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第9話 ディーゲルとアルベリヒ。迎撃と精神制御。

「おっと、前後に3台ずつか」

 マリス・ディテクターの反応を確認しながら、そう口にするラディウス。

 セシリアとメルメメルアの懸念は、幸いというべきか払拭された形だ。

 

「2台は離れているね。全部返り討ちに合う可能性を考えてきたのかな?」

「あるいは、もう少し行くとそれなりの人――というかクルマが行き交う、アルファルド街道にぶつかるのです。そこで交戦になるのは回避しようと考えたのかもしれないのです」

 セシリアの言葉に、メルメメルアは別の可能性――推測を口にする。

 

「あー、たしかに」

「となると……前方のが厄介だな。おそらく道を塞ぐのが目的だろうし」

 セシリアに続くようにしてラディウスがそう言うと、セシリアは、

「……聖剣の最大出力で消し飛ばしちゃうとか?」

 なんて返事をした。

 

「それはさすがになぁ……。というか、さっきはまだ人やクルマのいない場所だったからいいが、クルマを消し飛ばす程の出力だと射程も長いから、アルファルド街道だったか? その辺りまで到達してしまって危険だ」

「巻き込んでしまってはまずいのです」

「うーん、たしかに……。高火力すぎるがゆえの問題だねぇ……」

「でも、そうなると威力の低い攻撃をするしかないけど、そうすると破壊した時に確実に道を塞ぐよねぇ……」

「はいです。どうにかして最低でもクルマ1台が通れる隙間を作る必要があるのです」

 ラディウスたちのそんなやり取りを聞いていたディーゲルが、

「……なにやら、纏めて倒す事が前提になっているようだが……1台ずつ無力化していけば良いのではないか……?」

 と、ちょっと呆れ気味に、腕を組みながら呟くように告げた。

 

「あっ。た、たしかに」

「全部一気に倒すつもりでいたのです……」

 ハッとなったセシリアとメルメメルアがそんな風に口にすると、

「――これこそまさに、高火力すぎるがゆえの問題だな……。揃いも揃って思考のスタート地点が、普通におかしかったとしか言いようがない」

 なんて事を言って首を左右に軽く振ってみせるラディウス。

 

「だねぇ……」

「気をつけないと……なのです」

 そうふたりが口にした直後、脇道からクルマが続けて飛び出してきて、ラディウスたちの乗るクルマの前方を塞ぐように横に並んだ。

 

「おでましになったぞ」

「後ろからも来たのです!」

 ラディウスに続いて、後ろを確認しながら告げるメルメメルア。

 

「おおっと! いきなり一斉に攻撃してきたねっ!」

 セシリアがそんな風に言った通り、ラディウスたちの乗るクルマを挟み込むような形となった6台のクルマから、火球、氷柱、電撃、石礫、青い矢、漆黒の槍……などなど、一斉に様々な魔法が飛んでくる。

 無論、その程度では障壁を破る事は出来ないが、クルマの方にはそれなりに振動が届いた。

 

「このまま揺らされ続けるのはちょっと面倒だな」

「だねぇ。後ろ、一気にふっ飛ばしちゃって大丈夫かな? 下手に火力落としたら怪しまれると思うけど、どうだろう?」

「そうだな。後方は一気に倒して、前方は威力を落として1台ずつ潰すようにすれば、奴らは『纏めて倒す事は出来るが、道を塞ぐのを避ける為にわざと威力を落とした』と思ってくれるんじゃないか?」

 セシリアの問いかけにラディウスがそう返すと、セシリアとメルメメルアが、

「じゃあそうしよう」

「はいです。さっきと同じくいくのです」

 と、同時に返事をして窓を開ける。

 

 そして……先程と同じように一気に撃破した。

 

「う、うーん……。撃破はしたけど……なんというか、やられると分かっていて仕掛けてくるってのが、ちょっと怖いんだけど……」

 そんな風にセシリアが呟くと、

「――ここまでの奴らの動きを見ていたが……まるで『動作術式』で指定した通りに動く、『人形』の如きものであった。おそらく、アルベリヒによって既に精神制御されているのだろう。要するに『操り人形』と化してしまった状態だな」

 と、推測を述べるディーゲル。

 

「精神制御……。相変わらずロクでもないね」

 セシリアはそこまで口にした所で、「ん?」と小首を傾げ、

「……ヴィンスレイドが私を操っていたのも、精神制御の一種だと思うんだけど……あの時、ラディがそれを解除してくれた方法って効かないのかな?」

 なんていう疑問を投げかける。

 

「うーん……。こいつらは聖木の館の時と違って異形化していないっぽいし、根幹的な部分はそっちに似ているような気もしなくはないが……あれは精神制御っていうよりは、魂魄への浸食って感じだったからなぁ……。あの時使ったガジェット――リバースプロトコルでは解除出来ないと思うぞ。そもそも、あれは至近距離じゃないと使えないし」

「まあそうだよねぇ……」

「だが……そうだな、どういう反応を示すか試してみるのはありだな。――とりあえず、前方のクルマを1台仕留めてくれ。……破壊しないようにな」

 ラディウスがセシリアにそう返すと、セシリアは、

「あ、うん、了解!」

 と言って、前方のクルマの内の1台を連射しすぎない程度に銃撃して制御を失わせた。

 

 そして、その制御を失ったクルマが路肩の木に激突して動かなくなるのを確認したラディウスは、敢えて速度を落としてそちらへと近づく。

 

「リバースプロトコル!」

 ラディウスはセシリアを元に戻した時に使ったガジェットを使ってみるも、

「……距離的には問題ないが、駄目だな。まったく効果がない」

 と、すぐにそう口にした。

 

 何故まったく効果がないと判断したかというと、アルベリヒの配下たちが、動かなくなったクルマから外に出て、再び魔法で攻撃を仕掛けてきたからだ。

 

「うーん……。似ていても別物って事かぁ……」

 そんな風に言うセシリアに、ラディウスは思う。

 

 ――どうも古の時代の技術というのは、そこへ至る仕組みというか、プロセスが違うだけで、結果的に同じような性質でしかない、というのが多い気がするな……

 車輪の再開発という言葉があるが、まさにそんな感じだ。

 

 と。

『リバースプロトコル』が、恐ろしく久しぶりに登場です。

なにしろ序盤で使って以来、出番がまったくなかったですからね……

ふたつの世界が舞台で、各世界でそれぞれ違う事件(出来事)が展開していくという都合上、尺がほぼ倍になっているも同然なので、どうしても出番の間が空いてしまうという……

まあ、今更ながら無茶な構成にしたものだな……と。


っと、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月14日(日)の想定です!

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