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第1話 ディーゲルとアルベリヒ。屋敷に向かいて。

「――とまあ、そんな感じです」

「なんと……。そのような事になっていたとは……。おのれ、アルベリヒめ……っ!」

 ラディウスたちから娘や聖木の館の話を聞いたディーゲルは、怒りと共に手に持っていたガジェットを床に叩きつけて破壊した。

 

「あ、あの……今のガジェット、破壊してしまって良かったのです? 特殊通信用のガジェットのように見えたですが……」

「ああ、構わん。これはアルベリヒらとの連絡用のガジェットだ。君たちが我が娘を、クローディアを救出し、保護していると分かった以上、もう必要はない」

 メルメメルアの問いかけにそう答えるディーゲル。

 それを聞いて、

「……クローディアって名前だったんだね……」

 と、呟くセシリア。

 

 ――今の今まで名前を知らなかったからなぁ……

 

 ラディウスもそんな事を思いながら、「では?」という短い問いの言葉を口にする。

 それに対してディーゲルは、

「約束通り、君たちに……君たちとゼグナム解放戦線の双方に、全面的に協力する。……いや、協力させて貰いたい。そして、すぐにでも案内してはくれないだろうか?」

 と頭を下げながらそう返す。

 

「もちろんです。むしろ、アルベリヒが何か手を打ってくるかもしれません。今すぐに移動するとしましょう」

 ラディウスはそんな風に告げると、ディーゲルを伴って屋敷を後にする。

 

 そしてクルマに乗り込み、

「さて、急いで出るとしよう」

 と言った所で、セシリアがため息混じりに返事をする。

「あー……ラディ、ちょっと遅かったかも……」

 

 もしやと思い、ラディウスがマリス・ディテクターを発動すると『悪意』と『敵意』を持った人間の反応があった。

 

「動きが早いな……。さすがはアルベリヒといった所か」

「そうだね。関心している場合じゃないけど、関心するよ」

 ラディウスに対してそう返しつつ、やれやれと首を横に振って見せるセシリア。

 

「どうするです? サウスロードエンドまで突っ切るです?」

「いや……それは色々危険だ。……サウスロードエンドがあるなら、ノースロードエンドもあるよな?」

「はいです。ここに来る途中に広い道があったですが、あれを北に行くとあるのです」

「なるほど、あの先か。そっちへ一度向かって撹乱するのもあり……か?」

 ラディウスはメルメメルアに対してそう返しつつ、『向こう側の世界』へと飛ぶ。

 

「……急にこっちに来たという事は、何かあったという事ですわよね?」

 イザベラが軽く頭を抑えながら問いかけると、ラディウスは、

「ああ。アルベリヒに動きを察知された。だから、一度真逆のノースロードエンドとかに向かって、行き先を偽装するのが良いんじゃないかと考えたんだが……その先どうすればいいかが何も出てこなくてな。どうしたものか……と」

 と、そんな風に状況を伝えた。

 

「もう察知されたんですの? いくらなんでも動きが早すぎじゃありません?」

「まあ、ディーゲルさんがアルベリヒと繋がっているっていう特殊通信用のガジェットとやらを、怒りのあまり壊しちゃったから、もしかしたらそれで何か向こうに伝わったのかもしれないけどね」

 イザベラに対してセシリアが、あの場では口に出来なかった事を口にする。

 

「……確実にそれですわね。壊したくなるその気持ちは分からなくもないですけれど」

 そう言って首を横に振るイザベラに続くようにして、

「でも、それなら一度どうにかして撒いてしまえば、そこからは追跡出来なくなりそうよね」

 と、そんな風に言うルーナ。

 

「それはそうですけれど、どうやって撒くかですわね……」

「帝都の北側って、私たちの世界だとヴィンスレイドの屋敷がある方だよね……? こっちの世界にも例の遺跡があるのなら、そこを抜ける……とか?」

 イザベラに対してセシリアがそう告げると、イザベラは首を横に振り返事をする。

「それだと、帝都の中に入るだけですわよ? 余計見つかりやすくなりますわ」

 

「……むしろ、逆に敢えて帝都に飛び込んで、あの遺跡から外へ出る……か? もういっそ、このタイミングで妖姫も連れ出してしまう……とか」

「手としてはありかもしれないですが、ディーゲルさんを連れたままでは難しい気がするのです」

 ラディウスの言葉に、メルメメルアが顎に手を当ててそう返す。

 

「あー……そうか。たしかにその通りだな……」

 ラディウスはそんな風に言って、どうしたものかと考え込む。

 と、そこで、

「じゃあもう、サウスロードエンドに一直線に向かっちゃうとか?」

 などという提案を口にするセシリア。

 

「無策すぎますわよ!」

「まあ……いっそサウスロードエンドで全力で迎撃するっていう手もあるけど、ちょっと危険よね……」

 イザベラとルーナがそう言った所で、ラディウスが、

「……いや、案外サウスロードエンドへ一直線に向かうのもありかもしれないな」

 なんて事を思考を巡らせながら呟くように告げる。

 

「……? ラディウスさん、なにか良い方法を思いついたのですか? です」

 カチュアが小首をかしげながらもっともな疑問を口にすると、ラディウスはそれに対して頷いてみせつつ、

「ああ。あくまでも詳細を考えていない思いつきの案ではあるが……サウスロードエンドへ向かう事それ自体が、俺たちの『偽装』である……と、そう奴らに思い込ませてやったらどうだろうか?」

 と答えるのだった。

第4話というには、展開が違いすぎると思ったので、ここで節を変えてしまいました。


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月17日(日)の想定です!

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