第22話 レヴァルタの真実。操魔と遺跡。
「……インチキくさいという点に関しては、たしかにその通りですし? 否定のしようがありませんけれど……でも、それだけやっても『今の歴史』にするのが精一杯だった事を考えると、私ひとりの力など大したものではないですわ。……そもそも、もしもあなたたちの力があの時あれば、帝国軍を軽々と撃退出来ていたはずですし、インチキくささで言えば、私とあなたたち、大した差ではないと思いますわよ?」
ルーナたち3人の発言を聞いたイザベラは、腕を組みながらそんな風に言う。
……まあ、たしかにそこについては否定出来ないなぁ……と、ラディウスが思っていると、リゼリッタが口を開いた。
「その時にラディウスさんたちがいたとしても、凄まじい物量と兵力を誇る帝国軍を撃退するのは、さすがに難――」
リゼリッタは否定しようとしたものの、途中でなんだか出来そうな気がしてきた為、頭を振って言葉を紡ぎ直す。
「――いえ、レヴァルタから退かせる程度なら出来たような気がしますね……」
「でしょう? 魔軍事変の際に、魔物の大群を掃討した事を考えれば、そう難しい事ではないと思いますわよ」
「あれと同じくらいの規模なら、まあたしかに出来そうではある……かも?」
イザベラの言葉に対し、セシリアがそんな風に返した直後、
「そう言えば、あれって『操魔の魔法』とかいう術式によるものなのよね? ビブリオ・マギアスはどうやってあんなものを生み出したの?」
と、ルーナがイザベラに問いかける。
「あれはヴィンスレイドからもたらされたガジェット――古の時代に、『マインドコントロール』のガジェットを生み出す研究で偶然生まれた、副産物的な代物――をベースにしているそうですわよ」
イザベラはそこまで口にした所で一度言葉を切ると、両手を左右に広げ、やれやれと言わんばかりの表情をしてみせてから、ため息混じりに続きの言葉を紡いだ。
「……まあ、残念ながらそれ以上の情報は私も持っていませんけれど。というのも、私の所まで詳細が回ってこなかったというか……ビブリオ・マギアスの中でも一部の者しか詳細については知らされていないそうですわ」
「あ、そういうものなんだ。でもまあ、ビブリオ・マギアスの主戦力となり得る魔法――技術だし、仲間に対してもそうそう簡単には教えられないってのは理解出来なくもない……かも?」
「だわだわ。でも、幻軍のトップにまで秘匿しておくっていうのは大概なのだわ」
そんな風にセシリアに続いて口にしたクレリテに対し、イザベラは頷きながら返事をする。
「ええ、そうですわね。……もしかしたら、私が中枢の人間に『いつ裏切るかわからなさそうな奴』だと思われていて、それゆえに情報を回されなかった……とかなのかもしれませんけれど、ね」
「まあ……こちらの世界の人間である以上、あちらの世界では素性が謎に包まれている状態なわけですし、そう思われている可能性は十分にありますね」
リリティナはそう言った後、一呼吸置いてから、
「……それはそれとして、レヴァルタに関する諸々の事は大体分かりました。ベルドフレイム兄様がイザベラさんの処刑に異を唱えたのも、最初からそういう流れになるように仕組まれていたと考えれば納得出来ますが、ベルドフレイム兄様は本当にガジェットの実験と見せしめの為だけにレヴァルタを破壊し尽くしたのでしょうか? 私にはレヴァルタで何かを探していたように感じられたのですが……」
と、そんな風に言葉を続けた。
「なにかを……探していた、ですの?」
初耳だと言わんばかりに、驚きを隠せない顔でそう返すイザベラ。
「あれ? イザベラさんも何を探していたのか知らないのですか? です」
リリティナに代わるようにしてそう問いかけたカチュアに対してイザベラは、
「……単なる茶番劇になる事はその時点で決まってはいたものの、一応『裁き』を行う為に、私はレヴァルタが破壊された直後に拘束されて帝都の監獄に送られてしまったので、その後のベルドフレイムの動きについては、何も把握していませんわ。父様や兄様、オルドーたちもその時にはレヴァルタから離れた場所にいましたし……」
と、そんな風に答える。
「レヴァルタには、何か秘密があったりするです?」
今度はメルメメルアがもっともな疑問を投げかける。
するとイザベラは、首を傾げて「うーん……」と唸った後、
「そんなものはないはず……ですわ。いえ、まあ……私――私たちの家の者が知らないだけで、実はなにかがある……という可能性自体は否定しきれませんけれど……」
と、少し自信なさげに言った。
「……街を破壊し尽くしたという事は、レヴァルタの街に何かがあるわけではなさそうだな……」
ラディウスはそう呟くように言って思考を巡らせる。
――レヴァルタの近くに遺跡があった事は、さっきのイザベラの話で分かっている。
もし、その遺跡が地下でレヴァルタの辺りまで続いていたとしたら……?
「なあイザベラ、溶岩の上にある遺跡の話をしていたよな? あれって正確に言うとどの辺りなんだ?」
「正確に言うと……ですの? えーっと……地図はありません?」
ラディウスの問いかけに対し、イザベラがそんな風に言った直後、
「――これが向こうの世界の大陸地図になります。まあ……基本的な地形は、こちらの世界と何も変わりませんが」
と言いながら、地図を広げるテオドール。
「遺跡がここで、谷がここで……」
そんな事を呟きつつ、地図の上で指を這わせていくイザベラ。
皆がその指の動きを眺めていると、程なくして動きが止まり、イザベラが告げる。
「ここになりますわね」
「あー……こんな所なんだ。この辺りって人が住んでいる場所じゃないね」
「そうですわね。ですけれど、こちらの世界ですと、ちょうどレヴァルタの街があ……る?」
地図を見ながら言葉を紡ぐセシリアに対し、そう返事をするイザベラ。
しかし、その途中で何かに気づいた。
そして――
「……これだな」
というラディウスの一言にイザベラは頷き、
「ええ。私も理解しましたわ」
と、そう納得顔で口にするのだった。
もうあと1話で、第1節が終わる……はず……です。
あくまでも想定なので、現時点では収まらない可能性もゼロではありませんが……
……ま、まあ、そんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなります、2月29日(木)の想定です!
29日……。そう、今年は29日があるんですよね。




