第7話 レヴァルタの真実。遺跡の中に在りし物。
「私たちの有するガジェットよりも高性能なガジェットはありましたけれど……」
「数が少ないですな……」
周囲を見回しながら言うイザベラに対し、オルドーがそう返す。
「ですわね……。まあ、ここは秘密裏に研究や開発を行っていたであろう場所ですし、量産された物が置かれている方が不自然なのかもしれませんが……」
そんな風に返事をしつつ、棚に無造作に置かれていたガジェットを手に取るイザベラ。
「これは……幻影魔法のガジェット……? 随分と広範囲に展開出来るんですのね」
頭の中に流れ込んできた情報から、イザベラがそう呟くと、
「広範囲の幻影ですかな? それは一体どのくらいの広さに?」
という疑問を投げかけるオルドー。
「街ひとつ分くらいは余裕で展開出来ますわね。もっとも……設置型な上に、一度使うと魔力が切れるまで発動し続けて、魔力切れと同時に壊れるようですけれど」
「街ひとつ分もの広さに幻影を展開出来るのは凄まじいですが、発動したら発動しっぱなしな上に、一度しか使えないというのはさすがに……」
「ええ、いまいち使い所に困る代物ですわね。おそらく、失敗作の類なんでしょうけれど」
「偽の陣や偽の兵を敵に見せて誘き寄せる、あるいはその場に釘付けにして置き、その間に回り込んで奇襲をしかける……といった使い方は出来るかもしれませぬが、一度だけでは大きな打撃は与えられませぬな……」
「そうですわね。ただの幻影である以上、見破られたら終わりですし……」
イザベラはそう返しつつも、何かに使えるかもしれないと考え、
「まあ、ストレージを持ってきているので、運び出すのは簡単ですし? とりあえず持ち帰るだけ持ち帰る事にしますわ」
と口にしながら、そのガジェットをストレージへと放り込む。
「そうですな。何かの役に立つやもしれませぬし。――っと、イザベラお嬢様、こちらのこのクロスボウ、凄まじい量のマジックボルトを連射出来るようですぞ」
「それはいいですわね。しかも、12個もありますわね」
「どうやら、それぞれ発射出来るマジックボルトの属性が違うようですな」
「地水火風氷雷光闇……といった所かしら? でも、それだと4つ足りませんわね?」
そう言いながら、クロスボウのひとつを手にし、
「……重力ですわね。これ」
と、言葉を続けるイザベラ。
そのまま全部調べてみると、地水火風氷雷光闇の8つの他に、高重力のマジックボルトを撃ち出すもの、爆発するマジックボルトを撃ち出すもの、純粋な魔力の塊のマジックボルトを撃ち出すもの、そして当たった物との位置を入れ替えるマジックボルトを撃ち出すものがあった。
「……この当たった物との位置を入れ替えるという代物、『人』にも有効だったら役立ちましたのに……」
「敵将と位置を入れ替えるとかですかな? まあ、撃った者は敵陣のど真ん中に放り出される事になりますが」
「そうですわね。まあ、素早く別の物と入れ替われば逃げられますわよ。……もっとも、そんな事には使えませんけれど」
「物限定、かつ撃った本人が動かせる物でなければ駄目というのは、なかなか制約が厳しいですな」
「……一応、何かを放り投げてからそこに当てる……という方法で、瞬間移動みたいな事が出来ますし、使いようはなにかありそうな気はしますけれど……」
「敵の方へ適当なビンを投げ、そのビンと入れ替える事で一瞬で間合いを詰めて敵を斬る……とか、そういう使い方は可能ですな。まあ、ビンを投げる際に警戒されてしまわないように注意する必要はありますが」
「警戒されていても、いきなり目の前に現れる形になりますし、意表を突く事は出来ると思いますわよ。オルドーのような高い反応力と判断力を持っている者はそう多くはいないでしょうし?」
オルドーに対してそう返しつつ、ストレージにクロスボウを放り込むイザベラ。
そして、そこでガラスケースのようなものが目に入る。
「……?」
興味を抱いたイザベラがそれに近づくと、ガラスケースのようなものは本当にガラスケースだった。
そして中を覗いてみると、懐中時計のようなものが入っていた。
イザベラは持ってきた短剣の柄でガラスケースを叩いてみるも、全く割れそうにない。
「硬質ガラスという奴ですの? まあ、強度が半端ではなさそうですけれど……」
「先程の高重力のマジックボルトか爆発のマジックボルトであれば、破壊出来るのではありませぬか?」
「壊しすぎて中のガジェットらしきものまで壊れてしまう可能性がありますわね……。これだけ妙に厳重に保管されていたという事は、きっと強力な代物でしょうし、出来れば無傷で取り出したいものですわ」
イザベラがオルドーの提案にそう返すと、
「であれば、魔力塊のマジックボルトのクロスボウを貸していただけますかな?」
と口にするオルドー。
「いいですけれど、これ、金属の扉に大穴を開ける程の威力ですわよ? ここにぶつけたら、貫通して中のガジェットまで消し飛ばしてしまうのは確実な気がしますわ」
と言いつつも、ストレージからクロスボウを取り出してオルドーに手渡すイザベラ。
クロスボウを受け取ったオルドーは、
「無論、直接は撃ちませぬとも」
と返事をしながら、ガラスケースの方へと狙いを定め……発射。
発射されたマジックボルトはガラスケースの側面ギリギリをかすめ、側面部分を消し飛ばしながら壁に激突して消滅した。
「これで取り出せますぞ」
「な、なるほど……側面だけを消し飛ばす……と。さすがに私には出来る気がしない芸当なので、思いつきもしませんでしたわ……」
オルドーにそう言いながら、ガラスケースの側面部分から手を入れ、中に入っていた懐中時計のような形状の、ガジェットと思しき物を取り出すイザベラ。
と、次の瞬間、手に取った『それ』が急に光ったかと思うと、そのまま何もなかったかのように、跡形もなく消え去ってしまった。
そのあまりの出来事にイザベラは、ポカーンとした表情で、
「……え? なんですの? これ……。私、何もしてません……わよ?」
などと口にするのが精一杯だった――
なにやら、いかにもな物を手にしましたね……?
とまあそんな所でまた次回!
そして、新年あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします!
今年中に完結出来る……といいんですが、来年になるかもしれません(何)
さて、次の更新も予定通りとなりまして、1月7日(日)の想定です!




