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第8話 ディーゲルとアルベリヒ。オーバーブレイク。

「――で、それはそれとして……いきなり仕掛けてきたって事は、真っ黒って事でいいね」

 セシリアはそんな事を言いながらクルマの窓を開け、そこから身を乗り出して聖剣を構え……

「まあ、こんなもんかな?」

 と、口にしつつクルマと同じくらいの大きさ――太さのビームを放った。

 

 聖剣から放たれたビームは、相手に回避行動を取らせる暇を与える事なく直撃。

 爆音が一瞬響いたが、それすらも閃光にかき消され、文字通り『消し飛んだ』

 

「あれ? 思ったよりも脆い……。障壁を展開していたりは……しない?」

 窓を閉めながら、想定外だと言わんばかりの表情で呟くセシリアに対し、メルメメルアがそんな突っ込みをため息交じりに入れる。

「このクルマが特殊なだけで、普通のクルマは障壁を展開する改造とかしていないと思うのです。仮にしていたとしても、ラディウスさんの障壁ほど頑丈ではないのです。そんな高出力で撃つ必要はないのです」

 

「う、うーん……。これでも、一応出力は絞ったんだけどね……」

「あの凄まじい威力で『絞った』とは……。障壁といいソレといい、並の魔法――ガジェットではないな……」

 セシリアの発言を聞いたディーゲルが、驚きと呆れの入り混じった何とも言えない表情と声で呟くように言う。

 

「ディーゲルさんの『人形』もガジェットとしては、大分高度な気がしますが……」

「ですです。ソーサリータレットの原型とか作ったのはディーゲルさんなのです。あれも十分に並のガジェットではないのです」

 ラディウスとメルメメルアがそう口にすると、

「ソーサリータレットか……。あれは『人形』を扱う私としては外道も外道……。出来る事なら抹消したい代物だよ。なにしろあれは、勝手に人を殺す道具でしかないのだから」

 と、そんな風に返事をしつつ首を横に振るディーゲル。

 そして、一呼吸置いてから、

「だから……というわけではないが、あれの原型を作る時には、『敢えて不完全』にしてやったがね」

 などという言葉を紡ぎながら肩をすくめてみせた。

 

 それを聞いたセシリアが納得の表情で、

「なるほど……。それで動きが読みやすい……というか、決められた動きしかしていないような感じだったんだね。まあ、お陰で聖木の館で遭遇した時には破壊しやすかったけど」

 と言って、うんうんと首を縦に振った。

 

「あれ? ルーナさんがソーサリータレットの大群と遭遇して殲滅したのは知ってるですが、セシリアさんもあれと遭遇していたのです?」

「あ、うん。大した数じゃないけど、突入する時と制圧後にね」

 メルメメルアの問いかけに対し、そう答えるセシリア。

 それを聞いたラディウスが、

「制圧後というと……周辺警戒用の奴か。なんか暴走モードになっているとかで、遠隔操作による停止を受け付けなくなっていたから、安全確保のために駆逐したってのはザイオンとテオドールさんから聞いたが、あれに加わっていたのか」

 と、そんな風に言う。

 

「まあほら、私がメインで出来る事――得意な事って言ったら戦闘くらいというか……他の事やるとドジるし? そう考えたら、あの時に私がやれそうな事がそれくらいしかなかったからね」

「なるほどなのです。セシリアさんがゼグナム解放戦線の皆さんに妙に『隊長』として信頼されているのが、なんとなく分かった気がするのです」

 セシリアの発言に、メルメメルアがそう呟くように返事をした所で、

「っと、後ろから新手のお出ましだな」

 と言いながら、バックミラーに視線を向けるラディウス。

 

「一気に3台来たね」

「1台では一瞬にして消し飛ばされて終わりだと、そう考えたのではないです? だから、おそらく一気に纏めて突っ込んでくると思うのです」

 セシリアとメルメメルアがそんな風に言いながら、それぞれ左右の窓を開ける。

 

「こっち側の2台は纏めて私が破壊するのです。そっち側の1台はお任せなのです」

「え? 1台でいいの?」

「問題ないのです。同時に攻撃してしまうのです」

「りょーかーい。じゃあこれでいいかな?」

 クロスボウ型ガジェットを構えながらのメルメメルアの返答に対し、セシリアはそう返すと、聖剣の代わりにストレージから取り出した銃を構える。

 そして、それとほぼ同時に――


「ダブルショット! なのです!」

 と言い放ち、クロスボウ型ガジェットのトリガーを連続で引くメルメメルア。

 

 するとその直後、クロスボウ型ガジェットから青の光を纏ったボルトと赤の光を纏ったボルトが同時に連続で射出された。

 飛翔するボルトは途中で軌道を変え、青の光を纏ったボルトは道路の右寄りのクルマへ、赤の光を纏ったボルトは中央付近のクルマへ、それぞれ襲いかかる。

 

「うわぁ、なんか凄い」

 なんていう感嘆を口にしつつ、セシリアもまた銃のトリガーを連続で引いた。

 

 魔法弾が次々に発射され、残る1台のクルマへと殺到。

 

 結果、アルベリヒの配下が乗る3台のクルマは、飛来するそれらを防ぐ事も回避する事も出来ず、あっという間に爆散した。

 

 それを確認したセシリアとメルメメルアが、

「――3台程度では無駄だよ」

「う、うーん……たしかにその通りなのですが、ちょっとやりすぎた気がするのです……」

 なんて事を言いながら、窓を閉めて座り直す。

 

「あー……。そう言われるとそう……かも。これであっちが次に仕掛けてくる時も単に残ってるクルマを全て投入してくるだけだったりしたら、厄介だよね……。1台か2台残さないと駄目なわけだけど、そうする方が怪しまれそうな感じがするし……」

「はいです……。というかその……正直言うと、私もボルトの威力を見誤ったのです……。今まで学んだ事をもとに、クロスボウを強化してみたですが、想定外に威力――破壊力が上がっていたのです……。本当なら動かなくするだけのつもりだったですし……」

 メルメメルアはセシリアに対して頷きつつ、失敗だと言わんばかりの表情でそう口にして首を横に振ってみせた。

 

 ――セシリアはともかく、なんでメルまで全力で破壊したのかと思ったが、そういう事か……

 ルーナだけじゃなくて、メルも技量が大幅に上がっている感じだな……


 ラディウスはふたりの言葉を聞きながら、そんな事を思うのだった。

あっさりと吹き飛ばしすぎるのも問題という……


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月11日(木)の想定です!

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