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第19話 レヴァルタの真実。滅びへの準備。

「うぇっ!? あだっ!?」

 イザベラに力強く引っ張られ、体勢を崩したルヴィが、尻もちをつきながら素っ頓狂な声を発する。

 

 それと同時に、イザベラはルヴィを引っ張ったその手を起点に前方へと踏み込み、ルヴィと位置を入れ替えるような形になった。

 

「ぐっ……うぅっ!」

 短剣を構え直すと同時に魔法が直撃。

 その強烈な衝撃に苦悶の声が漏れ、片膝をつくイザベラ。

 しかし、それでも攻撃してきた相手へと顔を向け、

「こ、ん、のぉぉっ!」

 という、これまた普段は使う事のない口調で、両手に持った短剣をふたつとも放り投げた。

 

 放たれた短剣は、ふたつとも魔法を放ってきた帝国兵に突き刺さり、帝国兵はそのまま今度こそ完全にその動きを止める。

 

 ――ふぅ……。どうにか阻止出来ましたわね……

 

 心の中でそう呟きながら立ち上がるイザベラに、ルヴィが驚愕と困惑の表情で、

「イ、イザベラッ!? なんで!?」

 と、叫ぶ。

 

「えっと……? なんでと言われましても……ルヴィを狙っているのが見えたから前に出ただけですわよ? 今のをルヴィが食らっていたら即死でしたし? 逆に私はこの短剣に対魔法防御膜を展開する魔法が組み込んであるので、食らっても大した事ありませんもの」

 

 ――ま、まあ、実際には展開が結構ギリギリで不完全だったので、そこそこダメージは食らいましたけれど……それを口にしたら大変な事になりますわね。

 

 全身に軽い火傷のような痛みを感じながらそんな事を口にし、そして思考するイザベラ。

 

「そ、そういう事じゃないから! 護衛する対象に守られたら護衛の意味がないでしょうに!」

 グッと両手でイザベラの肩をガクガクと揺すりながら、少し怒りの混ざった声でそう言ってくるルヴィ。

 その勢いと揺れにイザベラは、

「あわ、あわわ。い、いえ、ですから、そ、その、ルヴィに守られたままだとルヴィが死んでましたのよ? そ、そうしたらでございますね、この先、わ、私を護衛する事が出来なくなってしまうではありませんこと? こと?」

 なんて返事をした。

 ルヴィからの圧力と、揺すられているせいで口調が少し……いや、大分おかしくなっていたりする。

 

「うぐっ……! そ、それはそうかもしれないけど……っ!」

 ルヴィは肩を揺するのを止めてそんな風に言った。

 

「と、ともかく、これで2ヶ所壊滅させましたけれど……戦闘音も、もうしていませんし、全部片付いたと考えて良さそうですわね」

 イザベラはサッとルヴィのもとから抜け出すと、そんな風に言って周囲を見回す。

 そして……

 

 ――もういきなり襲いかかってきそうな敵はいませんわね。

 まあ、完全に離脱するまで安心は出来ませんけれど。

 

 そんな事を考えながら、続けて今度は補給物資を見回し、

「さて、大型の兵器類は運ぶのが厄介なので破壊して、それ以外は事前に指定した場所に移しておきますわよ」

 と、そう皆に告げた。

 

「ん? 街へは持ち帰らないの?」

「――これからこっそりと街の住人は街の外へ避難させようとしているというのに、街に運び込んでどうするんですの? 何の意味もありませんし、『連中』に見られたら面倒なだけですわ」

 ルヴィの問いかけに対してイザベラが肩をすくめながらそう答えると、

「あ、なるほど。たしかにそうだね」

 と納得して物資を運び始めるルヴィ。

 そんなルヴィを見ながらイザベラは心の中で呟く。

 

 ――まあ、街が破壊されるから……とは言えませんわね。

 

 と。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「どうやら、物資の移送は完了したようですな」

 イザベラが眼下に広がるレヴァルタの街を眺めていると、オルドーが声をかけてくる。

 

「ええ。予定通り、フォーガッシャ鍾乳洞に運び終えましたわ。――逃げた帝国兵の方はどんな感じですの?」

 オルドーの方へと向き直りながらそう問いかけるイザベラ。

 

「はい。『レザン』と『ベルグド』の兵が奇襲を仕掛けてきた事を、しっかりと『伝えて』くださいましたぞ」

「ふふっ、それはバッチリですわね。あとは住民を速やかに避難させるだけですわ」

 笑みを浮かべながらそんな風に言って、再び街へと視線を向けるイザベラ。

 

「そちらも既に、避難に時間を要する者から順に少しずつ動き始めておりますぞ。今の所は特に問題もなく順調に進んでいる感じですな。『レザン』と『ベルグド』の兵にもバレてはおりませぬ」

「でしたら、最後の仕上げの準備を始めねばなりませんわね」

 イザベラはオルドーにそう返しつつも、顔はレヴァルタの街の方へと向いたままだった。

 そして、

「……これしか手がないとは言え、この光景がなくなるというのは、やはり物悲しいですわね……」

 と、呟くように言った。

 

「……そうですな。ですが、人がいれば街はまた作れるというもの。『彼の者』の目がある間は難しいやもしれませぬが、それでもいずれは……」

「そう……ですわね。いずれ……必ず……」

 

 ――必ずレヴァルタを元に戻してみせますわ。

 だから今は……あの男に擦り寄り、上手く『壊して』貰わなければなりませんわね……。このレヴァルタを……

 

 イザベラはオルドーに対して返事をしつつ、決意と共にそんな事を心の中で呟くのだった。

想定よりも大分長くなっている第1節も、ようやく終わりが見えてきました……


とまあ、そんなわけでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、2月18日(日)の想定です!

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