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第1話 レヴァルタの真実。広がる光景。

「……あれ? でも、リリティナって向こうの世界に移動出来なくない? 仮にリンクしたとしても、向こうの世界のリリティなの身体は妖姫が使っているわけだし……」

 ふと思った疑問を口にするセシリアに対し、

「いえ、移動自体は出来るんですよ。そもそも私は向こうの世界の人間であって、こちら側の世界の人間ではありません。ヴィンスレイドに無窮の混沌へと落とされる際に、例のガジェットが『私自身には制御出来ない状態』で使われているんですよ」

 と、そんな風に答えるリリティナ。

 

「それはつまり、私が無窮の混沌に囚われている状態でリンクしていたのと同じで、リンクそのものは可能でも、向こうの世界へ行くと、魂の封じ込められている所に封じ込められてしまって何も出来ない……という事ですか? です」

「ええ、そういう事ですね。ただ、幸いというべきか、その封じ込められている場所はすぐ近くにありますから、中から外の状態を窺い知る事は可能です」

 カチュアに問われたリリティナがそう返事をしながらラディウスの方を見る。

 

「なるほど……。向こうの世界のリリティナの魂は『この中』にある。ここから俺たちの行動が視えていたってわけか」

 そう言いながら、リリティナの魂が宿る封魂術のガジェットを取り出すラディウス。

 それを見ながら、

「はい。ある程度ではありますが視えていました。……もっとも、そんな状態になったのは、カチュアが無窮の混沌に落ちてきて少したった頃からでして……どうして急にそうなったのかというのは、私にもわかりません」

 と、告げて首を横に振ってみせるリリティナ。

 

「……普通に考えると、カチュアのリンクを復活させた時の術式が、その封魂術のガジェット――『器』に何か影響を与えた……というのが一番ありえる話よね」

「そうだな。まあ、現時点では『可能性』の検討すらつかないけどな……」

 ラディウスがルーナの発言に頷きながらそう口にすると、それに対して、

「それに関しては、私も興味がありますし、一緒に調べるのを手伝わせていただきますわよ。……という事で、今は移動しません? ここに長居するのは、あまり得策ではありませんわよ」

 と、イザベラ。

 

「たしかにそうなのだわ。一旦『元の部屋』に戻って何もしていない体を装いながら、向こうの世界へ行くのだわ」

 そうクレリテに促され、ラディウスたちは一度『元いた部屋』へと戻る。

 そして、リリティナとリンクした上で、向こうの世界へと移動するのだった。

 

                    ◆

 

「――うっ……く。一瞬とはいえ視界がおかしな事になるせいで、軽い目眩が起こりますわね……。これ、いずれ慣れるものなんですの……?」

 イザベラはそう呟きながら、崖下に見えるレヴァルタの街がかつて存在していた場所――ボコボコと泡立つ毒々しい色の沼と、黒味を帯びた岩石と地面のみが広がる荒れ果てた大地――を眺める。無論、そこに街の姿は欠片もない。

 

 ――あの時はこうするより他に手がなかったとはいえ、この光景は何度見ても嫌なものですわね……

 

 そんな事を考えつつ、しばしそのまま眺めた後、

「――さて、急いでサウスロードエンドへ移動しなくてはなりませんわね」

 と呟き、踵を返すイザベラ。

 するとその直後、

「……イザベラお嬢様、またどこかへ出かけられるのですかな?」

 と、いつの間にかそこに立っていた白髪の老人が、イザベラへと問いの言葉を投げかけた。

 

「師匠は相変わらず唐突に現れますわね……」

 腰に手を当てながらそう言ってため息をつくイザベラに、

「ホッホッホ、それは当然ですな。なにしろ、儂がイザベラ殿に隠密の術を教えたのですから。お嬢様に――弟子に接近をたやすく見破られるほど、もうろくしているつもりはまだありませんわい」

 なんて答える白髪の老人。

 それを聞いてイザベラは、

「……そうですわね。師匠はこの地に残る民たちの守りの要ですものね……」

 

「ええ、民の事は儂に――儂らにお任せくだされ」

 白髪の老人は頷きながらそう言うと、そこで一度言葉を切り、崖の縁へと歩み寄る。

 そして、眼下のかつてレヴァルタがあった場所を眺めながら、

「それで……お嬢様は、またこの光景を生み出した彼の皇帝の従って、何かするおつもりですかな?」

 と、イザベラに問いかけた。

 

「……いいえ。おそらく今回は、あの男と決着をつける事になりそうですわ。先日話した者たちと手を結ぶ事が出来ましたから」

「おや、いつの間に。――ですが、それは重畳というものですな」

「ええ。その通りですわね」

 イザベラは白髪の老人に頷きながらそう返すと、崖下に広がる光景を一瞥し、心の中で呟く。

 

 ――私の目的は、世界の真実を知る事……。あらゆる知識を、情報を、得る事……

 それは、また世界の理に阻まれた時に抗うため……

 知識も情報も不足していて、世界の理に阻まれ、抗いきれずにこの光景を生み出すしかなかったあの時を繰り返さないため……ですわ。

 

 と。

遂に第8章まで来ました!(そして、地味に通算500話目です)

謎な存在のままになっている『皇帝』が、ようやく登場します!

それにしても封魂術のガジェット、ものすごい久しぶりの出番となってしまいましたね……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、12月17日(日)を想定しています!

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