしな」

「そうだったですか。であれば、安心して奥に行けるのです」

 メルメメルアがクレドの説明に、今度こそ完全に納得した表情を見せながらそう返すと、

「それじゃ、行くとしようか」

 とセシリアが言い、先頭に立って通路へと足を踏み入れていく。

 

 メルメメルアとルーナがそれに続き、一番最後となったラディウスもまた、クレドに対してお礼を述べると、通路へと足を踏み入れていった。

 

 それを見送ったクレドは、1階へと戻りつつ、

「――あれが『可能性』を持つ者たちか。なるほど、たしかにあれなら……」

 なんて事を顎に手を当てながら呟いた。

 そして、更にそこから一呼吸置くと、

「さて、こっちも準備するとすっかね」

 なんて事を誰にともなく口にすると、肩をすくめてみせるのだった。

 

                    ◆

 

「さっきまでこの下は水の底だったみたいね……」

 途中から水で濡れている階段を見ながら、ルーナがそんな風に呟く。

 それに対して、

「そうだね。まだ排水しきれてないのかな? このまま降りたら、確実に靴が水に浸かりそう」

 と、セシリア。

 

「たしかに、底の方にまだ水が残っているのです」

「防水……だとちょっと厳しいな。浮遊して進むか」

 メルメメルアに続く形でそう言って、即座に浮遊魔法を発動させるラディウス。

 

「案外、排水しなくても、この浮遊魔法だけで大丈夫だったりするかもね……」

「さすがにそれはないんじゃないかしらね。更に下に続いている階段とかもあると思うし……」

 セシリアに対し、ルーナが腕を組みながらそんな風に返した所で、

「ここ、上がったり下がったり、かなり入り組んでるからなぁ……」

 と、ラディウスが向こう側の世界で、前に来た時の事を思い出しながら、ため息混じりに言う。

 

「なんでそんなに入り組んだ構造になってるんだろう?」

「おそらく……というか、ここが『水源』の施設であったらという仮定での話になるですが、最初はシンプルな構造だったのだと思うのです。でも、あの頃は今よりも都市に人が集中しがちだった為、大きな都市では常に拡張工事が行われていたのです。なので、そうして拡張――増設された『新しい区画』の為の上下水道も新しく作る必要があったと思うのです」

 セシリアの疑問に対してメルメメルアがそんな推測を口にすると、セシリアはそこで理解し、

「あー、なるほど……。そうして新しく上下水道――水路がどんどん作られていった結果、分岐が凄まじく増えてしまったってわけだね」

 と、そんな事を口にした。

 

「はいです。そういう事なのだろうと私は考えているです。まあ……入り組んでるとはいえ、上下水道として作られている以上、『行き止まり』や『ループ』はほとんどないと思うです。そんなものがあったら、そこに色々と溜まってしまうですし……」

 セシリアに対して頷きながらそう口にすると、今度はルーナが言葉を紡ぐ。

「たしかにそうね……。となると、入り組んで入るけれど、宮殿のある方角へ向かって伸びている通路を進んでいけば、自ずと宮殿の下を流れる水路に辿り着く……のかしらね?」

 

「多分、辿り着くのではないかと思うです」

「そう言えば、俺も基本的には屋敷のある方へ向かって進んでいったっけな……。まあ、途中で水没してて、まっすぐに進めなかった所も結構あったが」

 メルメメルアの言葉に続くようにして、ラディウスがそう言うと、

「こっちは排水がされているし、一直線に行けそう」

 と、セシリア。

 

「ああ。とりあえずルーナの言った通り、宮殿のある方角――正確に言うと、監獄のある方へ向かって進んで行ってみるとしよう」

 そう告げて、セシリアと代わる形で先頭を進んでいくラディウス。

 

 そして、入り組んだ通路を歩く事、約半刻――ー

 

「ん? この排水されていない水路……壁に何かカードみたいなのが貼られているな……」

「ZLFって書かれてるっぽいよ?」

「私の『目』では、目印の用途があるようなのです」

 ラディウスの発言に対し、カードを見ながらそう返すセシリアとメルメメルア。

 

 そのふたりの発言を聞いたルーナが、

「ZLF……。うーん……ゼグナム解放戦線の事じゃないかしら? ほら、こっち側って濡れている所がないから、『排水』しなくても、最初から水がなかったようだし」

 と、そんな推測をする。


「なるほど、たしかにそうだな。するとここにはあの隠し通路を使わずに来られるってわけか」

「もう帝都の中に入り込んでいるという事になるですかね?」

「そういう事になるんじゃないか? まあ、クレリテに聞いてみるとしようか」

 メルメメルアの疑問に対してそう返事をしながら、ラディウスは向こうの世界へと移動した。

 

「ねぇクレリテ、ZLFって書かれたカードが壁に貼られていただけど、あれってゼグナム解放戦線の目印でいいの?」

 ラディウスに代わるようにしてセシリアがそう問いかけると、

「その通りなのだわ。アルがその先に妖姫の囚われている牢屋がある事を伝える為に設置したのだわ」

 と、そんな風に答えるクレリテ。

 

「ああ、やっぱりそうなのか。わかった、行ってみる。浮遊魔法を使えば問題なく進めるしな」

 ラディウスはそう返すと再び世界を移動。

 ZLFと記されたカードが壁に貼られている水路を進むべく、浮遊魔法の組み込まれているガジェットをストレージから取り出すのだった――

本来の想定ではもうちょっと先まで行くつもりだったのですが……

まあ、思ったよりも会話の総量が増えてしまったので、一旦ここで区切る事にしました。

というわけで、妖姫との再会は次回に持ち越しです。


ともあれ、そんなわけでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、5月19日(日)の想定です!

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