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第5話 ディーゲルとアルベリヒ。破壊と聖剣。

「え? 破壊してしまったの? どうしてまた?」

 初耳だと言わんばかりの表情で問うルーナに、

「――ディーンさんと話をして、ゼグナム解放戦線の手に余る……というか、人道的に考えて破棄した方が良いと考えた所は、破壊してもう使えないようにしてしまったのだわ」

 と、そんな風にクレリテが説明する。

 

「なるほど……。まあたしかにその方がいいかもしれないわね……」

「はいです。あそこで行われていた研究と実験は、封印するよりも消滅させた方が良いものが多いのです」

 ルーナに続くようにして、頷きながら同意するメルメメルア。

 そんなやり取りを見ながら、ラディウスは顎に手を当て……

 

 ――まあ……なんとなく封印って『いつかは破られる』イメージがあるしなぁ……

 

 なんて事を思いながら、

「場所だけじゃなくて資料の方も、研究や実験の被害者を救う為に必要となるであろうものは除いて、完全に消滅させてしまった方がいいだろうな。資料が残っていると、それをもとに復活させられる可能性もあるし」

 と、告げた。

 

「言われてみるとその通りなのだわ。後で伝えておくのだわ」

 ラディウスの発言にもっともだと感じたクレリテは、そう言って首を縦に振ってみせた。

 

「っと、そうだ。封印と言えば……グロース・インヒビションを解除するガジェットを少し改良して、解除後に偽装する術式を追加したんだが、これで問題ないよな?」

 ラディウスはそう言いながらストレージからガジェットを取り出し、イザベラにそれを見せる。

 

「……問題はありませんけれど、なんというか……私が結構な時間をかけて磨き上げてきた技術をサラッと超えていかれると、そこそこ凹みますわね……。貴方、この術式は少し前まで解除困難だったんですのよね?」

 イザベラがため息交じりに首を横に振ってそんな事を言う。

 するとそれに対して、

「たしかに解除困難だったが、別にサラッとは超えていないぞ……? イザベラから聞いた事と妖姫から聞いた事をしっかり理解したからこそ出来たってだけの話だしな」

 と、そんな風に答えるラディウス。

 

「……『だけ』ではありませんわよ、それ。教えた事を理解して、さらに昇華させるのが早すぎですわよ……。まあいいですわ……。逆に私にも、貴方の技術と知識をいくつか教えて貰いますわよ?」

 腰に手を当て、さらにため息をついてからそうラディウスの方を見ながら言うイザベラ。

 

「それはまあ、俺に教えられるものであれば別に構わないが……」

 ラディウスはそう言って肩をすくめてみせた後、

「ま、それはそれとして……これで問題がないのであれば、ルーナの調整が終わり次第、作戦を開始するとしよう。ああ、それまでにクレリテ用の聖剣を作っておくか」

 と、そんな風に言葉を続けた。

 

 それを聞いたセシリアが、

「専用の聖剣って、なんだかちょっと羨ましい……かも」

 などと言葉通り羨ましそうな目でそう口にする。

 それに対してクレリテは、

「何を言ってるのだわ……。セシリアのその聖剣も、最早改造されすぎてて、セシリア専用なのだわ……」

 と言って、やれやれと首を横に振ってみせるのだった。

 

                    ◆

 

「――とりあえず、こんな感じだろうか」

 ラディウスはそう言いながら、作ったばかりの蛇腹剣をクレリテへと見せる。

 

「おおおっ! なのだわっ! なかなか格好良い見た目なのだわっ! でも、この等間隔に存在する線は一体なんなのだわ? そもそも、この形状の剣はみた事がないのだわ」

 クレリテのそんな疑問の言葉にラディウスは、クレリテの伸縮する剣は本当に刃自体が伸縮するからなぁ……なんて事を思いながら、

「これは蛇腹剣という奴でな。まあ……説明するより、これを持って『伸ばそう』と考えてみた方が早いと思うぞ」

 と、そんな風に返事をした。

 

 クレリテは、一体どういう事なのかと小首を傾げながらもラディウスから剣を受け取り、言われた通り『伸ばそう』と思考してみる。

 

 するとその直後、刃全体が線の所で等間隔に分裂。

 それが青白く光るワイヤーによって繋がれ、剣が鞭のように変化した。

 

「なるほどなのだわ! 納得なのだわ! こういう風に伸縮するとは面白いのだわ!」

 クレリテはまさに得心がいったと言わんばかりの笑みを湛えた表情をしながらそんな事を口にする。


 しかしすぐに、「……って、ちょっと待つのだわ!?」なんていう驚きの声を発した。

 それは続けて頭に流れ込んでくる『使い方』を認識した為だった。

 

 クレリテは驚きつつも興味深いその『使い方』を試すべく、

「こんな使い方まで出来るとは思わなかったのだわ!」

 なんて事を言いながら、剣を真上に突き出した。


 すると、青白く光るワイヤーが消え、分裂した刃が一斉に飛翔。宙を舞い始める。

 ラディウスは、それを見上げるクレリテのその視線の先へ、ストレージから取り出した黒い鉄の玉を放り投げてみせた。

 

 すぐにその黒い玉の存在を視界に捉えたクレリテは、そちらへ向けて意識を集中させる。

 と、その刹那、宙を舞っていた分裂した刃が、今度はその玉へと青白い光を発しながら――もっと正確に言うのなら、青白い光を飛翔の残像として残しながら――殺到。

 光の軌跡が無数に飛び交ったかと思うと、玉がその中で、まるでお手玉でもしているかのような動きで飛び跳ね……ながらバラバラになり、そして床へと落下していった。

 

「すっっっっっごいのだわっ! あんなに小さい刃なのに、スパスパと斬り刻んだのだわっ!」

 クレリテが興奮しながらそんな風に言うと、

「たしかに凄いね。というか……囲まれたら回避するの難しすぎだよ、これ」

 青白い光こそ消えたものの、いまだに宙を舞う刃を見ながらそんな風に返し、頬を掻くセシリア。

 

「伸縮自在どころか飛翔自在って感じなのだわ……。さすがすぎるのだわ……」

 クレリテはそう言いながら柄だけになった剣を、自身の胸元まで下げる。

 

 と、そこで宙を舞っていた刃が一斉に柄の上に連なり始め、青白く光るワイヤーが出現。元の繋がった状態へと戻った。

 

「応用すれば、色々なものを飛翔させられそうな気もするわね……」

 ルーナはそんな風に呟くと、手に持ったガジェットをラディウスたちに見せながら言葉を続ける。

「それはそれとして……これの調整の方は終わったわよ」


「あ、終わったんだ。それなら作戦の大まかな流れについて話していこうか」

 セシリアがルーナの方を見てそう告げると、ラディウスがそれに頷く。

「ああそうするとしよう。俺も詳しくは聞いていないしな」

 

「えっと、まず最初は――」

 セシリアはそう切り出して、説明を始めるのだった――

伸縮自在の剣が進化して蛇腹剣になった……かと思いきや、更に進化しました(何)


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月31日(日)の想定です!

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