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第12話 レヴァルタの真実。イザベラの狙い。

 ――正直、このままですと魔力切れの方が先ですわね……

 色々な工程をすっ飛ばしてガジェット化した関係で、どのクロスボウも内蔵している魔力はあまり多くありませんし……

 対して、帝国側の攻城兵器はまだ尽きる様子がありませんもの……

 

 イザベラはそんな事を考えながらも片っ端から攻城兵器を破壊していく。

 すると、イザベラの予想に反し、急に帝国軍の攻撃が停止した。

 

「さすがにこのままでは被害が大きいと判断した……とかですの? それならそれで好都合ですけれど……」

 イザベラがそう告げるとヨナが首を傾げて問う。

「好都合……とは?」

 

「こちらの防衛力が高く、力押しでは落とせないと判断してくれれば、『交渉』の余地が生まれるという事ですわ」

「なるほど……。たしかにそれはありますね」

 イザベラの説明を聞き、ヨナが頷く。

 そして、

「というか、お嬢様は帝国と交渉に持ち込みたい……と、そうお考えなのですね」

 と、そう言葉を続けた。

 

「その通りですわ。援軍の見込みのない籠城戦である以上、帝国軍が退いてくれない限りはいずれ負けてしまいますわ。あちらの物量を考えれば、先に『全て』が尽き果てるのはこちらですもの」

 イザベラが『全て』の所を強調しつつ、そんな風に言う。

 

「……たしかにそうですね。籠城しつつ非戦闘員である市民を遠くへ逃がす……というのも、包囲されている今の状況では難しいですし……」

「ええ。なので、帝国軍とどうにか交渉して、この地から撤収させねばならないのですわ。何にせよ、もう少し防衛力を見せなければ駄目ですけれど」

 イザベラはヨナに対してそう返すと、周囲を見回し、

「――とにかく、今は次に帝国軍が攻めて来た時に備えて、少しでもガジェットの魔力を回復させておかないと駄目ですわね。魔力の消耗量と回復にかかる時間を考えると、完全に回復させるのは難しい気もしますけれど……」

 と、言葉を続けた。

 

「それはつまり……このまま同じ規模の戦いが続くと、魔力切れが来る……と?」

「そうですわね。先程から魔力の消耗度合いと帝国軍の攻城兵器の破壊度合いを確認していますけれど、正直魔力の回復は追いつかないですわ。……そしてそれは、回復が追いついている間に交渉に持ち込まないといけない……という事でもありますわね」

 ヨナに対し、頷きながらそう言ってため息をつくイザベラ。

 

 ――どのタイミングで交渉に持ち込めるか……見極めねばなりませんわね……

 

 そんな風にイザベラは考えつつ、城壁から帝国軍の陣地を眺めた。

 

                    ◆

 

 そして、10日後――

 

「ほぼ毎日、こちらへ攻撃を仕掛けて来ていた帝国軍が、ここ数日まったく動いていないようだが……なんとも不気味だな」

「たしかにね。攻めあぐねている感はあるけれど、このまま退いてくれるとは思えないし……」

 イザベラの父エドゥアルトと兄パウルがそんな話をしていると、窓の外を眺めていたイザベラが、

「さすがに帝国側の攻城兵器の損耗が無視出来ない数になりつつあるのだと思いますわ。城壁の外には破壊した兵器の残骸が幾重にも連なっており、もはや新たな兵器を近づけるのすら難しくなりつつありますもの」

 と、ふたりの方へと振り向きながら告げた。

 

「なるほど……。言われてみると、連中の攻城兵器の残骸が、既に壁のようになりつつあるのはたしかだ」

「――ここらで一度、帝国側に交渉を持ちかけてみるのが良いのではないかと、私は思いますわ」

 納得の表情をみせるエドゥアルトに対し、そう切り出すイザベラ。

 

「交渉……。あの連中が応じるとは思えぬが……」

「まあ、再三交渉の場を設けて欲しいと言っているけど、全て突っぱねられているからね……」

 エドゥアルトとパウルが渋い顔で難色を示す。

 しかし、それに対してイザベラは、

「こちらの防衛力が高く、力押しでは落とせないのではないか……と、今ならあちらもそう考えているはずですわ」

 と、そんな風に返す。

 

「なるほどね……。でも、そうなると人選が重要かもしれないね」

「うむ。防衛力の高さを上手く伝え、簡単には落とせぬと思わせ、退いた方が良いという判断に至らせる……。なかなか難しいが、それが可能な者でなければ駄目であろう」

「そして、なるべく警戒されないような人間だとなお良いかもしれないね。……そんな人物いるかと言われると困るけれど」

「そうだな。我々が行っても、単に警戒されるだけな気がする。……そもそも、ガジェットの性能などを説明するのは、私は苦手だ……」

「僕はそれなりに知識があるけど、それでもちょっと難しいかな。……魔工士の中から適任者を探すのが良さそうだけど、うーん……」

 そんな事を話し、唸るエドゥアルトとパウル。

 

 それを眺めていたイザベラは、『今こそ!』と言わんばかりの表情をすると、人選に悩むふたりの間に入り込み、

「そ・こ・で、私の出番ですわ。私なら上手く説明出来ますし、警戒もされにくいと思いますわよ。それに……『この家の人間』でもありますし?」

 と、両者を交互に見ながら力強く告げたのだった。

今回、本来の想定よりも結構削ったのですが、それでもまだ長いですね……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、1月25日(木)の想定です!

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