第9話 レヴァルタの真実。洞穴と遺跡。
浅い川ではあるものの、ところどころ深みがある事を認識したイザベラは、下にも注意しながら川を下っていく。
すると、しばらく進んだ所で岩盤に開いた穴――洞穴があった。
それは、イザベラの頭の高さと同じくらいの所に開いており、階段状に連なった岩によって、洞穴の入口まで苦もなく登れる状態になっていた。
――自然に積み重なった……ようには見えませんわね。
明らかに人の手によって積み上げられたものですわね、この階段状の岩。
それに……この洞穴も。
そんな事を考えつつ、階段状に連なった岩を登り、洞穴を覗いてみるイザベラ。
すると、予想通りと言うべきか、奥の方に石造りの壁があり、そこに大穴が開いていた。
大穴の先は暗くて良く見えないものの、それでも、間違いなくそこから先が人工的に造られた場所である事は分かる。
――この洞穴……もしかして、盗掘の為に掘られたとかそんな感じだったりするんですの? ですけど……そうだとしたら、どうしてわざわざこんな谷間から掘る必要が……?
……まあ、とりあえず入ってみるのが良さそうですわね。全身びっしょりで、このままではまずいですし……
そう思って洞穴へと入り、そのまま大穴から奥へと進むイザベラ。
「……完全に遺跡ですわね。古の時代の物とは少し違うようですけれど……。うーん……この感じですと、中世時代のものかもしれませんわね」
イザベラは未知の遺跡に少しだけ興奮し、ついそんな事を誰にともなく呟く。
――あら? 奥の方から何か温かい風が吹いてきますわね……? これは一体……
全身ずぶ濡れ状態のイザベラとしては、少しでも温かい場所に行きたいという思考が働き、そのまま奥へと歩を進める。
しかし、それは間違いであった。
少し進んだ所で、ガコンッという音が響き、唐突に床が坂になったのだ。
それも傾斜が急で、勝手に滑っていってしまう程の。
「ま、まさかトラップですの!? このまま針の山に一直線とかはごめんですわよっ!?」
そんな声を発しながら慌てるも、最早どうやっても滑るのを止める事は出来ない。
イザベラは正面から吹き付ける熱風を浴びながら、なすがままに坂を滑っていき……
下が燃え盛るマグマのようになっている場所へと叩き落された。
「ちょっ!? 針の山じゃなくてマグマですのぉっ!? 殺意ありすぎじゃありませんっ!?」
――って、そんな事を口にしている場合じゃないですわっ!
な、なにかありませんの……っ!?
幸いと言っていいのかはわからないが、マグマまではかなりの高さがあり、すぐに飲み込まれるような事はないものの、このまま何もしなければいずれ飲み込まれるのは間違いない。
なので、状況を打開出来そうなものはないかと、素早くあちこちに視線を向けるイザベラ。
すると少し離れた所に、マグマの上に造られた回廊のようなものが見えた。
だが、今のこの状態からでは、どう頑張ってもそこへ着地するのは不可能だった。
他に何かないかと必死に探すも、それ以外には何もなく。あるのは眼下のマグマのみ。
イザベラは手持ちのガジェットでどうにか対処出来ないか――例えば浮遊魔法の類でマグマの上に着地するとか、強力な氷の魔法でマグマを冷やして固めるとか、そんな事が出来ないか――と思ったが、そんな都合のいい物は手持ちになく、すぐに考えるだけ無駄だと判断した。
――こ、これは本格的にまずいですわ……っ!
私、こんな意味不明な場所で死ぬのは嫌ですわよっ!?
あっ! そ、そうですわ! さっきと同じようにあそこに遺物を投げ……いえ、無理ですわね。あそこまで投げて届くわけがありませんわ……
仮に届いたとしても、位置を入れ替えるボルトを当てられる気がしませんわ……
うう……。こういう時、オルドーだったらあそこまで届かせて、更にボルトを当てられそうですのに……
ふと、懐中時計型のガジェットらしきものが入っていたガラスケースの側面だけを消し飛ばしたオルドーの事を思い出すイザベラ。
と、次の瞬間、急に視界が切り替わった。
「うぐっ!?」
軽い目眩と共に目を瞑って『片膝をつく』イザベラだったが、今はそれどころではないと無理矢理目を開く。
「イザベラお嬢様!? どうかなされましたか!?」
「……え?」
――片膝が……床についている?
私は落下していたはずですのに? しかも、オルドーの声?
困惑しつつ声のした方へと顔を向けると、心配そうな表情でイザベラを見るオルドーの顔がそこにはあった。
「オル……ドー? え……? こ、ここ……は……?」
そう呟きながら周囲を見回すと、そこは例の懐中時計型のガジェットらしきものが置かれていた部屋だった。
――戻って……きた?
これは……どういう事……ですの? 一体何が起きた……んですの……?
妙な遺跡が出てきましたが……?
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなります、1月14日(日)の想定です!




