第3話 レヴァルタの真実。ノーブルウィンド。
「……私も遭遇するとは夢にも思っていなかった場所で、滅界獣と遭遇しましたし? 色々とまずそうな状況だというのは納得ですわ。もっとも、だからと言って今すぐにどうこう出来るものでもありませんけれど」
肩をすくめながらそんな風に言うイザベラに対し、
「ま、たしかにその通りなんだよなぁ……。向こう側の世界ではまだそんな感じにはなっていない事を考えると、こちら側の世界になにか原因があるんだろうが、それが何なのかはさっぱりだしな」
と、腕を組みながら返すラディウス。
「そうね……。死の大地みたいなのも向こうの世界には存在していないし、向こうの世界とこちらの世界とでは何かが違っていて、それが影響しているんだとは思うけれど……」
「……案外、レヴァルタとその周辺を、今のような人がまともに住めない土地へと激変させた『力』が、何か関係していたりするかもしれませんわね……」
ルーナの発言に対し、何かを考えながらそう口にするイザベラ。
「なるほど……。たしかに無関係とは言い難いかもしれませんね……」
リゼリッタは顎に手を当てながらそんな風に言うと、一呼吸置いてから、
「とりあえず、それについての話をする為にも、宿へ向かうといたしましょう」
と言葉を続け、皆に移動を促した。
「うん、そうだね。案内よろしく」
リゼリッタはそう返事をしたセシリアに頷いてみせると、
「はい。それでは案内いたしますので、ついてきてください」
と言って、サウスロードエンドの中心部の方へ向かって歩き出す。
そして、程なくして『ノーブルウィンド』という名前の、いかにも高級ですと言わんばかりの造りをした宿が見えてきた所で、「ここがそうです」と告げるリゼリッタ。
「これはまたなんというか……」
「凄く高級そうな雰囲気が漂っていますです!」
「う、ウチとは大違いだわ……」
ラディウス、カチュア、ルーナの3人がそんな風に言うと、それに対して、
「は、はいです! 帝都でも知られているくらいサウスロードエンドで一番高級な宿なのです!」
などと、困惑と驚愕、そして興奮の入り混じった声で答えるメルメメルア。
「そうですわね。まさかこんな所を抑えているとは思いもしませんでしたわ……」
イザベラがそう呟くように言って、首を横に振ってみせると、
「ここは我々が経営している宿ですので、部屋を確保するのはさほど難しい事ではありませんよ」
なんて返しながら、宿の扉を開くリゼリッタ。
「あ、そういう事……。というか、中も凄いね……」
セシリアが宿の中を眺めながらそう口にすると、
「それはそれでとんでもないわね……。一体どういう風にしたら、こんな高級な宿の経営が成り立つのか、少し興味深いわ……」
と、宿の中に足を踏み入れながらそんな事を呟くルーナ。
それに対してセシリアが、
「あ、うん。真っ先にそこに興味を持つあたりは、さすがルーナというか……根っこが宿酒場の娘だけはあるって感じだよね」
と、そう返しながら肩をすくめてみせた。
「なるほど……。たしかにこういった高級な宿ならば、それ相応の『情報』を集める事も出来ますわね。ゼグナム解放戦線……やはり、なかなかに恐ろしい組織ですわ」
感心しつつもため息が混ざるイザベラ。
「そうですか? 貴方の『幻軍』も同じくらい恐ろしい……厄介な組織だと思いますが……」
と、リゼリッタが言うと、それに対してメルメメルアが、
「まったくなのです。グランベイルでは酷い目にあったのです」
なんて事を肩を落としながら口にして、盛大にため息をついてみせた。
「でも、結局撒かれたと聞いていますわよ?」
「それは、ゼグナム解放戦線の人たちのお陰なのです……」
「なるほどですわ。どうやって撒いたのか少し気になっていましたけれど、その言葉だけで得心がいくというものですわね」
イザベラはメルメメルアの返答に納得顔でそう返すと、
「まあ、もう追跡する必要も捕える必要もないと命じておいたので、次にグランベイルに行く時は安心して良いですわよ」
と、メルメメルアを見ながら告げた。
「それは大助かりなのです……」
メルメメルアが呟くようにそう口にした所で、
「なので、そちらも監視しなくて大丈夫ですわよ」
などと言いながら、フロントの方へと顔を向けてみせるイザベラ。
「おや、そうですか? グランベイルに入り込んでいる幻軍の皆様は、ほぼ全て把握出来たので『静かに他の場所に移っていただこう』かと思っていたのですが、その必要はなくなったようですね」
フロントから聞こえてきたそんな声に対してイザベラは、やれやれと言わんばかりの表情で返事をする。
「……これだから厄介なんですのよ。――隠密宰相様は」
「い、いつの間にそこにいたのですか!? です!」
イザベラの発言で、テオドールの存在に気づいたカチュアが驚きの声を上げる。
そして、それに続くようにしてメルメメルアも驚きの表情で、
「さ、さすがはテオドールさんなのです……」
と、口にした。
それを見ながらテオドールは軽く微笑んでみせた後、まるで何事もなかったかのように胸元に手を当てながら、
「――皆様、ようこそいらっしゃいました。お休みになられる部屋とは別に、談話するのにちょうど良い部屋を確保してありますので、そちらへご案内いたしましょう」
なんて事を言って、頭を下げるのだった。
思ったよりも会話が長くなってしまってイザベラの話に入れませんでした……
多分、次の話で入れる……はずです。
(入ってから『レヴァルタの真実』という節にするべきだった気もちょっとしています……)
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなります、12月24日(日)の想定です!
※追記
次の更新予定日が誤っていたので修正しました。




