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第16話 レヴァルタの真実。イザベラの偽造。

「まさか、あの2家がこのような悪事を裏で行っていようとはな……」

 イザベラの父、エドゥアルトが忌々しいものを見たと言わんばかりの表情でそう口にする。

 そして、その手には書類が握られていた。

 

「良くこんな物を手に入れられたものだね、イザベラ」

「そこは『色々な方』に手伝って貰いましたわ。お陰で、暗殺者を仕向けられたりと厄介な状況もありましたけれど、どうにかなりましたわ」

 兄パウルの言葉に、イザベラはそんな風に答える。

 『色々な方』を強調したのは、諜報に長けた者たちに協力して貰ったと思わせる為だ。

 

 ――まあ、実際には私が死にまくりながら得た情報を思い出しながら作った偽造の書類なのですけれど。

 

 イザベラがそう心の中で呟いた通り、目の間に並べられている書類――レザン家とベルグド家の行っている悪事の証拠足り得る帳簿や覚書など――は、イザベラが『本物』の記憶をもとに生み出した偽物だ。

 もっとも……偽物と言っても本物と同等の内容の為、これ自体も証拠としては十分過ぎる代物ではあった。

 

「なるほどね。こっちでも受け取った情報をもとに調査してみたんだけど、調査出来た範囲では、どれも記されている通りで間違いなさそうだったよ」

 パウルはイザベラの言葉に納得し、頷きながらそう返す。

 そして、エドゥアルトの方へと顔を向け、

「――という感じです。父上」

 

「そうか。つまり、奴らの言う帝国に対する革命……いや、反乱の大義名分も我らを嵌める為のものというわけか」

「そうなりますね。このまま反乱を起こせば、奴らがこちらの妨害をしつつ、帝国軍側を誘導し、我らは追い詰められるでしょう」

 エドゥアルトに対し、そう返すパウル。

 それは、パウル自身がイザベラの情報をもとに調査して判明した『動き』から未来の結末を推測しての発言であったが、実際にそうなる事はイザベラには分かっていた。

 

「……あの2家には少し怪しい所はあったが、民に対する想いや平穏を維持する義務に関しては本物だと思っていた。……だが、それも偽り。我らを欺くための顔でしかなかったとは……。そして、それに気づかぬとはなんと愚かな私だ」

「父上……それを言ったら僕もです。あの者たちの言動は巧妙……。あれが嘘であったとは、こうして真実が出揃った今でも信じられないくらいですから」

 エドゥアルトとパウルがそんな事を話すのを聞きながらイザベラは思う。

 

 ――これで父上も兄上も、あの2家に騙される事はありませんわね。

 ですが……結局、私自身もあの者たちと同じ『巧妙に欺く側』に回ってしまいましたわね……

 まあ、これしか手段がない以上仕方がありませんが……

 あちらが欺いてくるのなら、こちらが欺き返しても構わないですわよね。欺く側が相手に欺き返されないなどと思い込む事それ自体が愚かなのですし。

 ……っとと、この思考を突き進めてはいけませんわね。手や口だけではなく、心まで真っ黒になってしまいますわ。

 

「――奴らには反乱の中止を伝えるとしよう。それと同時にこれを巡検使に……」

 エドゥアルトがそこまで言った所で、

「――お待ち下さいませ、父上。それでは駄目ですわ」

 と、言葉を遮って告げるイザベラ。

 

「む? 駄目? それはどういう事だ?」

「その行動をこちらが取った時の第2の計画というものが奴らにはありますわ」

 首を傾げるエドゥアルトにそう返しながら、イザベラが新たな書類をストレージから取り出してみせる。

 

「これはその計画書を書き写した物ですけれど、ここには何通りもの計画が記されていて、こちらの動きに合わせて、計画の内容を調整していく事が容易に出来るようになっていましたわ」

「なんと、そんなものまであったのか……」

「なるほど、あの者たちの言動の巧妙さはこういった緻密な計画の上に成り立っていたというわけだね。納得だよ」

 イザベラの発言に対し、驚きつつも納得の表情を見せるエドゥアルトとパウル。

 

「――これによると、父上が中止を口にしてきた場合は、一度引き下がりつつ、帝国の軍人に偽装した傭兵に我が家の領地内の村や集落で横暴な行動を取って帝国――皇帝陛下への不信感や反発する感情を高める手段に出る……と、そう書かれておりますわ」

「なるほど、そうくるか……。こう言っては不敬だが……」

 イザベラの言葉を聞いたエドゥアルトは、そこまで口にした所で一度言葉を切り、

「……いや、今更か。――正直言って、今の皇帝陛下のやり方は正しいとは言い難い。しかし、諌めようにも中央から遠い我らの声は届かない。それこそが反乱を考えた理由のひとつでもあるからな。そこにそのような行動を取られたら、たしかに反乱を起こしてでも我らの言葉を伝えねばならない……と、そう私は思うだろうな」

 などという続きの言葉を紡いだ。

 

「でも、そうなるとどういう風に動くのが良いのだろう……?」

「私――いえ、『私たち』があれこれと思案した結果、『1日で滅ぼされる』のが最良だという結論に達しましたわ」

 腕を組みながら考え込むパウルに対し、イザベラがサラッとそんな事を告げる。

 

「1日で滅ぼされる? それは一体どういう事だい?」

 もっともな疑問を口にしてくるパウル。

 エドゥアルトも言葉にこそしなかったものの、同じ疑問を抱いているのは間違いないらしく、パウルの疑問に首を縦に振って同意した。

 

「無論、本当に滅ぼされるわけではありませんわよ。詳しく説明いたしますわね」

 イザベラはそんな風に切り出して、ふたりに説明し始めるのだった――

本当は前回の話でここまで来る予定だったのですが……無理ですね。どう考えても……


ま、まあ……そんなわけでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、2月8日(木)の想定です!

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