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第17話 レヴァルタの真実。イザベラの策。

「――それで? どんな方法を?」

 イザベラの語りを聞いていたセシリアがそう問いかける。

 それに対してイザベラは、

「最後まで語らせて欲しいですわね……」

 なんてため息混じりに返す。

 

「いや、なんか長くなりそうだし……」

「……まあ、否定はしませんわ。――簡単に言うと、下手に砦を奪取したり防衛したりせずに、レヴァルタまで帝国軍を引き寄せましたのよ。こうすると、敵の補給線は細く長くなり、横からの強襲で寸断しやすくなる……という理由をつけて、ですわ」

 セシリアに対してそんな風に告げるイザベラ。

 

「なるほど。たしかにその通りですな。レヴァルタ周辺の地形を考えると、横に広く展開しながらの前進は不可能です。一気に突き進もうとしたら、どうしても軍団全体が縦に長くなります。横から突き破るのは、真正面からぶつかるよりも圧倒的に楽ですね」

「そういう事ですわ。もちろん、これはブラフですけれど」

 イザベラがテオドールの発言に頷きつつそう答える。

 それに対して、

「実際には強襲しない……という事なのだわ?」

 と、問いかけるクレリテ。

 

「結果的にはそういう事なのですけれど、少しだけ違いますわ」

 と言いながら、イザベラは再びその時の事を詳しく語り始めた。

 

                    ◆

 

「なんと、そのような方法を……!?」

「た、たしかにそれは効果的ですな……」

 レザン家とベルグド家の当主がそれぞれそんな事を口にする。

 

「――このレヴァルタは御二方がご覧になられた通り、非常に強力な障壁を有し、堅牢。そうそう簡単には落ちません。蓄えも大量にありますゆえ」

「うむ。しかし、我らが直接動いては敵は怪しむであろう。ゆえに我らは城壁で敵にその姿を見せる事でこのレヴァルタに健在であると認識させる必要があるのだ」

「はい。あとは今説明いたしました通り、父上と私が防衛の指揮を取り、敵軍をこちらに惹きつけている間に、御二方が左右から敵後方を強襲、補給線を断ち切って前線を孤立させるのです」

「そうすれば、帝国軍の潤沢な物資や兵器を我らが手にする事となり、物資や兵器が不足するのは帝国軍の方……つまり、我らが圧倒的に有利な状況となるのだ」

 

 そんな風に説明を続けるエドゥアルトとパウルを遠くから覗いていたイザベラは、手応えを感じてその場を後にする。

 

「イザベラ様、その感じだと、どうやら話は上手く進んでいるようだね。あ、ですね」

「私の前では普段通りの話し方で構いませんわよ。ルヴィ」

 廊下で待っていた女性にそう返すイザベラ。

 そして……

 

 ――今はまだルヴィも生きていますわ。……何度やりなおしても、ほぼ戦死してしまうので、なかなか生き残らせるのには苦労しましたけれど、どうにか戦死しないように出来ていますわね……

 

 なんて事をイザベラが考える。

 そう。その女性は、一番最初の歴史――本来の歴史においては、帝国軍の『ドール』によって戦死したオルドーの孫娘だった。

 

「じゃあ、遠慮なく。――こっちもイザベラの言われた通り『偽造』は順調に進んでいるよ。……というより、実際に本物を見て細部を調整しているだけだから、もうすぐ終わるはずだよ」

「バッチリですわね。終わり次第、予定通り補給線を強襲しに行きますわよ」

「……それは構わないけど、本当にイザベラも行くの? いくら圧倒的にこちらが有利な状況での強襲とはいえ、戦闘にはなるし、死ぬ可能性も普通にあるんだけど……」

 イザベラに対してルヴィがそう告げると、イザベラは口元に手を当て、

「嫌ですわね。私が帝国兵如きにやられるほど弱いと、そう言いたいんですの? もう一度ギタギタのメタメタにしてやりますわよ?」

 なんて事を、獲物を追い詰めた獣のような目で口にした。

 

「い、いや、まあ、その、イザベラが実は恐ろしく強いのは良く分かったけど……」

「なら問題ありませんわよね?」

「う、うん……。まあ、そう……だね……」

 ちょっと萎縮気味にそう返してくるルヴィを見ながら、イザベラは心の中で呟く。

 

 ――申し訳ありませんわね、ルヴィ。貴方にはこのくらいの強さで言わないと、何度も食い下がってきてしまう事は、幾度となく繰り返して分かっているんですのよ。

 

 と。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「イザベラ、そろそろ定刻だよ」

 茂みに潜みながら、小声で告げてくるルヴィ。

 それに対してイザベラは、

「ええ。ゼロと同時に一斉掃射から一気に突撃しますわよ」

 と言いながら、クロスボウ型のガジェットを構える。

 そしてそれに続くように、同じように潜んでいる兵士たちとルヴィもクロスボウ型のガジェットを構えた。

 

「あと10秒。――9……8……7……6……5……4……3……2……1……0!」

 ルヴィがゼロを告げると同時に、全員がマジックボルトを発射。

 

 マジックボルトが発する音は、イザベラの周囲だけではなく、辺り一帯から響いた。

 分散して潜んでいる部隊が予定通りに一斉に動き出したのだ。

 

「ぐっ!?」「がっ!?」「なっ!?」

 そんな声が響き、次々に倒れていく帝国兵。

 

 ――ここまでは当然の結果。でも、ここからが厄介なんですのよね……っ!

 

 イザベラはそんな事を思いながらも、

「行きますわよっ!」

 と大声で発しつつクロスボウ型のガジェットから短剣へと得物を切り替え、そして帝国兵へと飛びかかっていくのだった――

回想のままだと単に話が間延びしてしまうだけな感じがしたので、若干すっ飛ばしました。


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、2月11日(日)の想定です!

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