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第1話 ふたりの少女。肉体と魂。

「あれ? ディーンさんも来たですか? です」

「うむ。かの娘を元に戻すための術式は、私も構築に関わったのでな。成功するのを見届けねばなるまい」

 カチュアの問いかけに、ディーゲルの娘の移送と共にやって来たディーンがそんな風に答える。

 

「成功する前提なのが、さすが過ぎる……」

「肉体を本来の状態へと復元する点に関しては、確実に問題ないのでな。……魂を入れ替える部分に関しては、私は少ししか関与していないゆえ、正直言えば成功するかは未知数だ。――だが、あの者が失敗するとは思えんのでな」

 ディーンがセシリアの呟きに対してそう答えると、

「それはまあ……そこに関しては同意だけど」

 と、頬を指で軽く叩きながら同意の言葉を口にするセシリア。

 

「――こんな感じでいいでしょうか?」

 リリティナがそんな風に告げると、ラディウスは移送されてきたディーゲルの娘の魂が込められた肉体と本来の肉体が、横に並べられているのを確認し、

「ああ。これで大丈夫だ。麻酔の方も問題ない感じだろうか?」

 と、返す。

 

「ええ。そっちは問題ありませんわよ。私とルーナでその身体に合わせて調整した麻酔魔法が用いられていますもの」

 リリティナに代わるようにして、そう返すイザベラ。

 ルーナの方もそれを肯定するように、首を縦に振ってみせた。

 

「なるほど、それなら安心だ。さて……まずは肉体を戻す所からだな」

 ラディウスはそう告げると、ふたつの肉体の間に箱状のガジェットを横に倒した状態で置いた。

 

 そして、五角形になるように描かれている5つの魔法陣の中心を上から時計回りに順番に触れていく。

 と、次々に魔法陣が中空に浮かび上がっていき、それぞれが赤青黄白黒の5色の淡い光を放ち始めた。

 

「なるほど、こういう仕組みですのね。なんとなく理解出来ましたわ」

 イザベラがそれを眺めながらそんな風に呟く。

 それに対し、ルーナがため息混じりに肩をすくめてみせる。

「これを見ただけで、なんとなく理解出来るあたりが恐ろしいわね……」

 

「何を言っていますの? 貴方もなんとなく理解出来るのではありませんこと?」

「まあ……『変化』を『反転』させているっぽい事は分かるわね」

 肩をすくめ返してみせるイザベラに、そうルーナが答えると、

「どっちも恐ろしい程の解析力と技量なのです……。私には見ただけでそこまで理解するのはまだ無理なのです。言われてなんとなく少し分かった程度なのです」

 と、首を横に振って少し残念そうに告げるメルメメルア。

 

「いやいや、少し分かるだけでも十分とんでもないと思うけど? 私なんてさっぱりだし?」

 セシリアがそんな風に言って、やれやれと首を横に振ってみせる。

 

「……ですけど、あのディーゲルの娘とやらとは別のあの少女……。私、どこかで見たような気がするんですのよねぇ……」

「むむ? そうなのだわ?」

 クレリテの問いかけにイザベラは頷き、

「ええ。まあ、どこで見たのかさっぱり思い出せませんけれど……」

 と言って考え込む。

 しかし、まったく思い出せなかった。

 

 ――そうこうしている間に、ラディウスは別のガジェットを取り出し、そちらも起動させていた。

 そして……

「よし、これでいい。あとは……」

 ラディウスはそんな風に呟きつつ、銃型のガジェットを取り出すと、それを肉体が変異してしまっている方――本来の肉体の方へと押し当て……トリガーを引いた。

 

 ドンッという重い音と共に、本来の肉体……その身体が軽く跳ねる。

 更にそれと同時に、肉体全体に覆いかぶさるかのように、楕円形という少し珍しい形状の魔法陣が出現した。

 

「とりあえず必要となる魔法は全て発動させた。あとは経過を見守るしかないな……」

 ラディウスはそう告げながら、その場から少し離れる。

 それに対し、

「よくもまあ、こんな術式を思いついたものですわね」

 と、肩をすくめながら言うイザベラ。

 

「――ヴィンスレイドの一件の折に、異形化しかけていたルティカが元に戻った時の現象を目の当たりにした経験と、ディーンさんが色々と調べて得られた情報があったからこそ……だな」

「ま、それをもとにここまでの術式を組み上げ、ガジェットを作り出すというのは驚きを禁じえないというものだがね」

 ラディウスに対し、今度はディーンが肩をすくめてみせた。

 そしてそのまま、

「ふむ……。軟体化した事による身体の継続的な震えが少しずつ弱まってきているな。これなら、2~3時間で終わりそうだ」

 と、そんな風に詳しく肉体の状態を観察しながら告げる。

 

「あ、そのくらいはかかるんだね」

「何かを復元するというのは手間がかかるものなのだよ。これでも想定よりも早いと言えるくらいだ」

 セシリアに対してディーンがそう返すと、セシリアは、

「なるほど……。まあたしかに壊すよりも直す方が大変だよねぇ」

 なんて返事をしてみせた。

 

「まあ、とにかく待つしかないわね」

 ルーナの発言に皆が頷き、そのまま待つ事2時間半……

 

「魔法陣が消えたのだわ!」

 と、クレリテが声を大にして口にした通り、楕円形の魔法陣が消滅。

 それを見たラディウスが、安堵の表情で、

「どうやら上手くいったみたいだな」

 と言った。

 

「うむ。当然というものだ」

 ディーンは自信満々といった表情でそう告げると、そのままふたつの肉体を交互に見て、

「魂の方もこの感じであれば問題はないのではないか?」

 という問いの言葉を投げかける。

 

 それに対してラディウスは、

「おそらくは……」

 とだけ返しながら、思う。

 

 ――リリティナやカチュアの魂を無休の混沌から引っ張り上げた時と似たような感じでいけるはずだから、ほぼ失敗はないはずだが……そこよりも気になっているのは、元の肉体にそれぞれの魂が戻った時に、その衝撃で麻酔が解けないか……だな。

 

 と。

 

 そして――

「グッ、ガッ、ガアッ!」

 唐突にディーゲルの娘の肉体『ではない方』の肉体――少女が、声を発しながら激しく動き始める。

 

「こ、これって……!」

「想定外ですわね……っ! 麻酔魔法が解除されてしまっていますわ……っ!」

 ルーナとイザベラがそんな風に言った直後、少女の目が開かれた――

この節は、前の節ほど長くはならない想定です(あくまでも想定ですが……)


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月7日(木)の想定です!

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