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第21話 レヴァルタの真実。ガジェットの欠陥。

「……レヴァルタに居座っている2家の撃退……でございますわ」

「撃退? 街の者たちや当主たちを殺されながら、その程度で良いのか? 2家を『壊したい』とは思わぬのか?」

 ニヤリとするベルドフレイムに対し、イザベラは即座に思考を巡らす。

 

 ――2家を『壊す』……。『取り潰す』ではなく『壊す』……と来ましたわね。

 これは……街を破壊し尽くしても良いかという問いですわね。

 そして、街の者も当主も死んでいるのなら、街を壊しても構わないのではないか? 何か壊してはまずい事でもあるのか? と、暗にそう言ってきているとも言えますわ。

 であれば、ここで返す言葉もひとつしかありませんわね……

 

「……もしも可能なのであれば、2家の『殲滅』をお願いいたしますわ。跡形もなく」

 

 ――そう……。これしかありませんわ。

 こう言わなければ、きっと『真実』を吐かされる事になりますもの……

 

「可能か不可能かなど考える必要はない。我には可能しかないゆえにな。なに、我らもあの者どもによって我が軍の補給部隊を撃滅され、大事な物資を奪われた怒りがある。その上、このような事をしていたとあれば、最早その怒りは烈火……否、業火の如きものだ。当主の代行ともいえる貴様が承諾せし今、我は全てを滅し、帝国に遍く示そうではないか。帝国の秩序を乱せし者どもの末路を、な」

 尊大に言い放つベルドフレイムのその言葉を聞きながら、イザベラは色々な感情が出そうになるのを抑えつつ思考する。

 

 ――ど、どうにかなりましたわね……

 無論、レヴァルタの街が破壊されてしまうという事に対する喜びなんて微塵もありませんけれど、そんな感情を言葉に乗せようものなら、確実に不興を買いますわ。

 そうなれば、殺されて終わりにしかなりそうにない感じですし、こうする他ありませんわね……

 まあ……こうなる事を予測して、街の者たちを避難させておいて正解だった……と、今はそれだけ『喜んで』おきますわ。

 

「……はい、殿下の仰る通りでございますわ。そして、私の望みを叶えていただき、ありがたき幸せにございますわ……」

 偽りの『喜び』の感情を少しだけ声に乗せてそう返事をするイザベラに対し、ベルドフレイムは満足げな表情で頷いてみせたのだった。

 

                    ◆


「や、厄介すぎるというか、絶対に相手にしたくないなぁ……。ベルドフレイムは」

「まったくですわね。私も、もうあんなやりとり二度としたくありませんわ。なにしろ、仮にも令嬢である私をいきなり殴ってくるんですのよ? その上、少しでも対応を間違えたら終わりとか、無茶苦茶すぎるにも程があるというものですわ……」

 イザベラはセシリアの言葉にそう返し、やれやれと首を横に振ってみせた。

 

 そしてそのまま続けて、

「なんにせよ、上手く騙されてくれて良かったというものですわ。本当は街が破壊されないようにしたかったのですけれどね……。先程話した通り、こうする他なかったのですわ……」

 と口にして嘆息するイザベラに対し、クレリテが問う。

「でも、一夜にして街を徹底的に破壊するとかとんでもないのだわ。何かのガジェットが使われたのだわ?」

 

「ええ。古の時代の技術を再現して生み出された『プロトタイプのガジェット』が、実地試験と称して使われましたわ。結果は、まあ……既に情報として出回っている通りですわね」

「なるほどなのです。ちなみに、そのガジェットがレヴァルタでしか使われていないのは、さすがに危険すぎる代物だと判明したから……とかなのです?」

 イザベラの返答に、今度はメルメメルアが問いかける。

 

「ま、そんな感じですわね。あのガジェットには使った地域一帯が、人間どころか生物の住めるような場所ではなくなってしまうという『最悪の欠陥』がありますもの。多用すれば『豊かな国土』が失われるだけですし? さすがのベルドフレイムも、その欠陥が改善されるまでは封印する事にしたようですわね」

「なるほど。まあ……たったの一夜で『そうなる』というのを、帝国全土に知らしめる事は出来たわけだし、それで十分と言えば十分ではあるよな」

 イザベラの説明を聞いたラディウスがそう答えると、イザベラはそれに対して頷いてみせ、

「そういう事ですわ。まあ、一夜反乱と言われてはいますけれど、実際にはその前にわざと攻撃をして、レヴァルタまで3日がかりで誘引しているので、正確には三日反乱というのが正しいですわね」

 と、そんな事を口にした。

 

「帝国軍が一夜で制圧――街を破壊し尽くしたという点が強調された形だね。まあ、そっちの方が『帝国軍の強さ』と『恐怖』も強調出来るから、敢えてそう呼ばれるようにしたんだろうけれど」

 そう返事をして肩をすくめるセシリアに続くようにして、

「そうしてその後、2家は『消された』というわけですか。イザベラさんの家まで『消された』のが、少し謎ですが」

 と、消されたの部分を強調しながら言葉を紡ぐリリティナ。

 

「あ、たしかにイザベラは『生き残り』っていう『設定』だったわね。普通ならイザベラが当主とかになりそうだけど……」

 と言ってイザベラの方を見るルーナに、

「反乱が実際に起きてしまった事を考えると、そのままお咎めなしとはいかないと言われましたわ。まあ、我が家が他の2家を抑えられなかったのは事実ですし、『生き残り』である私が『表向き』継ぐのも何か違うと私も思いましたから、皇帝直属の諜報部隊の一員となる事で『決着』とする形にどうにかもっていきましたわ」

 と、そう説明するイザベラ。

 

「あ、そういう流れなんですかです」

「ええ。ベルドフレイムは2家の帳簿や覚書を入手し、更にガジェットを作る技術を持つ私を欲してようですし、割と上手く事が運びましたわ」

 イザベラはカチュアに対して頷きながらそんな風に言うと、少し自身を誇るように胸を張ってみせた。

 

 するとそれに対して、

「……まあたしかにイザベラの能力に関しては、否定のしようがないわね……」

「実際、凄いと思いますですよ。私なんて何百回死んでも、大して知識も技術も得られていませんですし」

「そうかもしれないけど、でもなんというか……何度も死んでやり直して得た知識と技術って、こう……若干インチキくさい感じがするけどね……」

 ルーナ、カチュア、セシリアの3人が、それぞれそんな反応をする。

 

 それを聞きながらラディウスは、自分もそういう意味ではインチキくさい気がするな……なんて事を思うのだった。

長くなっている第1節も、あと1話か2話で終わると思います……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、2月25日(日)の想定です!

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