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第3話 ノースロードエンド。銀の商工会。

「ん? 待った。あそこに感知ガジェットが仕掛けられているな」

 ラディウスがそんな風に言って皆を静止させながら、軒先にひっそりと設置されているガジェットへと顔を向ける。

 

 ルーナが立ち止まってそちらへと視線を向けつつ、

「――あれ、なんだか懐かしいというか……ヴィンスレイドの屋敷の周辺に仕掛けられていた奴に似ているわね。アルベリヒの配下が仕掛けた物なのかしら?」

 なんて事を口にした。

 それに対してメルメメルアは、

「いえ……私の『眼』によると、どうやらあれは、このノースロードエンドを取り仕切っている『銀の商工会』が、監視用に設置したもののようなのです。感知されても問題はないと思うですが……どうするです?」

 と、そのガジェットについて答えながら、後方のラディウスたちを見る。

 

「その『銀の商工会』っていうのと、アルベリヒとの関係性ってどんな感じなの? 協力している感じ? それとも敵対している感じ?」

「ここにはアルベリヒのもとから逃げてきた人が匿われていたりするので、ほぼほぼ『敵対』に近い状態だと言っていいのです。アルベリヒがノースロードエンド内に大っぴらに配下を展開していないのは、下手に展開すれば抗争に発展しかねないような状況、状態にあるからだと思うのです」

 セシリアの問いかけに対し、メルメメルアがそんな風に答える。

 

「なるほど……。うーん……クレリテに聞いてみる?」

「あ、そうだな。そうしよう」

 セシリアに対してラディウスはそう返すと、すぐに向こう側の世界へと移動。

 すぐにクレリテに話してみる。

 

 するとクレリテは即座に、

「テオドールが『話を付けておく』から、そのまま敢えて感知されるといいのだわ。他にもあちこちに設置されているけど、それも全部感知されて構わないのだわ」

 と告げてきた。

 

 ならばとラディウスたちは再び世界を移動し、見えている感知ガジェットに敢えて捕捉されるように進む。

 そして、そこから商館の裏手まで移動する間に、3ヶ所ほど同じ感知ガジェットが仕掛けられていたが、全て敢えて捕捉されるようにした。

 

「――あ、商館が見えてきたのです」

 メルメメルアがそう告げた通り、曲がり角を曲がった所で、一際大きな貴族の屋敷を思わせる建物が道の先に建っているのがラディウスたちの目に入る。

 

「マリス・ディテクターの反応からすると、あの商館の表側を見張っていると思しきアルベリヒの配下がいるね。しかも離れた場所からそれぞれひとりずつ」

「裏口――勝手口があったはずなのです。このままそこへ向かうのです」

 セシリアの警告に対してメルメメルアはそんな風に返すと、ラディウスたちを商館の裏側にある勝手口へと案内する。

 

「……鍵がかかっているわね。もっとも、魔法が付与されている形跡はないから、単純に内側から閉ざされているだけっぽいけど」

 勝手口のドアを確認しつつ、そう告げるルーナに続くようにして、

「どうする? 剣で壊して入る?」

 と言ってラディウスの方を見るセシリア。

 

「壊すのは最後の手段だな。奴らが集音系の探知ガジェットを使っていた場合、バレかねないし」

 ラディウスがマリス・ディテクターでアルベリヒの配下の位置を確認しつつ、そう返す。

 

「だとしたら、他に侵入出来そうな場所がないか、探してみるです?」

「ああそうだな。まずはそうするのがいい気がする」

 メルメメルアに対してラディウスがそんな風に返した直後、

「ん? 気配? マリス・ディテクターには引っかからないから敵ではない気もするけど……」

 と言いながらも、念の為すぐに抜剣出来る構えを取るセシリア。

 

 すると程なくしてガチャっという音と共に、勝手口が内側から開かれ、「おう、来たな」という野太い声と共に、壮年の男性が姿を現す。

 

「ええっと……あなたは?」

 ラディウスがそう問いかけると、

「俺はこのノースロードエンドを取り仕切っている『銀の商工会』で、纏め役みてぇな事をやってるクレドってモンだ。テオドール殿とデーヴィト殿から話は聞いてるぜ」

 と、そう返事をする壮年の男性――クレド。

 そして、

「ま、とりあえず中に入ってくれや。奴らに見つかる前にな」

 と、告げてきた。

 

 ラディウスたちはそれに対して頷くと、速やかに商館の中へと足を踏み入れる。

 

「クレリテの言っていた『話を付けておく』ってこういう事だったんだね」

「どうやらそのようだな」

 セシリアに対してラディウスが頷きながらそう返す。

 そして、そのラディウスに続くようにして、

「クレドさんが、この商館に隠されている通路を知っている感じなのです?」

 と、メルメメルアがクレドに対し、問いの言葉を投げかける。

 

「完全に把握しているわけじゃねぇが、商工会に残されていた古い記録を調べたら、それについての『情報』が残っていたんでな。ある程度は分かる」

 クレドはそこまで言った所で一度言葉を切ると、ため息をついてから、

「ただ……ふたつほど問題がある」

 と、そんな風に言葉を続けた。


「と言いますと?」

「まずひとつめ、一番重要な『入口』の場所が記されていなくてな。一応、大まかな場所は分かってんだが……」

 首を傾げながら問うルーナにそう答えるクレド。

 すると、それを聞いていたセシリアが、

「まあ、ある程度絞られているならなんとか出来そうではあるけどね。隠されたものを探る技術は色々あるし……ね」

 なんて事を呟くように言ってから、クレドの方を見て問う。

「それで、ふたつめというのは何ですか?」


「その『入口』の仕掛けを作動させる為の『ガジェット』って奴があるんだが、今さっきザッと見て回った所、古い記録に書かれていた内容と比べてふたつ程足りていなかったんだよ」

「なるほど……。要するに、このままだと『入口』の仕掛けを起動する事が出来ない……という事ですね」

 クレドの説明を聞いたルーナがそんな風に言うと、クレドは「ああ、そういう事だ」と肯定しながら頷いてみせる。

 

「入口はガジェット――魔法で開く仕組みなのですか。なんというか、思ったよりも大掛かりな仕掛けなのです」

「たしかにそうだな。もっとも、魔法ならば構造さえ分かればどうにか出来るとは思うが」

 ラディウスはメルメメルアに対して頷きながらそう言うと、そこで一度言葉を切り、クレドの方へと顔を向けてから、

「クレドさん、とりあえずその場所に案内して貰えますか?」

 という問いの言葉を投げかけた。

 

「おう、もちろんだぜ。しっかし……デーヴィト殿にこの事を話したら、『自分よりも優秀な人間がいるから何の問題ない』なんて言われたんだが……なるほど、たしかにその通りだわ」

「はいです。ラディウスさんなら余裕なのです」

 クレドの発言に対し、メルメメルアが真っ先にそう返事をする。

 

 それに対してルーナとセシリアは、

「どうしてメルが得意げなのよ……」

「まあ、いつもの事だよ。うん」

 と、そんな事を口にしつつ、やれやれと言わんばかりの表情をするのだった。

思ったよりも長くなりましたが、他に区切れそうな場所がなかったもので……

(せめて、商館の中に入るくらいまでは進めておきたいというのも、あったりします……)


とまあそんな所でまた次回!

そして、次の更新ですが……予定通り来週の木曜日だと遠すぎる事もあり、次の話がそこそこ出来ているので、平時よりも1日前倒して水曜日にしようかと思っています。


というわけで、次の更新は5月8日(水)を想定しています!

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